奴隷ゲットだぜ

 奴隷商をサンを連れて出ました。


 とりあえずサン以外に面白い、もとい買いたいと思う奴隷がいなかった。


 時刻は3時過ぎぐらいかな?

 太陽の傾きでおおよその時間が分かるようになってきたのは外にいることが多いから自然と身に付いた。


 ま、外に出てると言っても見ているのは空ではなく、地面なんだけどね。


 小腹が空いたので屋台がある通りに行く。


 サンは無言で付いてくる。

 サンは靴と安っぽい服を着ているが、洋服と靴は早期に買わないといけないな。


 靴とは穴とか空いてるし、洋服はずれて肩が出ている。


 ま、明日で良いか。


 と、屋台で良い匂いがしたので寄ることにした。

 何かの肉串を売ってるお店だ。


 謎肉だ。


「すいません。四本下さい」

「あいよ!……ほい。銅貨40枚だ」

「ども。はい」

「まいどあり」


 さて、どっか座る場所を……。


「ん?」


 服の裾を無言で引っ張るサン。


 俺がサンの方を見ると涎を垂らしていた。


 俺は4つ持った串を左右に移動させる。


 サンも俺が移動させる方向に釣られて動く。


 串を一口食べるとサンは今にも泣きそうな顔をした。


 あまりイジメるのは可愛そうなので、持っていた串焼きを二本渡した。


「わ~!」


 喜んでくれた。


 この串は安いし美味いから良く食べるけど、材料は知らん。

 謎の肉だ。 


「食べて良いの?」

「いいぞ。熱いうちが美味いからさっさと食べちゃえ」


 敬語が外れたが別に気にしない。

 逆に敬語の方が違和感があるな。


 ブラブラ歩きながら次の目的地に行く。


 サンはペロッと2本食べてしまったので俺のを1本上げた。


「ありがとう!」


 そんなにうまいか。

 なら、明日も買ってあげよう。


「ツボミ様は貧乏人?」


 何故いきなりそんなのことを聞くのかな?


「そんな事ないよ。教会に住んでるけどね」

「貧乏……」

「そ、そんな事は……」


 まぁ収入の殆どが物乞いだから仕方ないか。


 これでも物乞いさせたらこの街1番だと思うけど、なんの自慢にもならない。


「この後は?」

「違う奴隷商に行くよ」

「私、売るの?」


 泣きそうになるサン。

 なぜそうなる。


「売らないよ。売らないから泣くなって」


 俺は立ち止まり、サンの涙を拭いた。

 まったく、涙は嬉しい時のために取っておけ。


「ん。なら何で?」

「もう1人か2人ほど奴隷を買いに行くんだ」

「お金は?」


 あれ?

 マジで貧乏人と思われてます?


「一応はあるよ」

「ご飯……」


 お前は俺が貧乏人で美味しいご飯が食べられないから悲しんでいるのか?


 これでも貯金はあるんだぞ。

 金貨2枚ぐらいだけど。


 主の威厳を見せんとダメか?


 ……威厳ってどうやって見せればいいんだろう?


 あ、そういえば何も言ってなかったな。


「サン。お前にはこの街のダンジョンに挑んでもらおうと思うんだけど問題ないか?」

「はい。ご飯のために!」


 そこは顔が凛とするんだな。


 普段は眠そうな顔をしているのに。

 

「体力意外に自分の長所は?」

「食欲」


 それは長所に含まれるのだろうか。


 バナナがおやつに含まれるかどうか微妙なラインと同等に微妙なんだが。

 本人が長所って言ってるから今回は長所と部類しておこう。


「それ以外には?」

「……」


 終わり!?


