第37話 -民間軍事会社2-


 第37話 -民間軍事会社2-


―――――――――――――――――――――――――――――


「二人ともついてきて」

「はいですわ」

「分かったわ、お兄ちゃん」


 ――ガチャ


 僕は、フェリスとゾンビ優子にそう言ってから『密談部屋2・裏口』の扉を開けて中へ入った。


「フェリス、扉を戻して」

「畏まりました」


『密談部屋2・裏口』の扉が消え去った。


『ロッジ』


 僕は、『ロッジ』の扉を『密談部屋2』の壁際に召喚した。


「二人ともこの扉の中に入って」

「はいですわ」

「分かったわ、お兄ちゃん」


 ――ガチャ


 僕が扉を開くとフェリスとゾンビ優子が『ロッジ』の中へ入った。

 僕も後に続く……そして、扉を閉めて『アイテムストレージ』へ戻した。


『マップの指輪』


 指輪に込められた【マップ】の魔術を起動してみると、ドライアードたちやニンフたちは、現場周辺をパトロールしているようだ。


【テレフォン】→『ルート・ドライアード』


 僕は、左手を左耳に当てて【テレフォン】を起動した。


「もしもし、ゾンビは駆逐できた?」

「ハッ! 周辺に反応はありません」

「分かった。じゃあ、帰還させるね」

「御意」

「通信終わり」

「ハッ!」


『ルート・ドライアード帰還』


 僕は、ルート・ドライアードを帰還させた。

【マップ】からドライアードたちの反応が消える。


【テレフォン】→『ルート・ニンフ』


「ルート・ニンフ、ゾンビは駆除できた?」

「終わったわよ」

「じゃあ、帰還させるね」

「いいわよ」

「通信終わり」


『ルート・ニンフ帰還』


【マップ】からニンフたちの反応も消え去った。


『フェリア召喚』『ルート・ドライアード召喚』『ルート・ニンフ召喚』


 僕は、『ロッジ』の中にフェリアとルート・ドライアードとルート・ニンフを召喚した。


「ご主人様」

「主殿」

「旦那さま」


『密談部屋3』


 壁際に『密談部屋3』の扉を召喚する。


「優子以外は、トロール討伐に行ってきてくれる?」

「その様な物言い……ご主人様は、ただ『行ってこい』と御命じ下されば良いのです」

「そうですわ。もっと罵ってくださいな」

「…………」

「……お母さんは黙ってて」

「酷いわ、フェリア。貴女は、ご主人サマに罵られたくないの?」

「そっ、それは……」

「いいから、トロール討伐に行ってきて」

「ハ、ハッ!」

「分かりましたわ」

「御意」

「いいわよ」


 ――ガチャ


 4人が『密談部屋3』の扉へ入っていった。


「ふぅ……」


 僕は、溜め息を吐いて、いつものテーブルのいつもの席に座る。


『エスプレッソコーヒー』『エスプレッソコーヒー』


 僕の席と向かい側の席に『エスプレッソコーヒー』を出した。


「優子、向こうに座って、コーヒーを飲んで」

「分かったわ、お兄ちゃん」


 優子が微笑みながらそう言った。

 これは、演技なので、毎回、全く同じ反応をしているのだ。

 ワンパターンではおかしいと思われるような場面では、多少セリフを変えたりするように指示していたが、ゾンビ優子は、基本的に同じパターンの反応をする。

 例えば、帰宅時の挨拶は、「お帰り、お兄ちゃん」や「お兄ちゃん、お帰りなさい」など複数のパターンを用意していた。


 優子が向かいの席に座って、『エスプレッソコーヒー』を一口飲んだ。

 僕も自分のカップを取って一口啜る。


「優子、今どんな気分?」

「…………?」


 ゾンビ優子が不思議そうな顔をして首をかしげた。


「気分の意味が分からない?」

「ううん、分かるわ。お兄ちゃん」

「じゃあ、どんな気分?」

「…………いつもと変わらないわ」

「じゃあ、優子は幸せ?」

「うん。お兄ちゃんの側に居ると幸せ」


 ゾンビ優子は、召喚魔法の刻印の影響を受けているようだ。


「何か僕にしてほしいことがある?」

「お兄ちゃんに命令してほしい」

「何を?」

「お兄ちゃんが喜ぶこと」


 ――つまり、僕の役に立ちたいということだろう……。


「ありがとう。その言葉だけで嬉しいよ」


 ――ガチャ


「ただいま戻りました」

「ご主人サマ、ただいまですわ」

「主殿、戻りました」

「戻ったわよ」


 フェリアたちが、『密談部屋3』の扉から『ロッジ』の中に入ってきた。


「ありがとう」

「礼など不要です」


 フェリアがいつものようにそう言った。


「フェリア、僕が礼を言うと不快な気分になる?」

「いえ、そのようなことは……ただ、我々は使い魔。ご主人様の奴隷であり道具です。ですから、礼など不要です」


 念のため訊いてみると、僕が礼を言うと不快なわけではないようだが、しっくりとこないようだ。

 フェリアとしては、あるじらしく不遜な態度で接して欲しいということかも知れない。

 しかし、そういうキャラは僕には無理だ。

 ただでさえ、成り行きで彼女たちを奴隷のような存在にしてしまったという加害者意識のようなものがあるわけで、償いのため彼女たちにはできるだけ優しく接したいと思っていた。

 その上、フェリアは、僕の命の恩人でもあるのだ。


「ねぇ、フェリア……君は僕の命の恩人なんだよ。今の僕がこうしていられるのも君のおかげなんだ」

「ご主人様のお役に立てて光栄です」


 フェリアは、僕の斜め後ろで片膝を突いて騎士のようなポーズを取った。

 メイド服姿なので、違和感がある。


 僕は、立ち上がって反対向きに座った。

 跪いたフェリアに背中を見せた状態なのは非礼だと思ったからだ。


「フェリア、僕に何かしてほしいことはある?」

「ご主人様がなさりたいことをしてください……」


 フェリアは、少し顔を赤らめてそう言った。


「じゃあ、『ハーレム』の浴場へ行こう」


 僕は、そう言って席を立った――。


 ◇ ◇ ◇


 僕は、フェリアの母乳を強く吸った。


「はぁああぁんっ……ハァハァハァハァハァ……」


 フェリアの身体がビクビクと痙攣した。


 あれから、僕は、使い魔たちとゾンビ優子を『ハーレム』の大浴場に出したマットの上で抱いた。

 そして、最後にもう一度、フェリアとまぐわいながら彼女の母乳を吸っているのだ。


 フェリアの母乳は、今でも最高だった。

 意志を強く保たないとずっと吸い続けてしまいそうな魔力を感じる。


 僕の上に覆い被さったフェリアの乳房を強く握って左右の乳首を交互に吸いまくる。


「ヒィイイィーーィッ! イックゥウウゥーッ!!」

「フェリア、そんなにしたら出ちゃうよっ!」

「らしてくらはぃーっ!」


 フェリアは、ロレツが回っていない口調でそう言った。


「出るっ!」


 僕は、フェリアの中で果てた。


「ほぉおおおぉーっ! また、イグッゥーーッ!!」


 フェリアが僕の上で激しく痙攣した。


 ――プシャーッ!


