解答編

 雑居ビルからはぞろぞろと泥棒たちが出てきた。その数は10人や20人ではきかない。周りを囲んでいた警官たちはよくもまあこれだけ泥棒が集まったものだと、呆れながらも感心した。

 

「畜生、どうやってここを突き止めたんだ」一人の泥棒が言う。

「誰かがへまをしたんだ」別の男が言った。

「誰がへまをしたんだ」

 

 泥棒たちの目は仏像を運んだ二人組に注がれた。

 

「俺じゃねえ!」


 助手席に座っていた背の高い男はわめいた。

 

「いやお前だよ」


 そばにいた警官が言う。

 

「言っただろ、追跡してたって」

「そんなバカな!」


 男は警官に食ってかかる。

 

「ヘリだって注意した! 足だって2回乗り換えた! 確かに怪しい車はあったが、最初から最後までつけられたなんてあり得ねえ!」

「バスは注意していたか?」

「バス?」


 そこでハッと気が付いた。確かに何度かバスを見た。確かに京都はバスが多い。けれどあそこまで頻繁に見ることがあり得るだろうか……?

「バスならば後ろに付かれても、たまたま同じ路線なんだろうと思ってしまう。実際三十三間堂の前は何本も路線バスが通っているし、観光バスも多い。お前たちにとって盲点だったんだよ」

 

 背の高い男はがっくりとうなだれた。それを見ながら警官は続けた。

 

「それでお前たちの親玉はどこだ?」

「……ボスのことか?」

「ああ、そいつだ。どこにいる」

「知らねえよ。一番奥の会議室じゃねえのか」

 警官たちは会議室に踏み込んだ。しかしそこには誰もいなかった。

 あったのは、一枚の黒い羽のみである。

 

 ****

 

 大窃盗団大鴉団は壊滅した。

 けれど、その首魁はいまだに誰も知らない。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大鴉団のアジト @Sugra

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