第5話 縛りが好き? それは駄目な方向にですか?
俺は智美にジッと見つめられていた。
「やっと2人きりになれたね?」
困った俺は頬を掻いて助けを求めるように辺りを見渡すが当然のように誰もいない。
いきなり、こんな形から始まっても困るよな?
俺達はオークとゴブリンの集団との戦闘と
座り込みたいが扉がある訳でじゃないからモンスターが現れるか分からないから、壁から突き出すように出てる所にお尻を引っかけるように座っていたところに始めの智美の言葉に至る。
「いや、いきなり言われても意味が分からない。それとそういうセリフを言う時はせめて照れた顔ぐらいするものだろ!?」
首を傾げているが無表情な智美に指を突き付けて叫ぶと心外だと言わんばかりに拗ねた顔には変化させて言ってくる。
「友達も彼女もいないタクミンに嘘でも疑似体験させてあげようという智美の優しさが分からない?」
「お前じゃリアルティがねぇーよ!! せめて、同級生と認識できるぐらいに成長してから言ってくれ!!!」
そう叫ぶ俺を半眼で見つめながら近寄る智美が俺に反応させる間も与えずにト―キックを脛に入れてくる。
「ぎゃぁぁぁ!!!」
のた打ち回る俺を鼻を鳴らして一瞥して明後日にそっぽ向く智美。
痛い、痛すぎる!! この短期間で智美の蹴りの威力が上がってるぅ!!!
脛を摩りながら立て膝する俺は智美と目線の高さを一緒だったので睨みつける。
「どこまで怒ってるんだよ! 街で蹴られた時より威力が倍増してるぞ!!」
「当然、智美の繊細なハートは深く傷ついた。それをカバーする為にブーツの爪先に鉄板を仕込んだ!」
それ、ちゃ――う!!! 守ったのは智美のハートじゃなくて爪先だぁぁ!!!
智美の恐ろしさを今やっと理解した俺は荒い息を吐きながら震える指を突き付ける。
「お、俺は友達いないかもしれないが、お前はロクでなしだぞ!?」
「うん、知ってる。だから人前では猫被ってる。智美の本当を晒すのはタクミンだけ♪」
ちっとも嬉しくねぇぇ――!!
にゃん、と招き猫のように手を丸めて俺を見つめる智美であったが、頬に朱が入る。さすがにこれは恥ずかしかったようだ。
ジト目で見つめる俺の視線から逃れるように荷物を纏めると立ち上がる智美。
「いつまでも休憩してられない。時間は有限、タクミン、さっさと出発する」
キッとした目をしてるつもりだろうが、垂れ目でまだ照れが頬に名残が残っている智美は怖くもなんともない。
だが、また蹴られたら溜まったモノではないので肩を竦めると荷物を纏め出した。
▼
出発の準備が済んだ俺達は2階へと続く階段を降りながら話をしていた。
「しかし、迷ったから余計にそう思ったのかもしれないが、1階の広さはかなりものじゃないか? この調子だと、この広さに苦労しそうだな」
「ん、そうでもない。どうやら逆ピラミッドのように下へ行けば行くほど狭くなってる」
断言する智美に俺は不思議そうに首を傾げる。
「その情報はどこから?」
「上での睨み合いが始まる前にダンジョンアタックしてた人のマッピングした地図を見せて貰った」
思わず、足を止める俺と見つめ合う智美の間に沈黙が下りる。
黙って、智美の柔らかい頬を抓んで持ち上げ始める。
「痛あーい! タクミン止めて、智美の小顔が大きくなっちゃう!」
「お前のは小顔じゃなくて単純に全部が小さい……いや、体が小さいからむしろ顔はデカイぞ?」
あああっ! と叫ぶ智美が抓む俺の手を両手で持って引っ張られる力に対抗しながら怒ってくる。
「智美の顔が大きいという言葉の撤回を求める!」
「そんな些事はどうでもいい! それより地図を見たのか? なら迷う必要ないんじゃないのか!?」
ギャアギャアと叫ぶ智美にうんざりした俺は頬を抓る手を離してやる。