 彼女の股間から吹き出した生暖かい体液が僕の腹に降りかかった。


「ハァハァハァハァハァ……こんらの凄すぎまふぅ……」


「フェリア……ハァハァハァ……なんて羨ましい……ハァハァハァ……ご主人サマ……ハァハァハァ……次はわたくしにお願いしますわ……ハァハァハァ……」


 フェリスが呼吸を荒くしながら抱きついてきた。


「待ってフェリス。今日は、あまり時間が取れないから……」

「そんなぁ……」

「じゃあ、みんなでもう一回だけね?」

「畏まりましたわ」


 僕は、フェリスたちともまぐわった――。


 ◇ ◇ ◇


【テレフォン】→『レイコ』


「もしもし、レイコ?」

「……主様!」


『ロッジ』に戻った後、レイコに【テレフォン】の魔術を使って連絡すると、一呼吸置いてからレイコが応答した。

 レイコは嬉しそうだ。声が弾んでいる。


「そろそろ、そっちに行こうと思うんだけど、いいかな?」

「何をおっしゃいます。この館は主様のもの。我々も主様の所有物です。いつでもご自由にお越し下されば良いのです」

「何か変わったことはなかった?」

「そういえば、数日前に教団の者が尋ねて参りました」

「『女神教』の?」

「はい。主様に話があるようでしたが、留守だと言って返しました」

「そう……何の用だろ?」

「もしかすると、娼婦希望者の中に教団の者が居たことが原因かもしれませぬ」

「抗議に来たのかな?」

「それは、わたしにも分かりませぬ……」


『現在時刻』


 異世界の時刻を確認してみると、【08:46】だった。

 こちらの世界とは、9時間程度の時差があるので、向こうは、もう朝の9時前なのだ。 


「じゃあ、話を聞きに行ってみるよ。通信終わり」

「ハッ!」


 僕は、【テレフォン】の魔術をオフにした。


『夢魔の館・裏口』


 僕は、『ロッジ』の壁際に『夢魔の館・裏口』の扉を召喚した。


「優子は、ここで待ってて」

「うん、分かったわ。お兄ちゃん」


 優子にそう言って、僕は『夢魔の館・裏口』の扉を開ける。

 フェリアたちは、『ロッジ』に戻ったときに帰還させてあった。


 ――ガチャ


「主様、お帰りなさいませ」

「「お帰りなさいませ、ご主人様」」


 僕が『夢魔の館』の地下に入るとレイコを中心に白無垢を着た娼婦たちが扉の前に整列していた。

 僕は、仰々しい出迎えに面食らってしまう。


「た、ただいま……。人が増えたね……」


 前に来たときに比べてかなり人が増えているように感じる。

 ざっと見た感じでは、50人くらいの娼婦が並んでいるようだ。


「はい。実は、『春夢亭しゅんむてい』の娼婦を引き受けることになりまして……」

「そうなの?」


 前に交渉したときには買えなかったのだが、売ってもらうことができたのだろうか?


