売れない芸人のワイが異世界のへっぽこ剣士に憑依した件

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第1芸 異世界なんてゴメンやで

「あ~あ、今日もお客少なかったなぁ」


ワイはこの世に生を受けて25年‥‥

そのうち3年間は売れない芸人や。

まぁ、現在進行形やけどな‥‥‥


「どうにかならんもんかね~、ホンマに‥‥‥ このままじゃ餓死してまうわ‥‥」


ワイはもしできることなら、芸人を志したあの頃のワイにドロップキックをかましてやりたいんや。

なぜかっちゅうたらそらぁ今がつらいからやろなぁ‥‥‥

銭もなければ女もいひんのやからなぁ‥‥‥


「もうちくわぐらいしかあらへんわ‥‥‥ 食えるもんが」


今までは生きとるだけで儲けもんやいうて明るくいきとったけどなぁ‥‥‥ もうだめかもわからへんわ‥‥


「ワイはなんで生きとんのかなぁ」


思わずワイはそう呟いてもうた…

みんなを笑顔にする!いうて芸人になったのになぁ‥‥

ワイは‥‥‥このままただ惰性で生きていくんかなぁ‥‥

それやったらいっそ‥‥


「死んでまうかぁ…」


あかんあかん、こないなこと言うもんじゃないわ‥‥ 

早く家帰って…かぁちゃんに電話せなあかんしな‥‥


「はぁ‥‥‥ 生きるってややこしいことやのぉ」


「ん?なんや、眩しいやないかあのトラック。それに段々近づいて‥‥‥」


気付いた時にはもう遅かった‥‥‥ 気付いたときには、もうワイはI can flyやった‥‥‥


『生きてるだけで儲けもん、そしたら、ワイには‥‥‥死んだら‥‥‥なにも‥‥‥』


そこで、ワイの意識はフェードアウトした

ーー

ーー

ーー

ーー

「……ぃ…ぉぃ…おい!!」


ワイが目を開けると、目の前には若いにいちゃんの顔があった‥‥ ワイより2、3才下やろか


「やはり生きていたか、レオ」


ん?レオ?ワイはたかしやで。というかなんやここ?地獄か?


「‥‥‥レオって誰や、ワイはたかしやで」


「‥‥‥‥‥‥」


ワイ変なこと言うたんか?黙ってもうたわ


「おい‥レオ‥‥‥ふっ、はははははっ!」


う、うけた?なんでや‥‥そんなおもろいこというたつもりあらへんぞ


「お前、なんだそのおかしいしゃべり方は?‥‥‥タカシとはだれだ?」


ひぃひぃいいながらあんちゃんが言う。こいつ笑いの底あさすぎやろ、

っちゅうかこいつの格好‥‥‥


「お前のそのかっこの方がおかしいやろ」


「む、冗談はそれほどにしておけ。

そろそろ来るぞ」


冗談ゆーたつもりはないんやけどな‥‥‥

いきなり真面目な顔して‥‥なにがくるってゆうんや‥


「来るってなんや来るって‥‥‥ちゃんと説明せんかい」


「いいかげんにしろよレオ!くるぞ!!」


なんや、やかましいやっちゃなぁ‥‥‥

ん?なんや‥‥‥あれ‥‥‥?


