車
空港に迎えに来てくれた父の車は、昔から乗っている愛車だった。
「まだ現役なの!」驚いて見ると、古くはあっても隅々まで綺麗にしてもらっているのがわかった。
「お前は随分久し振りやね。もっとしょっちゅう帰ってきていいとよ」
そう言う父は、相変わらず元気そうではあるが、記憶の中にある姿より白髪と目尻の皺が目立って見えた。
後部座席から少し変わった街を見ていると、いつの間にかうとうとと眠りに落ちていた。静かな振動の中、私は横になって運転席から僅かに覗く父の後頭部を眺めている。父の表情は見えないが、何故か安心する景色。今より髪は黒々としていて、私の視線もかなり低い。
これは、昔の記憶だ。この車は、思い出を載せすぎている。
目を開けて白髪混じりの父を見ると、不意に目頭が熱くなった。
「…都会は辛いとね?」
「ううん、ちょっと疲れただけやけん…」
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