「主様に伝えるのが遅れて申し訳ございませぬ」

「いや、ここの責任者はレイコだから好きに運営してくれていいんだよ。もしかして、『春夢亭しゅんむてい』を買ったの?」

「いえ、ヤマモト家のジロウが亡くなりました……その後、いろいろありまして『春夢亭しゅんむてい』の娼婦をうちが引き受けることになりました」

「いろいろ……?」

「少し長くなりますが、よろしいですか?」

「いや、先に『女神教』の教団に行こう」


 僕は、『女神教』の件を先に片づけることにした。

 レイコから話を聞くことはいつでもできるからだ。


「畏まりました。アンズ!」

「はっ、はい!」


 後ろのほうから若い女の子の声が聞こえた。


「こちらに来い」

「今行きますっ」


 そういえば、アンズという少女は『女神教』が運営する孤児院で育てられたという話をしていた。

 そのため、教団についても詳しいのかもしれない。


「主様、私とアンズが供を致します」

「ユウコさんも一緒に来てもらったらどうかな?」

「良い考えだと思いますが、ユウコ殿は『組合』のほうは大丈夫でしょうか?」

「聞いてみるよ」


 僕は左手で左耳を塞いだ。これは別にしなくてもいいのだが、周囲の使い魔に【テレフォン】中だということをアピールするためだ。


【テレフォン】→『ユウコ』


「ユウコさん」

「おお、主殿あるじどのではないか」

「これから時間取れないかな?」

「ふむ、問題ないじゃろう。何処へ行けば良いのじゃ?」

「これから、レイコたちと『組合』の広場に向かうから、少ししたら外に出ていてもらえますか?」

相分あいわかった」

「通信終わり」


 僕は、【テレフォン】をオフにする。


「じゃあ、行こうか」

「ハッ!」

「わっ、分かりましたっ。ご主人様っ」


 僕は、【フライ】で飛行して部屋の出口へ向かった。

 扉を開けて、廊下へ出る。昇降場から1階へ移動する。床の穴から1階の廊下へ飛び出して、娼婦たちの控室に移動する。

 控室の扉を開けた。


「ご主人様っ」

「あっ、ご主人さま」

「ご主人さまぁ……」

「……ご主人さま」

「「ご主人様っ」」


 娼婦たちが反応した。


「お疲れ様」

「ご主人様、わたくしたちは貴方様の奴隷です。もっと、尊大な態度で接してくださいな」

「フフフ……もっと罵ってもいいのよ……」

「考えておくよ」


 イズミとアヤカが答えた。


「じゃあ、ちょっと出てくるね」

「「はいっ」」


 僕は、『夢魔の館』のエントランスに続く扉を開いた。

 そして、部屋から出る。レイコとアンズが僕に続く。


『夢魔の館』のエントランスホールは、午前中だというのにかなりの人が居た。お客さんだけでも30人は居そうだ。

 娼婦が増えたため、8つの部屋全てがフル稼働している。それなのに待っている客がこんなに居るとは予想外だった。

春夢亭しゅんむてい』の娼婦を引き受けたことも影響しているのかもしれない。

 見たところ、客の殆どが冒険者のようだった。

 午前中から娼館に来るのは、真っ当な仕事をしている者にはなかなか難しいだろう。

 そうでなくても客は冒険者のほうが多いらしいし。


 客引きをしている午後からのローテーションの娼婦たちが僕に視線を送ってくる。

 僕は、彼女たちに軽く会釈をして入り口に向かった。

 石畳の大通りに出た。

 西門が開通されたことで、人通りは以前に比べるとかなり多い。


 僕たちは、『組合』の広場に向かった――。


 ◇ ◇ ◇


『組合』の前にある広場でユウコが待っていた。


「ユウコさん、お待たせしました」

「主殿、待っておったぞぇ。何処に連れて行ってくれるのじゃ?」

「『女神教』の神殿に行くので付き合ってください」

