第3芸 ワイの正義

「大丈夫~?生きてる~?」


ワイはフリジアのその一言で目覚めた。固くて冷たい地面で寝たからか身体中が痛い


「生きとるわ………じゃないやろ!!なんでワイが野宿せなあかんねん!?文化人としての尊厳失いかけたで!?」


ワイは怒りを込めてフリジアに叫ぶが、フリジアは飄々とした顔で答える


「それだけ元気があれば大丈夫だよ~。じゃあ街に帰ろっか~」


「お前はワイのこと殺したいんか?この顔をどうみたら元気だと思うねん」


「じゃあ行くよ~《ネコガネコロンダ》~。」


「お前は本当にひとの話を聞かんやつや……」


フリジアはワイの文句をスルーして転移魔法を唱え、またワイとフリジアは光りに包まれ、気が付くともうすでにワイは街に戻ってきていた


「やっぱ魔法ってすごいんやな~。あんな草原からあっという間に戻ってきてもうたやないか」


「そうだね~。でもこの魔法は君のお爺ちゃんが作ったんだよ~?」


「そんなもん牢屋ん中で聞いたわ。でもなぁ、この世界の魔法…『ダジャレ』はワイの世界じゃギャグやでギャグ」


ワイがそう言うとフリジア首をかしげてこう言った


「ギャグってなに~??」


そこからかいな……とワイは思ったが、親切に説明してやることにした


「ギャグっていうのはな、簡単に言うと面白いことをすることや。人を笑わせることなんや。それを生業とする奴もおるんやで?ワイみたいにな」


「へぇ~、タカシはもとの世界でそうゆー仕事してたんだ~」


フリジアのワイの呼び方が呼び捨てになったので少し嬉しかったが、元の世界で売れない芸人だったことを思いだし、少し悲しくなった


「そうや……ワイは芸人やった。あんま好きなやつはおらんかったようやけどな」


ワイが自信なさ気な声でそう言うと、

フリジアが意外な一言を発した


「でもぉ~、少なからず人を笑わせてたんでしょ~?それってぇ~結構えらいんじゃないのぉ?」


まさかフリジア口からこんな励ましの言葉が聞けるなんて。ワイは驚愕した


「慰めてくれとんのか……?お前らしくないなぁ……」


ワイの目から塩水が垂れた。フリジアは少し驚いた顔をした後、微笑んでこう言った


「泣く必要なんてないよ~英雄さん?」


その一言は……ワイにとってはとても暖かい一言だった…

ワイは思わず号泣してまいそうやったが、大阪人の意地をみせてこらえた


「ありがとな……ワイは認められたかったんやな……自分の仕事を……」


「大丈夫だよ~少なくともこの世界じゃ特別な存在なんだからさ~」


「もうええわ……少し情けなくなってきたわ」


ワイは17歳の女の子に慰められた事実に、かなりの情けなさを感じてそう言った



「じゃあ、気をとりなおしてぇ~。

酒場にでも行こっかぁ?」


すっかり元の調子にもどったワイが答える


「昼間から酒かいな。それにお前17やろ?飲んでええんか?」


「大丈夫~。酒場だからってお酒ばかりじゃないんだよぉ?この国を打倒するための仲間を募集しにいくんだよぉ~」


「ん?ちょっと待て、打倒するてどういうことや?逃げるんじゃないんか?」


ワイの質問にフリジアが自慢気と答える


「逃げるんだったらとっくに逃げてるよぉ~。タカシの能力+集めた仲間の力をあわせれば国家転覆なんか簡単だよ~」


物騒な単語が聞こえたような気がするが気にしないようにしよう


「国家転覆……か。中々面白そうやないか」


ワイがニヤッとしながらそう言うと、フリジアがこう続けた


「のりきだね~。やる気十分って感じだね~」


「当たり前や。とりあえずあの狂った団長さんに一発ぶちかましてやりたいからな」


そんな会話をして酒場に入ろうとしたしたとき、一人の少女がおっさんに暴力をふるわれているのが視界に入った


「おい!ミル!せっかく買ってやったんだからちゃんと働けやボケが!!」


「ひっ、ご、ごめんなさいれす!謝るから痛いのはやめてくださいれす!」


「ちっ!本当に使えねぇのを買っちまったぜ、おら!さっさと働けこのゴミがっ!」


その光景をみた瞬間、ワイの中で一つの焔がゴウゴウと音をたてて激しくなっていくのを感じていた。

そう、正義の焔である


「ちょいと……シバイてくるわ」


「え~でも~」


フリジアが何か言ったような気がするがもうすでに身体が動いていた


「うぉぉぉぉ!!ライダァァキィィィック!!」


「へぶっ!!???」


気が付くとワイは男にライダーキックという名のドロップキックをかましていた。男は吹っ飛ばされた衝撃で頭を打ったのか気絶していた


「大丈夫か?嬢ちゃん」


ワイがミルと呼ばれた少女に質問すると少女は恐る恐る答えた


「は、はいれす。でもご主人様がぁ」


「気にしなくてええわ、常に己の道をいくのが大阪人ソウルや。お前はもう自由、どこへなりとも行くがええ」


「でもぉわたしは奴隷なんれす……行くところなんてどこにも………」


少女がそう言うと、いつの間にか復活していた男が怒鳴った


「なんだてめぇは!??そいつは俺の奴隷だぞ!?勝手なことしてんじゃねぇよ!!!」


ああ……なんか懐かしいな……大阪にもこういうやつおったわ……と思いながらワイが答える


「奴隷ってのはペットみたいなもんやろ?ペットは大事にしろっておかんに習わなかったんかい」


「ああん!!?奴隷を大事にしろってか!?俺が金を払って買ったんだからなにをしようが俺の勝手だろうがこのボゲガぁ!!」


「やかましいやっちゃの~。確かにあんたが奴隷になにしようがあんたの勝手や、もう少し大事にしてやれいうとるんや」


ワイは説教は苦手なんやけどなぁ


「もういい……このゴミはお前にやるよ。どうせオ○ホがわりぐらいにしかならねーしな。せいぜい優しくしてやんな」


「は?」


男の意外な一言にワイは唖然とした顔をした。こいつは意外に聞き分けがいいようだとワイは思った


「やるっていったんだよそのゴミを。

どうせ二束三文の価値しかねーんだからなぁ。処分してくれるっつーならありがてぇぜ」


「ふぇ?ご主人しゃま?」


「お前のご主人様は今日からそっちのにぃちゃんだ。せいぜい可愛いがってもらいな!!」


そう言って男はどこかに行ってしまった。ちゅうかあいつさりげなく次のご主人様をワイにしていったで……


「ひとりメンバーが増えたね~」


いつの間にか近寄ってきていたフリジアがそう言うと、ミルが小さい声で


「今日から……お願いしましゅ」


と言ったので、ワイはしょうがない、という顔で承諾した。



こうして、少し頼りない王国打倒の新メンバーが増えた。

果たしてこれからどうなってしまうのか。


次回 メンバー募集中!!






























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売れない芸人のワイが異世界のへっぽこ剣士に憑依した件 @Posted

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