頬を摩り、涙目の智美が見上げてくる。
「他人の地図を見て楽するイージーモードをするのは智美のポリシーに反する。真剣にするなら縛りプレイが一番」
「変態か? まあ、智美が変態かどうかはどうでもいいが……後、縛りプレイが一番、とか現地人に言うんじゃないぞ? 絶対、誤解されるからな?」
ただでさえ、幼女というステータスを持ってるのにアブノーマルな趣味まで含まれると勘違いされたら、その道の人が聞けば失血死は免れない。
諦めるように溜息を吐く俺は、智美に確認する。
「確か、智美のスキルにマッピングがあったよな? ここまでの地図は作ってるのか?」
「当然! 地図を軽視する者は死ぬべき!」
なら、お前は死ぬべきだよな? と言いたいのを耐えて、地図を見せるように言うとジャポ○カ自由帳を出してくる。
色々突っ込むのを耐えて、開いて中を見た瞬間、地面に叩きつける。
「子供の落書きかっ!!」
「し、失礼な、誰が見ても良く分かるように色分けもしてる!」
智美の地図はヨレヨレの線で描かれて、余白にはおそらく人、俺と智美が仲良く手を繋いでいる幼稚園児レベルの落書きが描かれている。
一生懸命、色分けされてる場所のここは何で、などと説明してくるが俺にはさっぱり分からない。
俺は優しい笑みを浮かべて智美の視線に合わせて、智美の両肩に手を置く。
「マッピングの他にデッサンのスキルも取得したら良かったな?」
その時の俺達を第三者が見れば、幼女を虐める少年にしか見えなかったかもしれない。
それから必死にご機嫌取りをした俺の努力が報われたのか、智美の機嫌が持ち直し、2階に降りて探索を開始した。
「しかし、地図があるレベルで探索が進んでるなら納得だよな?」
「何が?」
そう聞いてくる智美に答える。
「宝箱、宝箱だよ。1階を彷徨ってる時に1個も見なかったからな?」
「それはそう。1階と2階は全フロアのチェックは済んでるらしい」
俺の疑問にあっさりと答えてくれた智美の言葉に溜息を零す。
つまり、この2階はさっさと降りてしまった方がいいという事だな……
「じゃ、降りる階段を探そうぜ? ここにいても時間の無駄だから」
そう言う俺の言葉に智美も頷き、俺達は階段を探す為に前に進んだ。
しばらく探索していると目の端に何か気になるモノが見えた気がした俺はそちらに目を向けると思わず声を上げる。
「おい、宝箱があるぞ!?」
「本当、取りこぼし?」
智美は意外とばかりに驚いている様子で俺と一緒に近寄るが途中で俺を止める。
「罠かどうか確認する」
「ああ、そうだな、頼む」
そう言うと智美が目を瞑って掌を宝箱に向ける。
すぐに目を開けて頷くと俺を見上げる。
「罠じゃない。何か中にある」
「よおーし! じゃ開けるぞ!!」
俺は嬉しさを隠さずに宝箱を勢いよく開けると宝箱の中から眩しい光が飛び出してくる。
目を細める俺の視界には、白髪、白髭、半裸のジジイ、そして激しく主張するコシミノ。
出てきたモノがドヤ顔して叫ぶ。
「はい! 出てきたのは私! ば……」
最後まで言わせずに俺は宝箱のフタを強引に閉じる。
疲れた顔を智美に向けながら文句を言う。
「おいおい、新手のミミックだったじゃないか? しっかりしてくれよ?」
「ごめん、次はこんな事ないようにする」
ガタガタと激しく揺れる宝箱を背に俺達は、3階へと続く階段を探す為に探索に戻った。
遥か彼方のコシミノ バイブルさん @0229bar
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★9 エッセイ・ノンフィクション 連載中 17話
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