第5話 Windowsに移植

 私は一年ほど作業を中断したあとようやくWindows95パソコンを購入して作業を再開した。

その頃にはもうプログラムもそこそこの出来だったので、以前のように熱病に襲われることもなくなっていた。

もともとDOSのC言語で書いたプログラムをVC++に移植する作業は、正直な所気が遠くなる作業だった。

マイクロソフトのビジュアルCというのは、買ってきたものの使い方が全く判らなかった。

マニュアルを読んでも全然判らないので、初心者向けの入門書を何冊か買ってきたがそれでも判らない。

見本に書いてあるプログラムをそっくりそのまま動かしてみるとどうにか動いたので、見本のプログラムを順に動かしながら少しづつ勉強した。

結局移植をするのに数ヶ月もかかってしまい、もうとても気力を使い果たしてしまった。

しかしなんとか無事プログラムは動くようになった。

しばらくはもう見るのもいやな気分だったが、気分を持ち直してまたシナリオの追加作業を始めた。

開発環境がwindows95になってからは、エディターを終了せずにコンパイラーを起動できるのでずいぶんと作業は効率が良くなった。

それにエディターで同時にいくつもファイルを開いたままにできるので、DOSで開発をしているときよりもずっとシナリオを書くの楽になった。

もともと文章を書くのは好きなので、シナリオは以外とスラスラとかけた。

調子のいいときは、次から次へとアイデアが浮かんだり、また逆に数ヶ月もアイデアが出ずに苦しんだりと波が大きくて苦労は多かった。

取材のためというかネタを拾うために学園祭の季節にはピアを買って日程を調べては、学園祭を見に行った。

今では学園祭の日程はインターネットで調べればすぐ判るが、当時はまだピアに学園祭の特集記事が掲載されていた頃だ。

私は大学生の時には自分の大学の学園祭にも一年生の時一度行っただけなので、あらためて学園祭をあちこち見て歩くと、もっと学生時代に学生生活を楽しんでおけばよかったとつくづく後悔した。

学園祭の準備に夢中になるのは学生生活にとっても貴重な体験だし私にはそれが無かった。

女子大の学園祭にも何度も足を運んで、学生生活の様子をいろいろ見て歩くことができた。

男女共学の大学の学園祭に比べて、女子大の学園祭はどこの大学も展示や模擬店はかなり寂しくて、研究発表もほとんどなかった。

学園祭を見に来る客も学生の父兄や倶楽部活動で交流のある他の大学の男子学生くらいであまり活気はない。

女子大というのは外から見るほど花の女の園という訳ではないというのが学園祭を見ての印象だった。

女子大に限らずそれぞれの大学ごとに学園祭の雰囲気がずいぶんと違うのでシナリオを書くのには随分と役だった。

シナリオは次第に量が増えて、数年で400文字原稿用紙換算で、500枚を超してしまった。

シナリオが増える連れソースコードのサイズも大きくなると、またコンパイルとリンクに10分近くかかるようになってしまった。

だが幸いなことにパソコンはもうかなり安くなっていたので、より高性能のパソコンに買い換えて作業を続けた。

バックアップ用にMOも買ったので、以前のようにフロッピーにバックアップする必要がなくなり作業はまたさらに楽になった。

次第にプログラムも完成度が高くなりシナリオの量も増えてきたがそれでもいつ完成するのかははっきりとした見通しは立てられなかった。

ここまでやったんだからともかく完成させるしかないという思いで作業を続けたが、いつ終わるか見通しの判らない作業は精神的にも不安な気持ちで一杯だった。

仕事の暇なときを見つけては少しづつでもシナリオの追加と小説記述言語の仕様の追加を繰り返した。

ひとまずだいたいの形が出来た言えるまでプログラムが仕上あがった頃、試しに動かしてみた。

数100回も起動を繰り返して小説を生成させてみるとやはり不満な点も多かった。

十分に錬ったよくできたシナリオもあったが最初の頃作ってそのまま手抜きのまま未完成のシナリオも多かった。

私は作ったシナリオの一覧表を作り、シナリオに10項目くらいの基準で点数をつけ、点数の悪いシナリオを選んでは書き換えるという作業を続けた。

そしてゲーム全体のバランスを調整する作業がしだいに作業の中心となっていた。

最終的にはシナリオの分量は400文字原稿用紙換算で1000枚を上回る量になった。

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