最終話 異世界最初のカジノプロ、名を……
勝負に負けたホロは、積極的にカウンティングの練習へと精を出すようになった。
あれだけ言って大敗を喫したのだ。
ブラックジャックが如何に勝てるゲームかを痛感したのだろう。
「それにしても、やっぱりホロには天性の才能でもあるのか?」
「えへへ、もっと褒めてもいいのですよっ?」
本気で練習した結果、ホロはたった三日でカウンティングをモノにした。
これには俺も驚かされる。
誰にでも出来るとホロには言ったが、実際のところ、練習してもなかなか身につかずに挫折する人間は多い。
「一ヶ月でクエスト20日分を自力で稼いだことと言い、カウンティングもすぐモノにしたことといい、俺に苦戦を強いらせた『抜け道を発見する』嗅覚といい、ホロはカジノプロになるための才能に愛されているな」
「あんなに大勝しておいて、苦戦したと言うのですか?」
「当初の予定よりはな」
もっとボロ勝ちするつもりだった。
それどころか、どこかでホロがヘマをやらかし、儲けを吹き飛ばして勝負にならない展開だって……。
「ところで一つ、ツクバに聞きたいことがあるのです」
「なんだ?」
「貴方は一体何者なんですか?」
「は? 俺はただのカジノプロ――」
「ツクバから教えてもらった知識、裏付けを取ろうと自分でも調べてみたんです。ところが――」
見つかるわけがない。
俺のカジノ知識はこの世界のものではなく、地球から持ち込んだ知識だ。
その中にはパソコンという計算のオバケがなければ、絶対に紐解けないものだって多くある。
ホロに見つけられないのも当然だ。
「もう一度聞きます。ツクバは何者なんですか? どこから来たんですか?」
ホロが真っ直ぐ俺の目を見据えて聞いてくる。
俺は一つ、頭をかいた。
まったく……。
カジノの相性といい、この質問といい、ホロには驚かされっぱなしだ。
裏切るのはいつだって『確率』ではなく『人間』だ。コイツは俺の予想以上の逸材だった。
だから、正直に話そう。
俺とホロはすでに、この世界でたった一人の理解者足り得るのだから。
「そうだな、俺は――――」
21世紀のカジノプロ、無一文で異世界へ。――完
21世紀のカジノプロ、無一文で異世界へ。 ゆうひずむ♪ @Yuuhi_ISM
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