プロローグーBoy meets Ghostー

 俺は校門から出て角山公園へと向かった。

 しかし、中村が言った百年くらい前も同じことがあったていうのは俺もどっかで聞いたことがある。ここら辺にはそういう伝承か何かがあった気がするのだ。

 俺の記憶の片隅に何かそういうのが……。

 さっぱり思い出せねぇ。

 俺は頭を搔きむしり、角山公園がある坂道へ足を進めた。

 

 中村が俺をこういう奇妙な依頼を頼むのにはもう一つ理由がある。まあ、神社の跡取り息子という理由よりもどちらかというと、こっちが本当の理由だと思う。

 それは俺が所謂見える人間だからだ。幽霊が見えるからこそ奴は俺に頼むのだろう。その上で、そういう神だとか幽霊のことに詳しいからこそ頼むのだ。

 神社の息子だから見えるのかどうかは知らんが、一応家族全員が幽霊や神ってモノを見ることができる。

 しかし、この幽霊が見えるというのは厄介なモノで、普通の人間と幽霊との区別が分かりづらいのだ。ハッキリと見える幽霊の場合触ってみて初めて幽霊だということがわかる。

 あとは、季節感に合ってなってなかったり、時代が古い服装なんかで見分けるしかない。

 しかし、田舎のファッションなんて少し古いのでたまに幽霊かと思ったら普通の人だったなんてこともある。

 まあ、遠目からでもわかる幽霊もいるがそういう奴は大抵ヤバイ奴だ。所謂怨霊って奴だな。そういうのを退治したりする仕事の依頼もたまに家に来るがな。

 まあ、俺はそういうのとは無縁で過ごしていきたいと思っているよ

 そうだろ、普通の人生って奴が一番幸せなんだよ。

 でも、俺にはきっとそういう人生は無縁なんだろう。

 今までも、これからも。

 これから、今まで以上に運命って奴に振り回されるんだ。

 だって目の前におかしなモノがいるんだから。

 暗闇だ。そう今はもう夜だ。それなのにそこだけ明るい。田舎だから街灯なんてあるはずもない。なのに、そこだけ明るいのだ。白い円形にポツンと人が倒れている。

 いや、人じゃないだろう。きっと人じゃない。人じゃなかったら何か? 言わなくてもわかるだろ。幽霊だ。

 そして、その幽霊はあの噂話の幽霊と風貌が似ている。白いワンピースに赤いマフラー、腰まである長い黒髪の少女。その横には刀があった。

 俺は恐る恐る近寄ってみた。近づいてわかったことだが、その少女の右腕が無かったのだ。

 そして、その右腕の切れ目だろうか、そこから白い何かが溢れ出していた。

「おい、大丈夫か」

「……、」

 返事がない。どうやら、しかばねのようだ。

 なんてことを考えている場合じゃない。

 少女は苦しそうな顔をしていた。

 俺はどうすればいい。こいつを助けるべきなのか。それか、そのまま放置するのか。

 そんなことを考えていたが、先に体が動いていた。

 高校生になってからずっと使わずにいた力を使う。たぶん人としての普通の幸せっていうのは遠のいてしまいそうだった力を俺は使っていた。

 溢れ出した白い何かを右手で触れて吸収する。

 だんだんと辺りは暗くなっていく、その少女だけが明るく光っているだけだ。

 そして、白い何かを集めた右手を少女の右肩へと置いた。

 すると、だんだんと少女の右腕が生えてきた。

 右手の中指の先まで完全に戻ると少女の呼吸は落ち着いてきた。

 さて、これからどうしたものか。角山公園に行くべきかと思ったが、少女をこのままにしてはいけないと感じ、俺は彼女をおんぶし、手に刀持って自分の家へと帰ることにしたのだ。

