第3話
第3話
早朝、噴水が綺麗に日の光で輝きを放ちながら、市民達が優雅に会話をし合っている、ミストラルの近くにある広場。
石畳の綺麗な道を銀髪の少女と赤髪の少女が2人で歩いていた。
「また、学校以外で魔術を使ってエミリアは………危ないって言ったのに」
「ご、ごめんねレミス。今度は使わない様に注意するから」
「前も言ってたでしょ! はぁ〜これだからエミリアは」
2人の仲睦まじい会話が響いていた。
「今日のレミスはなんか違うね〜」
女の子を助けて、その両親達と別れた後に合流したレミスを不思議そうに見つめていた。
「………うぅ。やっぱり顔に出てる?」
エミリアの隣で肩を落としながら、自分の顔をペタペタと何度も触った後に、小さなため息をついていた。
「今日の事でしょう?」
エミリアは心配そうにレミスの目を見つめる。エミリアとレミスはお互いの事を全て知っている中である。秘密などと言う言葉とは無縁なはずだ。
「………………うぅ」
レミスは顔を伏せて表情をエミリアに見えない様にていた。だけど、どうにも隠せない。
「今日、新しい先生が来るでしょ? 今いる先生が急に変わって。ようやく上手く話せる様になって来たのに………」
「残念だったね。レミスは先生と話すのに何故か抵抗があるもんね」
「……うぅ。だって歳上の人は苦手だもん」
「しかも、前の先生はカッコよかったもんね〜」
「ほぇ!? か、カッコ良くなかったよ!」
「レミスって、カッコ良い歳上の男性がタイプだからじゃない?」
「…………ひゃぁぁぁ!?」
エミリアはレミスを面白がってからかい。レミスは両手で真っ赤になった顔を隠していた。
「別に魔術を習うだけだから! カッコ良さとか関係ないから!」
「あ、そんなレミスに朗報だけど、今日来る先生カッコ良いかはわかんないけど、凄い若いらしいよ?」
「知ってる。別にカッコ良いとか関係ない。魔術をどんだけ教えてくれるかが重要なの」
はっきりとエミリアを見つめてながら言った。
「学校長だったら良いのにね」
「そうね。レクスの称号の、あの人ならね。まぁ、レイブンとかの称号持っている人だと文句ないんだけど」
2人がそんな会話をしながら、歩いていた時。
「クソ野郎! あいつ、こんなに読ませやがって! 時間がとっくに過ぎたじゃねぇか!」
目の下に物凄いクマをつけながら、魔物の様に後ろから猛然と走って来た。
「え?」
「…………ほぇ?」
「や、やばい! 止まらねぇ!」
勢いを落とせないまま、1人の男性が少女2人に襲いかかろうとしていた。
「ゲイル=バースト!」
レミスが向かって来た男に手を向けて、魔術を唱えた。瞬時に、襲って来た男の身体に物凄い突風の爆発が出て来た。
「マジで!?」
男は驚いた表情を見せたまま、突風により身体が宙を舞い、噴水へと突っ込んでいき、高い水しぶきが上がっていた。
それを2人は無言で見つめるしかなかった。
「どうしようエミリア……」
「何でバーストなの………」
2人の視線を無視しながら、男は足に手をついて立ち上がり、乱暴に水を蹴りながら、噴水から出て、呆然としている2人に近づいた。
「痛たたた。クソ、ルイス並だぞこれじゃ」
「大丈夫ですか?」
エミリアは心配そうに男性に手を伸ばしていた。
「俺か? 大丈夫、大丈夫。やられ慣れてるから」
その男性は、手を横にブンブン振って、自分の身体を見せていた。
男は黒い髪に、黒い目。身長はエミリアより、頭を一個半分に大きく。歳は二十代前半くらいで、顔もスッキリとしてどこか子供っぽい感じがしていた。
服は、黒いシャツに、黒いズボン。清楚なカッコをしているが、至る所にシワやヨレがあった。
いかにも、着慣れてない感じがしている。誰もがみても、働いていない事が分かるほどに明らかであった。
「ごめんな、急に突っ込んで来て」
「いえ、丁寧にありがとうございます!」