「なんやあの化けもん!?あんなのと戦えるわけないやろ!?」


そこにはワイらに向かって走ってくる一匹のオークがおった‥‥ん?オークってなんや‥‥?あんな化けもん知ってるわけないやないか‥‥

この記憶は‥‥レオ‥‥?誰やこいつ


「なんや…これ?どうなってるんや…」

「ワイは死んだんやないのか…?」


「ぼさっとするなレオッ!!死んじまうぞッ!!」


にいちゃんがさけぶとオーク?がもうワイたちの目の前まで迫ってきとった


「ワ、ワイは逃げるで!あんなのと戦えるわけないやろ!?」


「敵前逃亡は死刑だぞ、レオ。

お前は確かに弱いが、敵を前にして逃げるような男ではないと俺は思っていたんだがな‥‥‥」


テキゼントウボーは死刑って何年前の法律や!?第二次世界大戦とか、そういう時のやつやろ!?とワイが思っているとオーク?がにいちゃんに大きな斧で斬りかかった


「グォォォォォッ!!」


「くっ!!」


にいちゃんが素早く身を翻しオークの攻撃を避ける


「しゃあぁっ!!」


次はにいちゃんが握っていた剣で斬りかかると、オークの腹部にクリーンヒットし、オークは短い悲鳴をあげる


「グォ!!」


そしてワイはにいちゃんを応援する


「気張れやにいちゃん!!」


「ふざけてる暇があるならお前も戦え!!」


ワイに文句を言いながらにいちゃんがオークにだめ押しの斬撃をあびせると、ついにオークは悲鳴をあげてバタリと倒れた


「グォォ‥‥‥」


「ふぅ‥‥‥‥やっと倒れたか。それにしてもレオ、おまえよくこの状況でふざけていられるな‥‥」


「ふざけてないわ!ワイも必死やで!?」


「どこが必死だ、ふざけたしゃべり方をしおって」


「逃げなかっただけましやろがい!」


ワイらがそんな不毛な口論をしていると、馬にのった一人の剣士がこっちに近づいてきた


「おうお前ら、よく生きてたな」


「団長!シュルツ・バルト、レオ・ルルガー両名、無傷であります!」


近づいてきた男はワイらの団長らしい‥‥‥ それが間違いじゃないのがワイのなかにあるレオ?の記憶からもわかる


「そんなことは見ればわかる。

ただそこの能無しが生きているのは驚きだがな」


団長とやらの視線はワイに向いている。どうやらこのレオくんとやらは

ワイとおなじロクデナシだったようやな、と思っていると、にいちゃんが口を開く


「は、はい。俺も驚いていますが‥‥‥それより、その能無しの様子がおかしいのです」


こいつ、ワイをさりげなくディスりやがったで‥‥‥ 


「様子がおかしい?弱すぎて頭が可笑しくなったのか?」


レオくんとやらは一体なにをしでかしたんや‥‥ 大阪でもこんなストレートな球投げてくるやついなかったで‥‥


「はい、それが‥‥‥」


にいちゃんが団長の耳元で話をしている。ワイに聞こえないように話してくれとるんやな‥‥

このにいちゃん意外とやさしい。しかし


「ほうほう、しゃべり方が可笑しくなって、まるで人がかわったようだ、と」


団長が口にだしたので意味がなかった


「はい。最初はふざけているだけかと思ったのですが‥‥‥」


「少し気になるな‥‥ よし、まず町に帰還し尋問をするぞ」


は?尋問?


「そいつを運ぶぞ。シュルツ、気絶させろ」


なに言ってるんやこいつは!?あんなうさんくさい話信じるんかい!?

アホか!?


「は、はい。わかりました」


えぇぇ!?なんで承諾したんやこいつ!?親友じゃないんかい!?


「すまんな‥‥‥レオ、少し眠ってくれ」


そう言うとにいちゃんがジリジリとワイに近づいてきた


「ちょ、ま、おま、やめーーーー


「すまんッ」


にいちゃんのその一言を聴いて、またワイの意識はフェードアウトしてもうた‥‥‥

ーーーー


「なんじゃこりゃ‥‥知らない天井やな‥‥‥」


次にワイが目を覚ましたのは、薄汚い牢屋の中のベットやった‥‥


「なんやきたへんとこやなぁ」


起き上がりざまにワイが小さく呟くと、さっきの団長とやらがツカツカと牢屋の前にきて答えた


「きたないところで悪かったな。

タカシ君‥‥‥いや、異世界人‥というべきか」


異世界人?どういうことや?ワイはただの関西人やで?


