第6話

 ぼくは世界の果てを奥へと歩いて行った。いつか世界の最果てに着くだろう。その頃には、この体は消えてなくなるだろう。

 ぼくは世界の果てにやってきた。世界の果てには墓標があるばかり。あらゆるものがここで死を迎える。ぼくも例外ではない。

 ぼくはこの世界の果てで死ぬだろう。

 世界の果てでは記憶というものがだんだんなくなっていく。ぼくの記憶はだんだんなくなっていく。

 ぼくは今まで生まれてきたすべてを忘れてしまい、ただの記憶のない通行人になるのだ。

 ぼくの記憶の中で、どうしても覚えておきたいような記憶などないのだけれど、ぼくは世界の果てで記憶を失い、死んでしまう。

 引き返すつもりはない。ぼくは世界の果てですべてを終わらせに来たのだ。

 おそらく、外界の誰もぼくのことなど覚えてもいないだろう。

 ぼくにお似合いの場所、世界の果て。

 世界の果てで、ぼくはすべてを失い、死に絶えるだろう。ぼくはそれを望んでいる。

 ぼくは歩くのに疲れると、世界の果ての遠い墓を見ながら、そのまま自分が死ぬのを待った。

 ぼくは自分が生きていることも忘れてしまい、生きることができなくなり、死ぬはずなのだ。ぼくはそれを待っている。

 ぼくは世界の果てで、目の前にある自転車がだんだん錆びていくのを呆けながら見ていた。この自転車に乗っていた人物はどうしてしまったのだろう。いや、わかりきっているではないか。死んだのだ。

 死んで、消える。

 死んで、忘れ去られる。

 それ以外に何があるというのか。

 ぼくは世界の果てで、意識がなくなるまで、自転車が錆びていくのを眺めていた。

 ずっと、ずっと眺めていた。

 世界が終わるまでずっと、世界の果てで。

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世界の果てへと出かける旅 木島別弥(旧:へげぞぞ) @tuorua9876

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