けものフレンズと小説家になろう

とっきゅん

けものとなろう




 現在、話題沸騰の「けものフレンズ」から小説家になろうの作品について分析してみたいと思います。

 けものフレンズについて長々と説明するつもりはありませんので、内容をご存知の方のみお読みになってください。


 このカクヨムでも取り扱われるそうですが、けものフレンズが息の長いコンテンツになるとは思えません。

 一過性のブームに終わるとは思いますが、それでも爆発的な支持を受けたことは確かなのでそこから「小説家になろうの作品(以下、なろう系作品)」の問題点を考えてみたいと思います。


 まず、けものフレンズがヒットした要因について私なりに挙げてみました。


1 「すごーい、楽しい―、君は○○のフレンズなんだね」というキャッチーなフレーズによる入りやすさ


2 可愛い女の子でありながら、モデルの動物たちの特徴をよく捉えているデザイン


3 よく考えられた設定と物語の中核に潜む様々な謎


4 シナリオからもわかる丁寧な描写と練られた演出


 と、こんなところでしょうか。


 最初の頃は1と2が中心を占めていて、Twitterトレンドもそちらに偏っていて、「IQが低くなる面白さ」という形で話題になりました。


 しかし、途中から、主人公であるカバンちゃんの正体や舞台であるじゃぱりらんどの秘密についての考察が増えていき、また別の視聴層を獲得していきます。

 それが極まった結果、現在のホットな話題作となった訳です。


 では、この作品と、現在出回っていて持て囃されているなろう作品に関係性はあるのでしょうか。

 大きなところではない、といえます。

 カクヨムで取り上げられたことから、私が独自に考察してみただけです。

 

 しかし、けものフレンズの話題性はなろう作品群とはまったく違う方向性を示唆していると考えます。


 それは「考察に値する謎」の存在です。


 けものフレンズの話題性は、ただの緩い日常ものやケモラーたちの嗜好にマッチしたからというだけに留まらず、物語に内包された謎がどういうものならか考察する余地が与えられたから、ではないでしょうか。


 逆に、なろう系作品にはそれがありません。


 なろうやカクヨムでもそうですが、2ちゃんねるの関連スレッドなどを見ても、作品の内容に言及していることはあまりありません。


 まして、物語の謎や秘密についての考察議論なんてほぼありません。


 スレッドの消費や伸びからすると、どちらかというとアニメ板のキャラスレみたいな傾向があります。


 それは何故かというと、なろう系作品には「魅力的な謎」が存在しないからです。


 そもそも普通ならば最大の謎になるであろう、主人公の異世界転生、召喚などがテンプレと呼ばれるトラックに轢かれる、神様のミスなどで終わってしまい、問題にならないことが多いこともあるでしょう。

 また、わかりやすい魔王の存在などで物語の軸となる謎は提供されません。

 主人公たちは日常生活を送るのと同じレベルで冒険をするだけなのです。


 テレビアニメを観ればおわかりだと思いますが、ほぼ人気のある作品は考察しがいのある内容や謎、丁寧に考えられた設定があって物語が進み、たまに日常話というものがはいってきて緩急をつけます。

 日常話も受けますが、それはたいてい本編の箸休めであって、そればかりということはありません。


 しかし、なろう系作品は別です。

 日常がほぼすべてなのです。

 そこに謎はほとんど介入しません。


 ちなみに私はそれほど量を読みこんでいる訳ではありませんが、なろう系作品の累計トップクラスを見ても、しっかりと全編にわたる謎が提示されているものは、「盾の勇者」や「リゼロ(含めていいかはさておき)」など一部であって、ほとんどないといっても過言ではないでしょう。


 よく言われている言葉で、「テンプレだけど面白いものもあるよ」というものは、私からすると「面白いキャラクターがいて、ちょっとひねった展開があって、他よりも設定が凝っているよ」程度にしか思えません。

 なろう系作品には、読者を虜にする「魅力的な謎や秘密」はまずないのです。


 こうなると、考え方は変わってきます。


 もしかしたら、なろう系作品というものは謎がないのではなくて、「謎を提示できる」技量のある作家が極端に少ないのではないか、というものです。

 毎日更新が尊いとされる背景は、長いスパンでの作品が書けないから、とも邪推できます。

 

 さらにいうと、なろう系作品でよく言われる「主人公が負ける展開は嫌われる」というものもその一環ではないでしょうか。


 つまり、主人公が負ければ次に勝たせるための展開が必要になり、勝つためにどうすればいいかの工夫が求められます。


 それは「主人公が勝つためにどうするべきかという謎の提示」と言い換えられます。

 もともとストーリーの軸となる「魅力的な謎」さえ提示できない作家たちが、そんな難しい課題にいい答えを示せるはずがありません。

 すなわち、読み進めるとでてくるはずの勝利への方程式は興ざめなものになるだろう、もしくはその可能性が高いのです。


 読者はそれを見抜いていて、「だったら負けさせる展開はいらないよ」となるのではないでしょうか。


 作者の実力不足を最初から疑われているのです。


 それはなろう系作品に限った話ではありませんが(商業作品にも山ほどあります)、なろう系作品は完全に素人に毛が生えたものなのでさらにそう思われるのです。

 

 要するに単純にすかっとするストレスフリーが求められるのではなく、「つまらない解決策を見せつけられる」ストレスからフリーになりたいのではないでしょうか。


 謎を作ることを怠ってきた作者とそれの回答に我慢できない読者が、わかりやすい日常的なストーリーにのみ集まってきたという訳です。


 そこで、けものフレンズに話を戻します。


 こちらは考察しがいのある謎が提示されていて、それに人々が飛びついた格好になっています。

 視聴者は可愛いキャラクターを愛でつつ、ストーリーを議論したいのです。

 それを好む層が意外と数多いことが、けものフレンズのブームにつながったのでしょう。


 なろうの2ちゃんねるのスレでよく見かける「じゃがいも論争」もある種、議論のお話です。

 話題になる作品に考察すべき謎がないから、ただだらだらと日常を語っている中で、でてきた議論の種となるのが「じゃがいも」だったということなのです。


 おそらく議論している人たちも、警察と呼ばれる人たちも、たかがじゃがいもにそんな執着がある訳ではないでしょう。

 ただ、2ちゃんねるのなろうスレには珍しい、議論の余地のある内容だから飛びつくのです。

 考察したり、議論したり、たまにキャラクターの愛らしさを語ったりしたいのです。


 読者は「魅力的な謎」に飢えています。


 なろうの読者でさえも。


 けものフレンズに殺到した人たちのように。


 これからもなろうは謎の提示できる作品はそんなに多くは出ないでしょう。

 

 でも、なろうが変わるとしたら、そういう謎を用意できる作家たちが増えていくことではないでしょうか。

 このカクヨムでも一緒です。


 もし、これを読んだあなたが、全編にきちんとした謎があって最後にそれを解き明かして綺麗に〆られた作品があったら大事にしてください。


 そんなに数がないからです。


 そして、あなたにとってきっと大切な作品になるでしょうから。






 ちなみに私にもこっそりと教えていただけたら幸いです(笑)



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