恐怖とは何か、というのを再考させられる

小説に限らず、ホラージャンルにおいて人体を恐怖発生装置にするとどうしてもゴア要素に引っ張られてしまい作品自体が飲み込まれてしまう危険があるのだが本作では恐怖という感情に主軸を置くことで発生装置のままで話を動かしている点が良かった。何故人は恐怖という感情を得るのか、危険という意味では忌避するであろう感情に対して何故人は惹きつけられるのか、それは美しさだけでなく傍観者としての自分が知らない世界の一端を恐怖から感じてしまうからなのかもしれない。恐怖とは真なる人の感情であるという正木先輩の言はある意味正鵠を得ているのかもしれない。死が隣にいる恐怖は人間の土壇場ともいえるし、何より土壇場は最も人が輝く瞬間なのだから。故にホラー小説は続きが読みたくなるのだ。人の輝きを求めて・・・

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空葬テラー