物語の冒頭から、執拗なほどに、細かい描写が続いている。これを、つまらない……ととるのか、なにかの伏線……ととるのか。
わたしは、後者であれば良いのに……との思いで読み始めた。
物語は、小さな島での、小学生たちが遊ぶ様子が語られている。今日の参加者は、12人。自転車と島の全部を使った、壮大な鬼ごっこが行われた。
主人公が、自転車を持ち出すところから描かれ、島の様子や、必死に自転車を漕ぐ様、追いつ追われつする緊迫感まで、本当に事細かい。
途中で合流する、幼なじみの女の子が登場してからは、ほのかな恋ごころさえ、作中に漂わせているようにも思えた。
ラストシーン。島を一望できる高台での、ふたりのやり取り。鬼ごっこも終わりの時を迎えようとしていた。
明日は、缶蹴りをするんだと……。そして、幼なじみの女の子が、別れ際に主人公の肩を叩く。
ここまでの描写とは反対で、なんとも爽やかであっさりしていて、後味の良い終わり方だと思った。
延々と読んできた甲斐があった……。