第2芸 ワイの悲しい叫び



あの後、ワイは無事牢屋から抜け出し、牢屋があったお城?から命からがら脱出して、城の前にあった街に逃げこんだ‥‥‥


ーーーーーー



「小綺麗なまちやなぁ‥‥‥電柱の一本すら見当たらんわ‥‥」


ワイは、異世界の東京や大阪のような

電柱ばっかで慌ただしい街とは違う小綺麗な街を歩いていた


「でもなぁ‥‥電柱があらへんってことはWi-Fiもくそもないってことやんか‥‥まぁ、スマホもないんやけど」


知らない世界の知らない街でワイはそ

う呟く……


「金もない知り合いもいないスマホもない家もない…金がないのは前からやけど……」


ちょっとしたホームレスやん、そう思ったが声にだすと泣きたくなるのでやめた


「どうしたもんかなぁ……」


ワイが途方にくれていると、一匹の猫が近づいてきよった


「にゃ~ん」


「なんや、お前も家がないんか」


ワイはしゃがんで猫を抱き上げる


「お前もワイと同じやな…ひとりぼっちや……」


抱き上げたネコを見つめながらワイがそう言うと、まるで否定するようにネコが首を振る


「そうか……もう独りやないか…ワイがおるからな……」


ワイがそう言うとネコがじたばた暴れだしたのでおろしてやった


「なんや、だっこはいやなんか」


<違うよ~私だよ~>


「っ!?」


あかん、幻聴や……ついに頭おかしくなったんかワイ……と思っていると、ネコがボンッという音とともに煙に包まれた


「やぁ、タカシくん。さっきぶりぃ~」


煙をはらって声の出所を見ると、そこにはネコではなく、さっきのフリジアとかいう魔術師が立っていた


「なんや、ワイを捕まえるつもりで来たんか?ネコに化けて奇襲なんぞ卑怯なやっちゃの~」


ワイがそう皮肉をこめて言うと、フリジアは首を振ってこう言った


「ひどいことゆーねキミ。私はそんなことするために追っかけて来たんじゃないよー」


『油断させて捕まえようって魂胆か?』


「だから違うってば~、私はあなたを助けてあげようとしてるんだよ~」


フリジアのまさかの一言にワイは少し驚いてもうた


「そういえばあんた心んなか読めるんやったな……それより、助けるゆーんわどういうことや?」


「文字通りだよ~。あなたの逃亡を手助けしてあげるってこと」


「それもそうやが……ワイを助ける理由がないやろ。あのクソ団長を裏切るいうんか?」


「そーそー!裏切っちゃうんだよ~」


ワイは唖然とした。なんでコイツはこんな簡単に裏切れるんや!?、と


「やっぱ驚いてるね~、じゃあ理由を教えてあげる。それは私が団長さんのやり方が好きじゃないから、ただのそれだけ」


「ほう、奇遇やな。ワイもあいつは気に食わんわ。さっき吹っ飛ばしたがあれでもたらん」


ワイがそう言うと、フリジアがにこやかにこう言った


「じゃあ決まり~!私は今日からあなたの仲間でーす!」


「しゃあないな。でも心読むのはあかんで」


「善処するよ~」


これでやっといろいろ考られるようになったわ、とワイは思う


「で……仲間になったのはええがこれからどうするんや?金もないし家もないんやで」


可愛いねぇちゃんが仲間になって内心喜んでいたワイを現実という刃が一閃した


「おカネは私が持ってるからなんとかなるよ~。家はぁ……野宿?」


野宿かいな、ワイはそう思った。

どうやらこのねぇちゃんは考えなしに裏切ったらしい


「なんも考えなしかいな……おってもおらんくてもあんまかわらな…くはないな」


フリジアの存在は元の世界で彼女がおらんかったワイにとってはとても貴重なもんやった。

フリジアは大阪の風俗にもなかなかおらんぐらい美人なんや


「なんかすごーくエッチなこと考えてな~い?タカシ君のスケベ~」


「考えとらんわそんなもん」


ワイはフリジアの突然の質問に少し動揺したが顔にはださなかった。

元の体ではないとしても25のおっさんの赤面なんぞみたくないやろ


「つーかそんなもんはどうでもええんや。野宿はきついやろ野宿は。ダジャレでなんとかできないんか?」


「そんなのわかんないよ~。私だって全部のダジャレを使えるわけじゃないんだし~」

「それに異世界人のキミの方がダジャレ知ってるでしょぉ?なんたってあの伝説の英雄の孫なんだからさ~」


無茶いいよるでコイツ……ワイは知ってるだけであって効果までは知らんのにな


「ワイは『ダジャレ』はたくさん知っとるが、この世界での効果まではわからんわ」


「じゃあ草原に移動して試してみよー」


「は?」


こんな栄えた街に草原なんてあるわけないやろ……


「どこにそんな草原なんかーーーー


《カナイガオッカナイ》ッ!!


