セカイ系ミリタリ現代日本で化け狐の妹(仮)と四角関係ラブコメ

物語の舞台は、軍事的脅威にさらされている現代の日本。
現実とは少し違った歴史をたどった世界では、軍隊が人々とより身近にあり、ニュースは戦争の話題が絶えず、それは主人公の生活とも無関係ではない……はずなのですが、語り手である当の少年と言えば、片思い中の少女のことで頭がいっぱい。
主人公の「妹」を名乗る謎の妖狐や恋敵の年上の大学院生、そしてぎくしゃくとした実家との関係などに振り回され、とても世界の危機などを考えている余裕はない……。
そんな彼の恋路を手助けするのは、なぜかいつも隣にいる妖狐の少女が持つミラクルな力と全国に張り巡らされた化け狐たちのネットワーク。

果たして主人公は数多の課題を乗り越え、恋を実らせることができるのか!?

この作品を読んでまず興味を引きつけられるのは、『イリヤの空、UFOの夏』や『最終兵器彼女』を彷彿とさせるような世界設定で、あえて土着的な伝奇モチーフを主題にラブコメを展開するというその奇想性です。
ミサイルが飛び交うような世界でも、学生は普通に青春に悩み、田舎はローカルバスが走り、神社には神様が祀られ、人は狐に化かされているのです。

しかしまた同時に、この作品の魅力は奇想性のみにあるのではありません。

背景では世界規模の戦争の危機が迫りながらも、あくまで主人公の身の回りの恋愛に焦点が当てられている。そこに物語的な妙味が湧いている。淡々と日常的な心理描写を積み重ねることによってこそファンタジーの力が映えるという、作劇的に重要な事実に気付かされます。

ありそうであまりないセカイ系あやかしラブコメ。

オススメです!