アップデートに失敗しました

作者 冬野瞠

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★★ Very Good!!

個人の生態を監視し、アップデートの是非をもって自己矯正を促す監視と束縛の社会。

その“目”から開放される手段があることを発見した主人公。

はじめはスムーズに進んでいくかにみえる物語ですが、そんなある日――。


監視からの開放による開放感、そして絶望……からの、最後の展開。物語は浮き沈みのテンポよく進んでいき、最終的には爽やかに締められてします。

しかし個人的に、どことなく「ちょっと待てよ」と立ち止まってみたい終わり方でした。というのも――。



これは深読みですが、主人公が発見したマイクロインテリのその“抜け道”も――よくよく考えてみると、もしかしたら仕組まれていたものだった可能性に気づきます。だとすると、やはり世界は支配されているのかもしれません。

それを踏まえてみると、みなさんは最後の場面で頷くことができるでしょうか。それとも、真実を知って嘆くでしょうか。または、さらに抗うでしょうか。

監視と支配に慣れてしまったが故の――選民意識につけこまれた、少しだけ影のあるハッピーエンド。これはそんな物語なのかもしれません。


そして、主人公がこの事態に陥った根源を絶やさずに心の中で灯し続けることができるのなら、この先にもさらなる物語が待っていそうです。

★★★ Excellent!!!

伊藤計劃氏の作品にかなり影響を受けているとのことですが、システムの描写や各所からの引用が鮮やかで、作者独自の世界観が如実に描かれていました。

中でも主人公の感情の変化は丁寧に描写され、「これは自分にも起こり得る事なんだ」との実感を持って読むことが出来ました。

どこか突き放して冷静に描かれた伊藤計劃氏の作品と異なり、人間らしい視点と救いのある結末が好きです。
そして、ささやかな自由の大切さが身に沁みました。

★★★ Excellent!!!

 個々人の好みや体調、未来、学問や職の適性。様々な「監視」というものが人々の中に馴染み、監視が公然と行われるようになった近未来の話。
 絶え間なく行われる監視は人々の意思行動を希薄にしていき、やがて意思の要らない環境を享受するようになる。自由が剥奪されていることも知らずに生きる学を含める家族の姿は、現代の機械化や自動化を風刺しているようにも思えます。その中で好奇心にかられて、逸脱行為といえる行動をしてしまった学は、社会の不適格分子として殺されてしまうのか。ぜひご自身の目で続きを見てください。ラストまで目が離せません。