ワイがいいかけるとフリジアがダジャレを唱えた。こんなマヌケな魔法は聞いたことがないが、ワイとフリジアは光りに包まれた


「ちょ、おま、こんなとこでいきなり!?」


「私達以外には影響ないから大丈夫だよ~」


「そういう問題じゃないやろーーーーー」


ワイはそう叫んだがその叫びは誰にも届かなかった


ーーーー


「う、う~んどこやここ」


ワイが目を覚ましたのはだだっぴろい草原やった。本当に草原にとんできたようやな


「あ~!やっと起きた~!」


そう言ったフリジアはワイにまたがって座っていた…


「何しとるんやおまえ!?なんでまたがってんねん!?」


コイツアホちゃうかなんで出会って1時間ぐらいの男にまたがれるんや!?

出会って1時間で男にまたがる女なんて

ソー○嬢ぐらいやで!?いや嬉しいけども


「そーんなに嫌がんなくてもいいじゃ~ん!素直に嬉しがればいいのにさぁ~」


「別に嫌がっとらんわ。逆に嬉しいぐらいや」


「あ、でもそういわれるとおりたくなっちゃたぁ~」


そう言ってフリジアはワイからおりてしまった……

女ってのはつくづく難儀なもんや、と

思いながらワイも立ち上がった


「で、どうするんや。ワイの知ってるダジャレをひたすら言えばええんか?」


「うん。それでいいんじゃない?」


えらい適当なやつやな~


「でもダジャレってのは随時増えてくもんやで?」


「そうなの~?でもまぁ~とりあえず知ってるやつを言ってみてよ~」


「よし、じゃあまずは

《カマヲカマエル》ッ!!」


ワイがダジャレを叫ぶと手に死神が持っていそうな大鎌が現れた


「おお~、新しいダジャレだけど成功したね~」


「えらいごっつい鎌やなぁ。こんなもんいらんわっつーか重っ!」


ワイはそう言って大鎌をそっと地面に置いた


「よし、ガンガンいくで~


~~~~~~~~~~~~~~~~~


     お試し中


~~~~~~~~~~~~~~~~~



そうしてワイたちは日がくれるまでダジャレを試しまくった。具体的に言うと、30個ぐらい試した。

試した結果、どうやらダジャレが面白ければ面白いほど良い効果があるようや



「いや~結構試せたね~」


「一部あんまり必要ないやつやったけどな…」


少し例をあげると、『ちょっと足が早くなる』『相手の動きを0.5秒だけ止める』という奴や。なんでこんなんが魔法なんやとワイは思った


「でももう日がくれてもうたで…やっぱり野宿なんか……」


「大丈夫だよ~。こういう魔法もあるし~ 《デカイケツデ解決》ッ」


「ぶっ!」


思わず吹いてもうたが、フリジアがダジャレを言うと、ボンッという音とともに小さい小屋が出てきた


「おお、これで野宿しなくてすむやないか!」


「そうだねぇ~。でもぉ~私たちぃ

一応としごろの男女だよぉ~?ひとつ屋根の下だったらぁ~色々と…ね?」


ワイが野宿をしないですむことを喜んでいると、フリジアが十代とは思えない艶かしい声でそう言った


「な、ナニをいってるんやおまえは」


「もぉ~、わかってるくせにぃ~」


『なんや!?まさか……まさか、ヤりたいとかいうんやないやろうな!?』


「さ、さっぱりわからんわ…」


「だ・か・らぁ~」


『あかんあかんあかんで!?相手は十代やで!?落ち着けワイ!!』


フリジアのあまりの色っぽさに理性が飛びそうになっている自分を必死に抑えこむ


「そとで寝て?」


「は?」


ワイは十代の色気に負けそうになった自分を恥じて恥じて恥じまくった


「私一応17だから~。お願いね~」


そう言ってフリジアは小屋の中に入っていき、ワイは上空に壮大な星空が広がる真っ暗な草原に独りポツンと取り残された……… もう何も信じないと思った。よしんば信じたとしても深入りはしないことをかたく誓った


「ふざけんなぁぁぁぁ!!!」


ワイの悲しい叫びが夜の草原に響いた…………

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