フツメンで超能力者っていう設定自身はそれほど珍しいわけではないのに、一度読み出したらやめられない…っていうぐらい面白かったです
かっこ付けるのが好きで、強がりで負けず嫌いで、いつも偉そうで空気を全く読まない、一見普通の男の子なのだけれど「超能力者」であり特別な「仕事」をしているが故に変わった関係を持つことに…
それでもたまにチラリと見える優しさも彼の魅力で、普段の言動にはイラついたり笑ってしまうけど嫌いになれない主人公。そうやって見ると不器用なところも少し可愛いなって思えてしまう
笑えるところもあれば、グッと来るところもある。一度読み出してしまったら抜け出せない、とっても楽しい作品です。
本作の主人公は西野五郷。日中は普通の男子高校生として暮らしているが、その真の顔は、暗殺からボディガードまで様々な任務をこなす凄腕のエージェント。
業界筋からは一目置かれ、ときには六本木のバーで酒を飲み、マスターと小粋な会話を交わす西野。
いかにも主人公な彼だが、非常に残念なことに彼はイケメンではなかった。普通のルックスのフツメン。それが西野だ。
そんな西野がある日、自分も人並みの青春を送りたい。女子と交友を持ちたいと願ってしまう……!
注目すべきは、ハードボイルド風の文章の中で、ひたすら強調される西野のフツメンっぷり。
彼がどれだけかっこいい活躍を見せても、直後に地の文で容赦なく彼がフツメンであることを強調してしまう。
さらにクラスの女子をヤクザから助けても女子から惚れられることはなく、同級生相手にニヒルな台詞を吐いてもイラっとさせるだけ。
だって彼はフツメンだから……。
しかし肝心の西野本人は自分の立ち振る舞いに問題があるとは少しも気づかず、常にハードボイルドな言動で周囲とのズレを拡大させていく……!
西野以外にも、少しヤンデレ気味な女の子とか、一見地味系な女子だが実は裏では色々奔放なクラスメートなど 、アクの強い人物多し!
果たして西野は憧れの青春を掴むことができるのか!?
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=柿崎 憲)
ただ一つその数センチの違いがあるだけで、物語の醍醐味である登場人物逹の意思が生き生きとしてくる。
作品自体のジャンルすら決定づける。
アクションやコメディにはなれても、ハーレムにだけはなれない。
そういうところに、こんなにも荒唐無稽な物語なのに、どこか読むものにある種の現実の悲しさ、リアリズムすら感じさせる。
その境界線にこそこの作品の面白さがある。
また一方で、「恋愛」を変に美化する全てのものたちに「恋愛を否定はしないが、変に持ち上げもしない。お前らは結局気持ちのいいセックスをしたいだけなのだということを忘れるな。」とでもいうような、恋愛至上主義に対するアンチテーゼ、みたいなものを感じる作品。