「異世界人っちゅうのはどういうことや、ワイはただの関西人や」


「それを説明するのは私ではないよ。説明するのはこっちの老婆だ」


そういいながら、団長さんはどっかにいってもうた


『どういうこっちゃ、こちとらバァさんの話なんかききとうないんやけどな』


「これはこれはぁ~、あんたひどいことを思っとるのぉ」


黒いローブを纏った怪しい老婆が団長さんの後ろから出てきてしわがれた声でそういった。

ワイは牢屋の柵の前であぐらをかいた


『なんやこのバァさん…ワイが考えてることがわかるんか』


「わかりますよぉ~、だって私は魔術師だからぁ」


「ふぁ!?」


老婆がワイの思考をいとも簡単に二回も読んだのでさすがに驚いてもうた‥‥


「ふふ~じゃあこのカッコはやめますねぇ」


老婆はそう言ったあと、おもむろに

ローブを脱いだ。ワイが『なんやなんで脱いだんや』などと思っていると老婆は呪文らしきものを唱えた


『ネコガネコロンダ!!』


するとなんちゅうこった、老婆はみるみるうちに若返り、えらく可愛い

ボンキュッボンの女(すっぽんぽん)に変わってもうた…


「は~~い、この肉体だったらいい?」


「そういう問題じゃないやろ!」


老婆があまりにもふざけたことを言ったので芸人としての血が騒ぎ、思わずツッコミを入れてしもうた


「なんで裸やねん!?なかみババァの

ねぇちゃんの裸なんぞみとうないわ!!」


「違うよぉ~。こ・れ・がぁ~私の真の姿だよぉ~」


「じゃあホンマのおまえは何歳やねん」


「17だよ~」


「17やと!?ならガンプクもんやわ!!」


「そういわれると見せたくなくなっちゃうな~。やっぱり服着よ」


女心っちゅーんはホンマにわからんな~と、ワイは心のなかでしみじみ思う


「もー、心の声聞こえてるっていったでしょ~」


「そうやったな‥‥」


いつの間に着替えたんやこいつ、魔法ってのは、大層なもんやなぁ。

は‥‥?なんでワイこれが魔法だってわかったんや‥‥?


「なんであなた頭の中で自問自答してるの~?」


「ちょいとな‥‥」


「まぁいいや。じゃあパパッと説明しちゃうねー。一回しか言わないからよく聞いてね~」


「おう」


「それはむかーしむかしの話です」


「は?説明するんちゃうんかい、昔話でもするんか?」


「あるところに一人の剣士がいました。ですがその剣士はとても弱く、

あるとき魔物に襲われて瀕死の重症をおいました」


こいつワイのこと無視しおったで‥‥‥


「魔法でなんとか傷は治癒したものの、意識は戻りませんでした。ところがある日、いきなりその剣士は目覚めたのです」


「ま、まさか‥‥‥」


「そう、そのまさか。目覚めた剣士は、まさにあなたのような話し方をするようになり、性格もガラッと変わってしまったのです」


「そしてここからがいちばん大事。

その目覚めた剣士は、『ダジャレ』

という呪文をつかい、魔物たちを倒しまくり、一騎当千の英雄として勇名を馳せ、その『ダジャレ』は、この世界で魔法として使われることになったのです」


ダジャレが魔法‥‥‥やと??


