脱出叶わぬ、「迷宮」の純粋な恐怖。そして。

迷子。
この言葉のイメージはひどく幼稚で滑稽に見えます。
しかし実際に道案内人もおらず、地図もなく、携帯の電波も入らないような僻地に取り残されればどうでしょうか。
それは幼稚でも滑稽でもなく、ただ突然に急激に、命の危機となります。途端に心細く、恐怖が増していきます。

この小説はそんな「迷子」の物語です。賞金首を捕えに来ただけの一行が、勝手知ったるはずの「迷宮」に囚われる。
そこで次々に起こる不可解な現象。
迷宮の血塗られた過去と共に何が彼らを囚えているのかが明らかになっていく。
この「迷宮の得体の知れなさ」の表現が見事です。

何故迷宮は再び「迷宮」となってしまったのか?
「神話」を打ち破る為に人間達が行った非道、「魔法殺し」とは?

最後に待ち受ける壮絶な死闘は、貴方も無意識に拳を握りしめることでしょう。
ダークファンタジーがお好きな方に是非読んで頂きたい作品です。