第49話カフェ


シノノメテラス。

日本に8箇所ある、シノノメ傭兵団の所有する団員専用の宿泊施設の一つ。

施設内は、高級ホテルのようになっており、団員は自由に使用できる。

主に、シュラに近い西日本に建てられいる。


施設内のカフェで、アズマが隊員のスグリ、クメ、ダイゴと話をしている。

副長のスグリ、がタブレットを操作しながら、


「アズマくん、今回の団「バリケード」戦は、記念すべき戦いになりましたよ」


アズマが、カフェオレを飲みながら尋ねる。


「記念?……何の事?」


「今回のバリケード、ガライ団長で、アズマ隊の結成から数えて、ちょうど五十人目の団長処刑です」


それを聞いて、ダイゴがジョッキを片手に、アズマと肩を組んではしゃぐ。

二人の顔を見て、スグリも微笑む。


「しかも、それだけじゃなくて、団の壊滅もちょうど30組になってます」


「オオッ!すげーじゃねぇか!アズマ!

 そうだ!

 今日と明日は、ちょうど休息日だから、隊員集めてハデに騒ごうぜ?」


クメが、ドーナツを食べながらダイゴに冷たい視線をおくる。


「ダイゴさんは、いつもハデに騒いでるじゃないですか…追跡中だって…」


「うるせぇよ、クメ!

 そんなツッコミはいいから、お前は他の隊にいる、お前のファンの女達も呼べ!」


「ダイゴさんに言われたって、嫌ですよ…

 まぁアズマさんがやるって言うなら、呼びますけど……」


「やるよな?アズマ…なぁやろうぜ?」


ダイゴがアズマの肩を揺する。


「ハハハ…そうだなぁ…

 でもスグリ、前もそんな事言ってたけど、

 よくそんな数字わかるね。

 どこかに掲示してあったっけ?」


スグリが、タブレットを抱きしめて答える。


「いいえ!

 全て、副長である私が、毎戦もれなく計測していますので!

 アズマくんの事は全て、この私の頭の中に入っております!

 星座から、好物、趣味趣向、好きな色、犬派猫派、姓名判断、動物占い、尻フェチまで!

 アズマくん……褒めて…くれます?」


「あ…そう…なんだ…ハハ。

 あ…りがとね…スグリ」


アズマは苦笑いをする。


「はい!」


スグリは嬉しそうだ。


クメが、メロンソーダのストローをくわえて話す。


「でも、今回で50って、結構ペース早くないですか?

 スグリさん、2ヶ月前に30いくつとか言ってましたよね?」


スグリが、タブレットに目を落とす。


「ええそうよ。

 この1ヶ月で……14人も追加されたから」


クメが、背中を椅子にあずけて、軽く息を吐く。


「やっぱり、そうか。

 どうりでなんか最近、疲れるなぁって思ってたんですよ。

 アズマさん、ハイペース過ぎですよぉ。

 僕は、のんびりハントが好きだなぁ…」


スグリが、少し困った顔で答える。


「仕方ないでしょ?

 最近アズマ隊に入ってくる情報や要請が、

 一気に増えてるから」


それを聞いて、ダイゴが肩を組んだまま、アズマに尋ねる。


「それは、やっぱりあいつの怪我が原因か…

 アズマ、病院には見舞いに行ったんだろ?

 どうだったんだ?」


「ああ…

 ミツイは、元気だったよ。

 入院は1ヶ月くらいだって言ってた」


ダイゴは、少し心配そうな顔をしながら、


「そうか……まぁ、あいつも働き過ぎだったからな、

 少し長めの休暇だと思ってればいいさ。

 な?アズマ?」


「ああ、ミツイもそう言ってたよ。

 心配しないで欲しいってさ」


スグリが、タブレットに目を移す。


「でも、一気にこれだけ情報が増えるって事は、

 それだけ、ミツイ隊が忙しかったって事ですね。

 だって、現在もミツイ隊は、葵副長が引き継いで、

 休隊にはしてないんだから」


アズマが、カップに砂糖を足しながら答える。


「ああ、葵も頑張ってるよ。

 ミツイがいなくても、まだ他の隊よりも忙しそうだった」


すると、クメがアズマに微笑む。


「うちは、アズマさんが休みの時は、

 絶対に休隊にしてくださいね……絶対に」


スグリがクメの肩をはたく。


「ちょっと、クメくん!