「ワイもダジャレは知っとるが、この世界じゃ魔法として使われてるんか!?」


「うん。さっきの変化魔法『ネコガネコロンダ』もそうだよ」


通りでさっきこいつが呪文を唱えたとき違和感があったわけや‥‥‥


「でもまだ続きがあるよー。

そしてその剣士に憑依したと思われる異世界人はこう名乗ったんだ、『ワラガミ・タケシ』と」


「それ、うちのじいちゃんや」


「え?」


まさかここでその名前がでるとは思わんかったわ‥‥‥

そう、なにを隠そう『ワラガミ・タケシ』っちゅう人は、ワイのおじいちゃんなんや


「そういえば確かに、じいちゃん‥‥‥ 死ぬ前に教えてくれたんや。

じいちゃんがガキのころ、ながいながい夢を見ていたんやって、そこでは魔物と人間が争ってて、ワイは魔物をしばき倒してきたんや!って」


「団長の目は間違ってなかったってことだねー‥‥」


「団長さんがどうかしたんか?」


「団長さんはそれを見抜いて君を牢屋に閉じ込めたのさ」


「なんでや?英雄になる可能性があるやつがきたんだから普通vip待遇やないの?」


「う~ん、それはね~」


魔術師のねーちゃんが言いかけたところで、さっきどこかに行った団長さんが戻ってきた


「そこからは俺が話す。フリジアはさがれ」


あの魔術師のねーちゃん、フリジアっていうんか。なかなかべっぴんさんやったな~


「ん?なんや、団長さんやないか。

どこ行ってたんや?」


「それをお前にいう必要はない‥‥‥

これから死ぬ人間にはな‥」


は?ワイが死ぬ?


「なんでワイが死ななくちゃいけへんのや!?」


「そう慌てるな‥‥‥ 貴様が死ななければならない理由はいくらでもある」


なんやこいつ!?慌てるなやと?ワイが死ぬ理由がぎょうさんあるってどういうことや!?


「まず、フリジアから昔話は聞いたよな?本当にお前が伝説の英雄の孫

だとは驚いたが、それも俺がお前を殺す理由の一つだ」


「なんや‥‥‥あんた‥‥‥なにを言ってるんや‥‥‥?」


「おっと、今の貴様に発言権はない。黙ってきけ」


そう言うとこいつはワイの首もとに

腰から抜いた剣をつきつけてきた


「ひっ」


「次、口を開けば首が飛ぶぞ」


こいつの目はマジや!人殺しの目や‥‥


「じゃあ説明の続きをしよう‥‥

貴様は、なぜ大昔にお前のじいさんんが英雄になったのに、今現在も魔物との戦争が続いているかわかるか?おっと!答えなくていい。どうせわからんだろうからなぁ」


「それはな、我が国の王と魔物軍が癒着しているからだよ‥‥ 信じられないという顔をしているが、これは

真実だ」


「お前のじいさんの時の王はさぞかし迷惑していただろうなぁ‥‥

英雄なんてものが現れて、魔物を一掃しそうだったんだからな。

利益がどうのの問題どころではなかっただろうなぁ?」


「結局、この国に『英雄』なんてものはいらないんだ‥‥ だから殺すんだよ。お前のような『英雄』になる可能性があるやつを。これでわかったもらえたかな?タカシ君」


ワイは目の前にたつ男が淡々と話すこの世界の真実に驚愕してもうた


「で、最後になにか言い残すことはあるか?」


狂っとる‥‥‥ この世界は、こいつは!!


「狂っとるであんたら。だけどな、

あんたらの使っとる魔法‥‥あれダジャレなんやったな?ならワイは‥‥

たっくさん使えるでぇ!!!」


「なに!?」


すっかり油断していたやつは、

剣を落とした。

このすきにワイはーーー


「どういう効果があるかわからんけどとりあえずっ!!」


「《フトンガフットンダ》ッ!!!」


「なにぃ!?ぐぁっ!!!」


ワイがダジャレ‥‥いや、呪文を叫ぶと、やつは牢屋の目の前からレンガの壁を突き破って吹っ飛んでいった


「よっしゃ当たりや!!」


「他のは後で試すとしてまずは牢屋から出んとな~。はよせんと他のやつらが気づくかもしれんしな」


「とりあえず脱出や!!!」


こうしてワイの奇妙な異世界ライフは幕を開けた‥‥‥

知りたくもない真実を知ってもうたが、『生きてるだけでもうけもん』や!!

ワイはあいつらの言いなりにはならへん!!ワイはこの世界で、楽しく生きてやるんや!!!!










































































































































































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