第4話 ゴミはゴミ箱へ、知ってますが何か?
ダンジョンに入った俺達であったが、戦争が始まったせいでダンジョンアタックする者がいなかったせいか、モンスターに相手してくれとモテモテになっていたりした。
そして、今もオークとゴブリンの混成軍と戦っているところであった。
「タクミン、右斜め前3歩!」
「おう! 分かった!」
罠感知というスキルを持った智美に指示を貰い、俺は迷わずに言われた場所へと向かう為に目の前にいたゴブリンを切り裂いて跳躍する。
足が指定の場所に付きそうになったところで、すっ呆けた声をで智美が言ってくる。
「タクミン、何してるの? そこは落とし穴」
「罠なら罠って言え!!」
慌ててブロードソードを天井に突き刺して振り子の要領で智美の下に戻ってくる。
てっきり、安全地帯かと思っただろうがぁ!!
曲芸師の真似事をさせられた俺に智美がおひねりとばかりに銅貨を投げつけてくる。
「イタッ! まだ戦ってる最中だろ、気を抜くなよ!」
「大丈夫、大丈夫、タクミン強いからオークやゴブリンなんて敵じゃない」
うんうん、と頷きながらほとんど分からない変化ではあるが口許が笑みを作る智美に言われて満更でない俺。
いやぁ~俺にかかればゴブリンの100匹や200匹などぉ~
本当にこられたらかなり生き地獄を体感させられそうだが考えないようする。
確かに俺は戦闘力には自信はあったが結果論ではあるがあそこで智美と出会えてたのは幸運であった。
俺には探査系のスキルが皆無で、逆に智美は戦う事は苦手とするが探査系、俗に言うシーフ系のスキルは豊富に持っていた。
それこそ、100匹のゴブリンに絡まれても鼻歌を歌いながらでも逃げてこれるぐらいに。
そう、智美は儲け物だった。
だが、とオーク達を目の前にしながらも後方を見る。
「ふっふふ、やりますな? 次は私の番です」
壁と壁に火の魔法の応用らしいが紐状にした火の塊を繋いでロープ変わりにしている。
このオッサン、いや、ジジイはどうやら火の魔法が操れるタイプらしい。
「はっはっはっ!」
徐々に後ろに反っていき足首の力で耐えながら目の前の火のロープを潜っていく。
もうお分かりかと思うがリンボダンスをしていた。ゴブリンと。
無事に渡り切ったジジイが額の汗を拭い、ゴブリンに指を突き付ける。
「次はそちらの番ですぞ!」
「ギッギギ!」
何を競ってるのか分からないが、ぶつかる視線に火花が散る。
火のロープを見つめるゴブリンが意を決したようでジジイの真似をして火のロープを潜ろうとするが革製の腰巻に火が引火する。
火ダルマになるゴブリン。
「ギャギャギャァァ!!」
「危ない!」
そう言うと火ダルマになったゴブリンに布を被せて火を消すジジイ。
このジジイは何がしたいのだろう……
この訳の分からない見せ物をオークと共に見てる俺もどうかしてるような気もする。
鎮火はしたが火傷が酷いゴブリンは震えながら立ち上がる。
「良い勝負でしたぞ!」
そう言うとゴブリンにサムズアップするジジイに釣られるようにゴブリンも「ギギッ」と鳴いた後、不器用にサムズアップするとダンジョンの奥へと去っていく。
去るゴブリンに手を振って再会を祈るジジイの後ろ姿を見つめる俺は智美に聞く。
「なあ、さっき言ってた罠はどこだっけ?」
「ん? そこだけど?」
指差す方向を見つめた俺が頷くと前方にいるジジイの脇を掴んで持ち上げる。
「タクミ殿、くすぐったいではありませんか? 私をお持ち帰りしてどうされるというのです……」
最後まで言わせないとばかりに智美に指定された場所へとジジイを放り投げる。
飛ばされたジジイは空中でネコのように体勢を整えながら叫ぶ。
「なんとぉ!!!」
鳳凰のポーズを取りながら着地すると床がパカっと割れ、その勢いのまま姿が消える。
「いやぁぁぁぁ!!」
ドラップ効果を聞きながら智美に顔を向ける。
「やっぱり狭い空間で歌を聞くと上手く聞こえねぇ?」
「タクミン、鬼だね?」
責めるような言葉を言うがどうでも良さそうにする智美を見つめてた俺であったが前方にいるオークに言う。
「解散っ!」
その言葉と共にオークがこの場を離れて行ったので俺と智美はジジイ、バイブルさんの尊い犠牲に感謝して先に進んだ。
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