 縁起でもない事を言わないの。

 …それよりも、クメくんには隊長試験の要請が、

 何度も来てるのに、ずっと受けないままでいるつもり?」


クメは、また椅子にもたれて、ストローをくわえる。

ダイゴが、クメを睨む。


「…なんで俺のとこには来ないのに、後輩のお前だけ、要請が来てるんだよ!」


「…さぁね…知りませんよ、そんな事。

 体に比べて、器が小さいのが、ダメなんじゃないですか?」


ダイゴがおしぼりをクメに投げる。

クメは、首を傾けてかわす。


スグリがダイゴをいさめる。


「まぁまぁ…ダイゴさんにもそのうち来ますよ。

 アズマくんは、とっくに判定を送ってますから」


アズマは、クメに尋ねる。


「クメは、受けないのか?」


クメは手をひらひらと振る。


「僕は、めんどーな事は苦手ですから。

 命令をされる方が合ってますよ」


スグリが言う。


「おかしいわね…

 命令を無視してサボってる時もよくあるじゃない。

 …アズマくん、せっかくだから、今日は厳しく言いましょう!」


クメは、思わぬ攻撃を受けそうになって、慌てて矛先を変える。


「それは……僕だけじゃなくて…

 ダイゴさんも命令無視して、つっこんで行きますよ!

 この間も、他の隊のとこまで行って、ターゲットを勢いで殺って、

 そこの隊長に怒られてました!」


「クメ…っばか!」


ダイゴが慌てる。

スグリはダイゴを鋭い目で睨む。


「その話は聞いてませんねぇ?

 ダイゴさん……どういう事?」


「…そ…それは」


ダイゴはアズマを見るが、知らない顔でカフェオレを飲んでいる。


「ダイゴさん!

 そういう事を黙っていると、アズマ隊に迷惑がかかるんです!

 向こうにも謝ってないんですからね!」


ダイゴは、190センチを超え130キロの巨体を出来るだけ、小さくする。


「いつの件で、どこの場所で、どういう状況で、誰を殺して、どこの隊に迷惑をかけたのか…

 2時間以内に、報告書を提出してください!

 いいですね!」


「……はぃ…」


クメは、そのダイゴの姿を見て、足をバタつかせながら、満足そうに微笑んでいる。


「……クメくん」


クメは、スグリを見ると鋭い目だけが、自分に向けられていて、ビクッとなる。


「…あなた、知ってて黙ってたのね…

 …報告書…よろしく」


「……」


くわえていたストローが、地面に落ちる。


スグリが、腕を組んで二人をにらみながら、アズマに言う。


「もう…アズマくんからも、何か言ってあげてよ。

 アズマ隊のエース達がこれじゃ、他の隊にバカにされますよ…」


知らん顔をしていたアズマだったが、少し姿勢を正し、目をつぶり、

咳払いをした。


「コホン…ええと…二人には、スグリともども期待と信頼を寄せてるから、

 厳しく言ってるんだ。

 アズマ隊も、もう小隊ではなく百人隊になったんだから、

 もう少し、自覚を持ってもらいたい…」


そう言って片目を開けると、シュンとする二人の反省の姿を見て、

スグリも満足そうにしている。


「じゃあ、二人とも報告書をしっかり書いて提出してくれ。

 ………その後は、

 隊員を集めて、騒ぐ準備をしよう」


二人は立ち上がり、報告書を書く為、笑顔で急ぎ、自室に戻っていく。


その後ろ姿を見送って、

スグリは、テーブルに置いていたオレンジジュースのグラスを、

少しだけ上げてアズマに向け、微笑む。


アズマは軽くうなずいて、カップをそっとグラスに当てた。

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罪人のシュラ ウソツキ・ジャンマルコ @usotukijanmaruco

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