「え? 無いの?」

「……はい」

「力とかスピードは?」


 体力に自信があるだけでも良いのだけど、ほかに何かないだろうか。


「早いモノを見ることはできます」

「それを捉えるのは?」

「捉える?」


 あ、言葉が難しいか。


「捕まえたりすることだ」

「出来ます」


 動体視力や反射神経が良いのか。


「それは良い長所だ」

「チョロチョロするなと怒られた」

「時と場所をちゃんと考えれば問題はない」


 そう言って落ち込んだサンの頭を撫でた。


 大人しく撫でられるサン。


 懐かしい感じがする。

 実家で買ってた猫を撫でる感覚だ。


 ミーちゃんは元気だろうか。


 サンの頭から手を放して別の奴隷商に向かう。


 手を離した時、サンが少し残念そうな顔をしたような気がしたが、気のせいだろう。 

 その後も黙って付いてくる。


 到着。

 奴隷商。


 先ほどの奴隷商の向かいのお店だ。


「いらっしゃいませ~!」


 そして1言も発することなく部屋に案内される。

 サンが奴隷であることを見抜いているのかお茶とお菓子は一人分だった。


 サンは立ってお菓子とお茶をガン見している。


 定員さんに奴隷を買いたいと要件を言うと担当を連れてくると言われ、部屋には俺とサンのみ。


「サン。お茶とお菓子食べるか?」

「いいの!?」


 おぉ、身を乗り出してくるとは食い意地がスゴイな。


「あぁ。ほら」


 俺が皿をサンの方に差し出すとなぜか俺の膝の上に乗った。


「サン。何で俺の膝の上に乗るんだ?」

「お店のお姉ちゃんにこうすると喜ぶと教わった」


 お姉さん、こんな子供に、教えるな。


 おっと。

 一句読んじゃったじゃないか。


 こんな子供に何を教えているんだか。


「ソファーに座った方がよくないか?」

「ここがいい」

「そ、そうか」


 断言されてしまった。


 別に構わないけど、日本だったら警察に通報されてしまうかもしれないな。


 すぐに食べ終わったサンは俺の胸を枕に寝てしまった。

 子供だから仕方ないか。


 そして担当の人が入ってきた。


「どうも。初めまして。おや、面白い光景ですね」


 入ってきたのは怪しいを体現したような人物だった。

 スーツのような服を着て怪しさがにじみ出るって相当だな。


 顔もシルクハットにサングラスと怪しさ倍増だ。


 向かいのガイルとは別の意味で関わってはいけない人だな。


「寝てしまった。こんな態勢ですまない」

「いえいえ。そのままで結構です。私は奴隷担当のアースです」

「俺はツボミだ」


 アースか。

 俺と同じぐらいの年か。


「本日は奴隷の購入でよろしいですか?」

「あぁ。良いのがいたら買おうかとは思ってはいる」


 逆に言えば買う気はあまりないって事になるかな?


「そうですか。商品の要望はありますか?」

「女の奴隷で安ければ良い。予算は銀貨500枚だ」

「分かりました。少々お待ちください」

「あぁ」


 アースは席を立ち、部屋を出て行った。


 サンは今もお休み中。

 食ったら眠くなるのは別に良いのだが、警戒心が緩いとは思うんだよな。


 俺が襲う可能性とか……こいつは考えてなさそうだな。


 考えていることって言ったら食べ物だろう。


 次に買う予定の奴隷はサンに合わせて女の子だ。

 相方が同じ性別の方が良いだろう。


 周りに何と思われても別にいいか。


 物乞いをしている時点で特にプライドとかどうでもよくなったしね。


「ふす~」


 寝ているサンから寝息が聞こえる。


 普通に可愛い。

 寝ている子供って感じだ。


 何だろうか。

 結婚もしていないのに子供が出来たような感覚だ。


「お肉……」


 あ、うん。

 やっぱりお前はお前か。


「お待たせいたしました」


 アースが奴隷を連れてきた。


 そして説明が始まった。


 年齢やら値段やら処女やらを聞かされた。

 やっぱり俺はロリコン認定されているのか。


 少し悲しい。


 気を取り直し、向かいの奴隷商で聞いたように質問をした。


「この中に体力に自信があって戦うことに積極的なヤツはいるか?」


 数人が手を上げる。


 全員が獣人だった。

 猫の獣人は3人か。


「一番安い奴はどれだ?」

「この子です」


 アースが手を上げた奴隷に中で一人を指した。


 奇しくも猫の獣人だった。


「いくらだ?」

「そうですね。300枚です。買って頂けるのなら250までは下げられます」


 年齢的に安いのか?

 一番安いと言われた子は10歳くらいだ。


 流石に戦いには向かないだろうな。


「そこの子は?」


 サンと同年代っぽい子がいたのでその子の値段を聞いた。


「この子も同じ値段でお売りいたします」

「何で同じ値段なんだ?」

「軽犯罪奴隷でして」


 何かしらの刑罰にかけられているのか。


「何をしたんだ?」

「前の主を危うく殺しそうになったんです」


 超怖いんだけど。

 殺人未遂って軽犯罪なの?