「勿論じゃ、この身は主殿の奴隷。好きに命じるが良い」


 ――公衆の面前で何を言い出すんだよ……。


 ここは、冒険者がたむろしていることが多く、周囲には僕たちに注目している冒険者たちも居た。

 ユウコの言葉を聞いて、ヒソヒソと噂話をしているのが分かる。


「じゃあ、行こうか。アンズ、案内して」

「はいっ! ご主人様!」


 アンズが元気な声で返事をした。

 これが、また周囲に波紋を投げかけたようだ。


『気にしなければいいのだろうけど……』


 顔の見えないフードを被っているので、まだマシだった。


 それから僕たちは、アンズの案内で『女神教』の神殿へ向かった――。


 ◇ ◇ ◇


『女神教』の神殿は、『組合』から見て南西方向に位置していた。

『組合』から少し南に行ったところを右に曲がって3分ほど歩いたところに『女神教』の神殿はあった。


「ここが『女神教』の神殿です」


 ここまで先頭を歩いて案内してくれたアンズがそう言った。


「ありがとう」

「そんな、御礼なんて必要ないです……」


 大理石で作られたような大きな魔法建築物だった。


『誰が作ったのだろう……?』


 大きな入り口には、階段があり、門や扉はないようだ。

 神殿と聞いてイメージするような建物ではなく、美術館などの入り口のように見える。

『組合』から約5分という商業エリアに位置しており、この立地条件はかなりいいと思う。

 建物のサイズも『組合』に匹敵するのではないだろうか。ただ、天井は高いものの平屋のようなので床面積では『組合』のほうがずっと広そうだ。


「そう言えば、孤児院は何処にあるの?」


 アンズに尋ねた。


「この建物の裏にあります」

「そうなんだ」


 僕は、そう言って、なだらかな階段を飛行して登った。

 エントランスの階段なので、そう高いわけではない。奥行はあるが、高さだけなら、1メートルもないだろう。


 中に入ると礼拝堂のような場所だった。

 椅子はないが、奥に女神をかたどったと思われる大きな彫像があった。

『女神教』は偶像崇拝を容認する宗教のようだ。


 床は大理石ではなく、街道や大通りと同じような石畳だった。大理石だと滑って危ないからかもしれない。

 広い礼拝堂のような場所には、お祈りに来たと思しき人たちが散見された。

『女神教』は女性ばかりの宗教団体と聞いているが、信者は老若男女ろうにゃくなんにょ問わないようだ。

 とはいえ、この場に居る信者には、若い人は居なかったが。


 僕たちは、注目を集めているようだ。

 僕が飛行しているからかもしれない。だが、これは必要なことなのだ。

『女神教』の教団では、もしかすると魔力系魔術を忌避している可能性がある。

 魔力系の魔術師ということを強調すると、どのような対応をするのか確認したかったのだ。


 女神像の前には教団の人間とおぼしき白っぽいローブを着た4人の女性が並んでいた。

 僕は、左から二番目の女性の前に移動した。


「何か御用でしょうか?」

「ユーイチと言います。こちらの教団に呼ばれたのですが……」

「えーっと、貴方様をお呼びした者の名前は分かりますか?」


 僕は、レイコのほうを見た。


「『夢魔の館』のレイコだ。主様を呼び出したのは教主という話だぞ」

「ご教主様がですか?」

「使いの者は、そう言っておった」

「畏まりました。こちらへどうぞ」


 案内の女性の後に続いて、僕たちは神殿の中へと移動した――。


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僕は現実世界で使い魔を召喚する 久我島謙治 @kugashima

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