人間にとってより便利なロボットを作ろうとした結果、
能力ばかりか、良くも悪くも〝人間性〟まで、人間と同じか、それ以上のものができてしまったらどうなるか?
加齢により機能が衰えていく身体を、どこまでも機械で置き換えていくことができるようになったら、
最後の1個の脳細胞が死んだとき、その人は人でなくなるのか?
機械でも同じか、それ以上の能力や人間性を発揮し続けられるとしても、そうなのか?
人類は文明という、高度な知的活動の様式により、繁栄を得ました。
その盛衰を左右するものとして、ダビデの星あるいは籠目(かごめ)の図形(✡)で表わせるような、6つの文明要因があると思います。
個人でいえば認識・決定・行動にあたる、①科学・技術、②制度・政策、③経済・社会活動と、
その実現の条件や働きかけの対象となる、④物的資源、⑤人的資源、⑥自然・社会環境です。
いま人類文明は、3つの持続可能性の問題に直面しています。
科学・技術が経済・社会活動を豊かにするときに必要な、物的資源の持続可能性、
制度・政策が経済・社会活動を健全に保つときに必要な、人的資源の持続可能性、
科学・技術を受けた富の再生産と、制度・政策を受けた富の再分配という、ふたつの内部条件の両立による、
文明活動の本体たる経済・社会活動それ自体の持続可能性です。
新しい技術と、政策が必要です。
新しい技術は、生まれつつあります。
資源枯渇や環境破壊を防げる、再生可能な材料・エネルギー技術。
人的資源の経年・経代劣化を人道的な手段で防ぎ、補える、先進的な保健・医療・教育やロボット・HMIの技術。
経済・社会活動が巨大化・複雑化・急速化しても、個人や社会の意思決定を支援し、上手に利害を調整して、
再分配と再投資を両立させ続けられる、人工知能やIoT、ビッグデータ処理の技術。
それは人工知能を中心として、生物工学や生体工学も含み、人工物と自然物、機械と生物の間の障壁を取り払う技術です。
従来の農業・工業・情報技術といった、ある意味では人間や自然や社会の〝外部〟にあった、物質・エネルギー・情報の利用技術を、
いわば体内化・親近化することで、文明の持続可能性を高める技術です。
体内環境を含む自然環境や社会環境に優しい、『 親和技術 (familiar technology) 』 と呼び得る技術です。
しかし、技術だけでは、この物語のような出来事も起き得ます。
新しい政策も必要です。
最もよく文明課題を解決し、生産性を高めうるように新技術を開発・普及できる、科学・技術政策。
新技術を悪用・誤用せず、活用し得る人材を育成・確保できる、人的資源政策。
新技術により健全な経済投資や利益の社会還元を促せる、経済・社会政策。
全ての人々が立案・実施や点検・改善に関わってゆくべき、人間だけが主体となれる〝仕事〟です。
以上のような技術や政策によって、経済・社会活動をより豊かにし、健全に保つことができれば、
次にはそれを、宇宙施設・植民地などより小規模な閉鎖系における文明活動の維持に応用することで、
地球外への進出も可能となるでしょう。
この物語のような事件が起きないような方法による、人類文明のさらなる発展に期待したいです。