第3話

食事を終えて片付けると茜は制服に着替えた。黒色のセーラー服に白いリボン。襟には白いライン。袖口とスカートの裾には巫女の家を意味する色である赤いラインが金色に縁取られていた。


鞄の中身を確認して茜は登校する。


「行ってきまーす!」


「お嬢様、お気をつけて!!」


「お気をつけて!!」


門下生が見送る中茜は門までの砂利道を行く。茜が木でできた大きな門を開くと高級車が停まっていた。後部座席から茜と同じ制服で巫女を現すラインが水色の少女が降りてくる。


「あ、おはよー水面、氷雨さん!!」


「おはようございます、茜ちゃん」


「おはようございます、茜様」


運転席から降りたのは眼鏡をかけたどこか冷たそうな男。笑みを浮かべているが胡散臭い。助手席にこん棒があるのは茜には見慣れたいつもの話。


「水面お嬢様、お気をつけくださいませ」


「ええ、ありがとうございます。氷雨さん」


腰半ばまで伸びた黒髪を緩くハーフアップにしているのんびりとした穏やかな美少女だ。彼女は水ノ宮水面。茜の同い年の幼馴染みであり親友である。


「それでは氷雨さん行って参ります」


「行ってきまーす!」


「行ってらっしゃいませ、水面お嬢様、茜様」


深くお辞儀をした氷雨。二人は学校までの道を歩き始めた。


「そういえば、朝キツネ見たんだよね」


「キツネですか?」


「そう、勾玉埋まってるやつ。オババ達が何か言ってたよね?」


「凶事の前触れですわ。私も蛇を見ましたの。額に勾玉のある蛇を」


「こんな田舎で凶事とかないよね?」


「わかりませんわ……用心するに越したことは……」


不安ばかりの茜を水面は優しく語りかけた。茜は優しい女の子だ。誰よりも平和を願っていることを水面は知っている。小学生の時、戦争資料館で号泣して見学会を中止にさせたほど優しい子だった。


「ふふ、茜ちゃんは可愛いですわね」


「え?何を急に!?」


「ふふ、なんでもありません」


優しそうに笑う水面は男子の憧れで同性の茜でさえ見とれてしまう。


「神獣の事は風ノ宮さんや土ノ宮さんに話してみましょう。もしかしたら何かご存じかもしれません」


「そうだね。お姉達の方が詳しいかも。あ!」


「あら?」


二人が見つけたのは小学生の女の子。色素の薄い白髪をツインテールにしている。


「楓!!おはよう!!」


「楓ちゃん、おはようございます」


「………」

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