しゃりの旅

天蛍のえる

しゃりの旅

あるところにしゃりがいました。生まれたばかりのしゃりはいつか寿司になりたいと思っていましたが、しゃりだけの力では寿司になることはできません。

しゃりは寿司になるためにネタを探しに行くことにしました。しゃりとネタ、二つが手を取り合ってしゃりは寿司になれるのです。

山を越え谷を越え、しゃりは一緒に寿司になってくれるネタを探しました。

ある時しゃりはクマに出会いました。

「クマさんクマさん、私のネタになって一緒にすしになりませんか?」

クマは首を横に振りました

「わたしは寿司には向きません、それにわたしは鍋になりたいのです。」

クマは熊鍋志願者でした。無理を言ってはいけません、しゃりはクマと分かれて旅を続けます。

山を越え谷を越え、しゃりは寿司になりたいモノを探しました。

イノシシに会いました、ヘビに会いました、サルノコシカケに会いました。しかし寿司になりたいというモノは居ませんでした。

旅に疲れたしゃりは山を降り、故郷に帰ってきました。

失意のうちに帰ってきたしゃりに声を掛けるモノが居ました、ナスです。

「寿司のネタは見つかった?」

「いくつも山を越えたけど、ついぞ見つからなかったよ。みんなそれぞれ夢がある、なりたい料理がある」

「それでも寿司になりたいの?」

「もちろん、私は寿司になる」

「そうまでいうならこのナスが、君のネタになってあげる」

「いいのかい?君にも夢があるのだろう」

「君の夢をわたしも見た、そういう事にしておこう」

そうして二人手を取って、ナスの寿司へとなりました。

ナスの寿司はたちまち人気、あちらこちらで引っ張りだこ。

面白くないのは他のしゃり、寿司に成るため山に行き、帰ってきたらナスの寿司。

そんなにナスが旨いのか?そんなに黒さが偉いのか?目新しければウケるのか?

妬んだしゃりは黒さで勝負と嫌がるアンコをネタにして、アンコ寿司だと言い張った。

勿論みんなこう言った

「このおはぎすっぱい、腐ってない?」

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しゃりの旅 天蛍のえる @tenkei

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