幻のゲーム

けものフレンズ大好き

幻のゲーム

「そろそろ飽きたかな……」

「そりゃあんだけ毎日してればね……」


 今日もゲームで遊ぶキタキツネちゃんですが、流石にマンネリ気味。

 温泉にあるゲームはもうほとんどマスターし、対戦する相手もあまりいません。

 そんなとき、たまたま温泉に来ていたキリンちゃんが言いました。

「私これと似たようなもの見たことあるわよ」

「え、どこどこ!?」

「あれはろっじね、間違いないわ!」

 キリンちゃんをそれなりに知っていれば、かなり疑ったでしょうが、残念ながら2人はそこまで面識がありません。

「ギンギツネ行きたい! 行きたい! 行きたい!」

「んー、でも温泉のメンテナンスもあるし……」

「じゃあしてから行く!」

「仕方ないわねえ……」


 結局最後はキタキツネちゃんに甘いギンギツネちゃん。

 それから2人は温泉のメンテナンスを終え、ろっじアリツカへと向かいました。


「いらっしゃいませー」

 いつものようにアリツカゲラちゃんが笑顔でお迎えします。

「お泊まりですか? お客様のあらゆるご要望に応えられるお部屋をご案内しますよ」

「それよりゲーム!」

「ゲーム?」

 アリツカゲラちゃんはきょとんとします。

「聞いた事がある」

 唐突にオオカミちゃんが話に割って入ります。

 アリツカゲラちゃんはすぐに「また悪い癖が……」と思いましたが、キリンちゃん同様、オオカミちゃんもあまりよく知らない2人は、真剣に話を聞きます。

「実はこのろっじには呪いのゲームという物があるらしいんだ。もしそれをプレーしてしまうと、クリアーするまで絶対にろっじから出られない。しかもあまり長いことしていると、知らない間に身体がセルリアンになってしまうという……」

「そそそそそそ、そんなゲームど、どこの誰がするのよ!」

 あからさまに怯えるギンギツネちゃんに比べ、キタキツネちゃんは「それはそれで面白そう」とむしろ興味津々。


「お、その顔いただき。うそうそ、冗談だよ。そんなものここには存在しないさ。でもゲーム自体も聞いたことはないなあ。アリツさんはどうだい?」

「私も……。そもそもゲームがどういう物かよく分かりませんし」

 もしここでキリンちゃんから聞いたといえば、2人とも諦めて帰った方が良いと言ったでしょう。

 しかし、残念ながらキタキツネちゃんもギンギツネちゃんもアミメキリンちゃんのを知りません。


 キタキツネちゃんは少し考えた末、


「だったら探す!」


 そう結論を出しました。

「迷惑になるでしょ」

「いえいえー。今はオオカミさん以外お客さんもいませんし。私も本当にゲームというものがあるなら見てみたいです」

「じゃあ探そう」

「ちょ、ちょっと――」

 言うが早いか歩き出したキタキツネちゃんを、ギンギツネちゃんは慌てて追います。


「何か面白いことになりそうだね。いい漫画のネタになりそうだ」

「本当にオオカミさんは……」


 ろっじアリツカは部屋数も多く、多く地下にも部屋があります。

 キタキツネちゃんはその全てを上から虱潰しに探していきましたが、残念ながら温泉にあるようなゲーム筐体は一向に見当たりません。

 そして日もすっかり暮れてしまいました。


「ここまでないとなると、あの子の勘違いだったんじゃないの。もう諦めて帰りましょうよ」

 オオカミちゃんの話に少し影響されているギンギツネちゃんは、なるべく早く切り上げようとします。

 しかし、キタキツネちゃんのゲームに対する執念はそれ以上でした。

「いーやー! 探す! 私ここに入ってからすごく磁場を感じた!」

「でももう他に探すところなんて……」

「うう、確かにだんだん磁場も弱くなって……」

 そこでキタキツネちゃんははっとします。


「そういえばそんなに探してないとこあった!」


 キタキツネちゃんは踵を返します。

 ギンギツネちゃんが後を追うと、キタキツネちゃんはろっじアリツカの玄関ロビーにいました。

 確かにここはあまり調べていませんが、見える範囲で筐体らしきものはありません。


「どうされました?」

「ちょっとどいて」

 キタキツネちゃんはアリツカゲラちゃんを押しのけ、フロントの下を覗きます。

「あった」

「嘘!?」

「まあ」

「へえ……」

 その場にいた全員が驚きます。


 けれど……。


「でもこれゲームじゃない」

 キタキツネちゃんが見つけたのは小さな宝箱でした。

 少なくともゲーム筐体が入る大きさではありません。


「ここまできたんだから、とりあえず開けてみないかい?」

「わかった」

 オオカミちゃんの勧めに従い、キタキツネちゃんは宝箱を開けました。

 その瞬間、ひどい臭いがロビーに充満します。

 なんと中にあったのは、腐ったジャパリまんでした。

「誰がこんないたずらを!?」

「……あ!」

 オオカミちゃんがぽんと手を叩きます。

「そう言えば以前、キリンが宝探しゲームとかいうのをとしょかんで知って、それを試していたな。結局自分で隠した場所忘れて見つからなかったんだったっけ」

「ああそういえば……」

 アリツカゲラちゃんも思いだします。

 

 そうです。

 キリンちゃんの言っていたゲームとはこのことで、実はあの時、筐体ではなくキタキツネちゃんがしていたゲーム画面の方を見ていったのでした。

 それがキリンちゃんの中で微妙にこんがらがって、ああいった言い方になったのでした。


「最近妙に臭いと思ったら、これが原因だったんですね」

「そんなあ……」

 キタキツネちゃんはガックリ肩を落とします。

「ほら、今までのゲーム探し自体がゲームと思えばいいじゃない」

「ううう……」

 キタキツネちゃんはショックからまだ立ち直れません。

 そんなキタキツネちゃんの肩に、ぽんとアリツカゲラちゃんは手を置きます。

「当ロッジではあらゆるお客様のニーズにお応えしています。ずっと無駄な努力と分かって絶望しているフレンズ様向けの部屋も、今すぐにご用意できますよ」


『・・・・・・』


                                  おしまい

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幻のゲーム けものフレンズ大好き @zvonimir1968

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