 違うよね?


「問題が主側にあるようなので軽犯罪になっています」

「何が問題だったんだ?」

「深くは言えませんが、ある性癖が問題だったんです」


 うん。

 答え言ってるよねそれ。


 つまり襲われそうになって反撃したって事か。

 不運だな。


「噛み千切られたそうです。どことは言いませんが」

「そうか」


 これも答え言ってるよね。

 確かに死にそうになるよな。


「この子は純粋の獣人なのでこのお値段でお求めになるのならこれ以上にいい商品はないでしょう」

「そうか」


 生粋の獣人と言ってもあまりサンと変わらない感じがするんだがな。

 何が違うのだろうか。


 俺は疑問を浮かべたが、質問をする。

 サンにもした質問だ。


「お前は命をかけるとしたら何を報酬としてほしい」

「私は強くなりたい」


 強くなるか。

 それは報酬じゃなくて目標じゃないか?


「それは報酬とは言わない。目標だ。お前が俺から欲しいモノは何だ」

「何をくれる?」


 おっと。

 質問に質問が返って来たぞ。


 う~ん。

 俺が渡せるモノか。


 何があるだろうか。


「そうだな~。まず基本的に俺は暴力などはしないし無理やり襲うこともしない。強くなりたいと言うのならその補助はするつもりだ。食べ物の俺と同じ物を食べさせるし、着る物は中古になるとは思うが身体に合ったモノを着せてるつもりだ」


 後は何かあったかな?


「あ、それとこの世界を見回るつもりだ」

「おや。商業にご興味がおありですか?」


 アースが割り込んできた。


「失礼。ですが、ツボミ様は商業にご興味がおありなのかと思いまして」

「いや。商売をする気は今のところない」

「ではなぜ、世界を見回ると?」

「一言で言うのなら俺の趣味だ」


 旅行って言って理解できるとは思えないからな。


「では、長く話すとどういった理由で」


 そんなに興味があるのか?

 別に良いけど。


「この世界は広い。おそらく俺の予想や常識が全く通じない場所がたくさんあるはずだ。俺はそれを見て体験したんだ」

「相当危険ですが?」

「だから戦える奴隷が欲しい」

「なるほど、なるほど」


 何がなるほどだ。

 絶対理解してないだろう。


「それでどうする。報酬は決まったか?」


 首を横に振る。


「ま、おいおい分かればそれでいいだろう。当分は強くなるための補助だな」

「分かった。それで良い」

「アースさん。その子を買うぞ」

「かしこまりました。では銀貨250枚でよろしいでしょうか」

「あぁ。全部含めてその値段で良いぞ」

「もちろんでございます。では少々お待ちください」


 嫌な顔せずに俺が買う奴隷以外を連れて行ってしまった。


「お前、名前は?」

「ミル。ご主の名前は?」

「蕾だ」

「ツボミ様ね」

「あぁ」


 敬語は使わないんだな。

 その方が楽でいいな。


 さて、お金の準備でもするか。


 一応、金貨1枚分の銀貨を持ってきたが、足りて良かった。


 金貨1枚は銀貨1000枚だ。

 銀貨1枚が銅貨100枚となっている。


 謎肉串は1本銅貨10枚だ。


 宿屋は1泊で銀貨1枚程度だ。


 普通の大人の奴隷を買うと最低でも金貨1枚だ。

 食費や教育費がかかっているからな。


 その分、子供は安いのはそれが無いからだ。


「その子は?」

「ん? あぁ、サンだ。ミルと同じ奴隷だ」

「懐いてるのね」

「寝難くはなのか疑問に思うんだがな。困ったもんだ」

「言葉使いはこのままで良いの?」


 何で少し気まずそうにするんだ。


「楽な喋り方で良い。気にしない」

「そう」


 おう。

 可愛い笑顔するじゃねーか。


 一瞬見とれちまったじゃねーか。


 俺にはシスターという心に決めた人がいるんだ。

 浮気はしないぞ!


 その後、アースが来てサンと同じように奴隷の刻印の登録をして家に帰ることにした。

 寝ているサンを連れてほかの奴隷商に行くのはめんどくさいしね。


 明日は買い物かな?


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こうなったら異世界旅行だ! イナロ @170

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