迸るエロスと奇想。そして愛慕と信頼。

少年と少女(……とひとりの心友)の関係をめぐるひと夏の恋愛ストーリーです。

作者様持ち前のエロネタによって多分にコーティングされてはいますが、作品が扱っている題材は物語の結末も含めて非常に繊細なものであり、それをライトなコメディに昇華するためにかなり気を遣って書かれているのだろうということが端々から想像されます。

少年タクミ君はエロ中学生以外の何ものでもないのですけど、読み進めるにつれて少女ミキちゃんの世界を受け入れ肯定できるのは彼しかいないと実感されるとともに、後半ではそんなタクミ君を想うミキちゃんの強い気持ちがぐいぐい物語を牽引していきます。恋する乙女は最強。

伏線の回収と主役二人の関係性の収束が弧を描くように同期していくさまは鮮やかで、さすがとしか言いようがありません。随所に差し挟まれるぶっ飛んだネタの数々も秀逸です。

一見するとなんだこれは……いや、なんだこれは……という印象を受けるかもしれませんが、最後まで読むときっちりSFでファンタジーで、そして熱い恋愛小説であったという読後感を抱くこと間違いありません。あと、この作品の影響で『妖精』という言葉からモザイクのアレが連想されるようになってしまったので私はもうダメだ。

おススメです。

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