第2話
朝食の時間になり屋敷にいるもの総勢50名が集まった。大広間に一列に並んだ机の上には食事が次々と運ばれてくる。
「茜、お前はここだ」
「えー?火苗の隣がいい!!」
「お父さんが許しません!!ほら、来なさい」
「もう、あたし中学生なのに」
火ノ宮のお約束に母がくすくす笑いだした。茜が仕方なく父の隣にいく。
「女の子は茜だけだものね。お父さんは茜が可愛くて仕方ないのよ」
「でもうざーい」
「なんだと茜!!父さんはお前のためにだな?」
「自分のためでしょ?あたしを隣においときたいのは」
門下生から笑いが漏れる。いつしか大爆笑となり父の悲しげな顔がさらに笑いを誘う。食事が並び終わる頃、門下生達は正座で背筋を伸ばした。父が真面目な顔で背筋を伸ばす。
「それでは、みなさん。天に礼!!」
父の言葉と共に門下生は頭を下げる。そして机から少し距離を取る。
「地に、礼!!」
両手を畳につけて深く頭を下げる門下生達。数秒間待つと顔をあげた。座ったまま海の方向を向いて手をつく。
「海に礼!!」
そしてテーブルに向き直り手を合わせる。
「全てに感謝を捧げる。いただきます」
「いただきます!!」
火ノ宮家のルールだった。当たり前のことでも感謝を忘れない。そして食事をとる。火苗が茜を見た。いつものが始まると茜は思った。
「お嬢様、水面様のところへいかれますか?」
「うん。水面の隣が癒しだからねー」
「お気をつけくださいませ。慣れた道とはいえ何があるか」
「火苗は茜を大事にしすぎよ。もっとほっといていいのに」
「いえ、奥様。私にとってお嬢様は守るべき方ですから」
火苗は誰の目から見ても格好いい。容姿、声、身体能力。全て秀でている。ただ、心配性なのを除けば。細身ながら無駄のない筋肉。門下生を相手にしても的確に倒していく。
茜にとって火苗は憧れだった。彼は小さな頃から警備見習いとして住み込みでいた。そのため茜にとって一番近い親族ではない異性は火苗だった。
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