命、頂きます.

坂本ヒツジ

第1話 命、頂きます。

さようなら私の命。今夜、命を断ちます。


いくらさがしても就職先はないし、家賃を払うお金さえ無くなった。

手元にあるのは二万円と少し。

最後だから、この二万円で食べたかった寿司屋さんに行ってみよう。


「いらっしゃい」


「あのー、二万円のおまかせを、お願いします」


「はいどうぞ、最初は甘エビね」


「いただきます。」

「美味しい。こんなに美味しいお寿司、生まれて初めて。涙がでてきっちゃた」


「嬉しいねー、甘エビを食べて涙流してくれるなんて」

「そうだ、お客さん。さっき、いただきますって言ったろ。その言葉の前には、別の言葉があったんだよ。知っていた」


「え、それってなんですか?」


「命、と言う言葉さ。つまり、命を頂きます、だな」


「命を頂きます、か。

美味しいはずですよね」


「あのう。

表のドアに、住み込みの給仕の募集を見たんですが、今でも募集していますか?」


「中々なり手がなくってね。こうゆう商売だろう。しかも、恥ずかしい話だけど、この年になっても奥さんもいないんだよ」


「あの〜。

わたしを雇ってくれますか?」


「え、そりゃー、お客さんさえよければ。

お客さんみたいな美人の人に来てくれたら、すごく嬉しいよ」


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


「よし、今夜は就職祝いで今夜は無料でいいよ。

どんどん食べて、明日からよろしく頼むよ」


「はい、頑張ります。

また涙がでてきちゃった」










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