エミリアは男に深く頭を下げていた。
「ほら! レミスも謝って」
「えぇ!? でも………」
レミスはどこか怯えた表情をして、目を伏せた。
「レミス! 」
「………うぅ。ほ、本当にごめんなさい!」
エミリアもレミスの隣に立って、男に向かって、ペコリと頭を深く下げる。
「いや、こっちも悪かったから」
「いえ、こちらも悪かったですから」
「ちょ、エミリアもそんなに謝らなくても………」
「…………エミリア?」
男は何度かブツブツ言った後に、不思議そうに眉を寄せて、エミリアを見つめていた。
「……………ん! …………エミリア?」
「あの? 何かありましたか?」
不思議そうに男を見つめているエミリアを構わず、男はどんどん顔を近づけていく。
「あ、あの!」
「………………」
何度かエミリアは瞬いをして、戸惑っているのにも関わらず、男は頬を緩めながら、エミリアの頬、手、腰、身体のあちこちを触った後、エミリアの頭を撫でていた。
「いきなり何しとるぅぅぅぅ!」
レミスが勢いをつけて、エミリアを撫でていた男に向かってドロップキックを醸していた。
「マジでぇぇぇ!?」
男は無様な悲鳴をあげると、数十メートル石畳の道を吹っ飛び、花が満開に咲いている所にあったベンチに頭から突っ込んで、無様なカッコになっていた。
「い、いい、いきなり何やってんのよ!? いい年頃の貴方が、歳下の女の子の身体を舐め回す様に触った後に、自分の物みたいに撫でて! 猥褻よ! 変態! ケダモノ! ダメ人間!」
「ちょ、ちょと待て! 懐かしい感じがして! いつもだと幼女しか見てないから!」
「結局変態じゃない!」
「ごほぉぉっ!?」
倒れている男の溝に、ブーツの尖った角がめり込んで、男は悲鳴を上げていた。
「エミリア! 早く、警察でも、処刑人でも連れて来て!」
「辞めて! せっかく出会ったのに! そんな事したら、ルイスにバーストを死ぬまで撃たれることに!」
レミスの足を掴みながら、死に物狂いで頭を地面に何度もつけていた。
「レミスもそこら辺にしたら? 凄い悪い人では無さそうだし」
「…………えぇ?」
「ありがとうエミリア! エミリア〜」
男はいきなり立ち上がり、エミリアに向かって思いっきり抱きついていた。
「ひゃっ!?」
「エミリア!? この変態がぁぁぁぁっ!」
抱きついていた男の服を荒々しく引っ張り、宙に舞った男の脇腹めがけて拳を食らわせていた。
又しても、男は吹っ飛び残念なカッコになっていた。
「…………ふぅ、ふぅ」
真っ赤になったレミスが、何度も呼吸をしてイライラを抑えていた。
「酷くないか!?」
倒れていた男は、無様なカッコをしながら、逆鱗に触れているレミスの事を考えず、話しかけていた。
「酷いですってぇぇぇ!? エミリアにあんな事をしときながら! …………大丈夫エミリア?」
レミスは男を、汚物を見る様な視線を送り、男がエミリアに抱きついたところを綺麗に払っていた。
「もう、そこら辺にしてレミス」
「エミリア………」
戸惑っていたエミリアが男を可哀想に見つめていて、レミスを止めていた。
「ご、ごめんなエミリア」
男はゆっくりと立ち上がると、エミリアに礼儀正しくお辞儀をしていた。
「いえ、レミスがすいません」
「ちょ! ちょと!」
「レミス〜!」
男がお辞儀をすると、エミリアもお辞儀をして謝っていた。
レミスは戸惑って男を睨んでいたが、エミリアに睨まれたので手をブンブン目の前で振って下を向きながら否定していた。
「では、私達はここで………」
「ま、待ってよ! エミリア!」
もう一度エミリアはお辞儀をした後、レミスを置いてミストラルに歩いて行くと、急いでレミスが後ろから走って来た。
魔術師と7つの大罪 志乃 夜華 @shinoyoruka
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