 どうか補導されませんようにと願いながら。


 俺は今、両親とは別々に暮らしている。別に家族仲が悪いってわけではない。かと言って良くもないがな。まあ、気ままに一人暮らしをしている。

 八畳ワンルーム、トイレ風呂別。なかなかいい家だ。

 俺は帰宅してすぐに、自分のベッドに少女をそっと置いた。刀も横に置いておく。

 結構な距離を歩いたが幽霊だからなのか、全くと言っていいほど重みを感じなかった。その分特に苦労したということはない。

 俺は、風呂に入り部屋着へと着替えた。まだ、少女は眠ったままだ。

 幽霊でも寝るんだなと思いながら俺は椅子に座り少女を見ていた。

 そこで一つ疑問に思ったことがある。幽霊って服は着ているが下着はどうなのだろうか。

 あそこが本物かどうかは調べてやろうぜ。的なノリでワンピースの裾を軽く持ち、少しずつ持ち上げていく。

 あと少しでみえそうだ。あと五センチ。あと四センチ。あと三センチ。あと二センチ。あと一……、

「なにしとんじゃ、われぇ」

 なんでか、関西弁の女の怒号が聞こえた。

――ドゴッ

 右頬に痛みを感じながら、座っていた椅子から、

――ズドン

と落ちた。

 なにが起こったのか一瞬わからなかったが、顔をあげるとそこにはすごい剣幕をしている。ワンピースを着た  少女が俺のベッドに立っていた。

 その瞬間一瞬だがワンピースの中を確認することができた。

 白か。

「なに見てんだよ。普通、女の子の下着を見ようとするか。ていうか見ただろう。白で悪いか、この野郎」

 なんだ、起きたのか。

 あれ……、ちょっと待てよ。俺は見たなんて言ってないし、色も言っていない。えっどういうことだ。

「私はあんたの心の声が聞こえんのよ。たぶんあんたが助けてくれた所為だよ。ちょっとだけあんたの気が私に混じってリンクしてしまったんだと思う。それも最悪なことにあんたの気って普通の気に若干瘴気(しょうき)が混じってるじゃないの。マジで最悪だ。純粋だったのに穢されちゃったじゃない」

「待て、その言い方はやめろ。ということは俺は戻し過ぎて自分の瘴気までお前に送っちまったのか。それで、リンクだと。男子高校生が幽霊にしかも少女に心を読まれるだと、こっちの方が最悪だ。頭で考えていること全部筒抜けってことかよ」

 俺は、頭を抱えて膝から崩れ落ちた。

 あんなことやこんなことも考えたらこいつに筒抜けってことかよ。ハッ。

「うん。今のも筒抜けだから」

「ホーリーシット! っていうかなぁ。お前助けてあげたんだぞ。その言い方はねぇんじゃねぇの」

「まあ、そこはありがたいけど。まさか、鬼に助けられるとは思わなかったわ」

「鬼か……」

 鬼……。俺の実家である神社、鬼一神社は元々、鬼を崇めている神社なのだ。なぜなら、初代の神主が鬼であり、神力と言う奴で人々を助けていたそうだ。その末裔(まつえい)であるこの俺も鬼の血という奴なのかな、そういうのが体に流れている。

 だから、この体に少し瘴気というもの、まあ単純に言えば毒や悪い気というのかな。そういうのが入っている。普通の人は綺麗な気……、まあ体に流れる力というか生命に必要な不可視のモノを持っているがストレスや恐怖なんかを感じた時若干、気が瘴気に変わる。まあ大抵一日経つと普通の気に変わるがな。

 だが、俺は普通の人とは違う、たぶんまともな奴に俺の血には鬼の違う混じっているんだと言ったら、こいつ厨二病かよと言われそうだが、鬼の血というのはずっと瘴気のままなのだ。というよりは、人間が生きるのに気が必要なのに対して、鬼は生きるのに瘴気が必要になってくる。

 だからこそ、鬼の血が入っている俺は気と瘴気両方を持っているのだ。

 そして、その影響でこの少女にも助ける時に少々瘴気を入れてしまったようだ。

 鬼は瘴気や気を喰らい生きる。だが、半分人間である俺は、それを戻すこともできる。よくいるだろ、気の力で治療する霊能者のババアが。それと同じことが俺にもできるのだ。

 まあ、普通の人間ならすぐに瘴気が抜けるだろうが、幽霊はよくわからない。

 幽霊ってやつは死んだ人間の気が塊になって存在している。でも怨みを持って死んだやつは気か瘴気の塊になり、所謂怨霊という奴になるのだ。

 そういうのを退治することを生業にしているのが俺の家族だ。まあ現鬼一神社神主のジジイや親父、兄妹なのだが。

 その話はまた今度だ。

 この少女は、どうやら気の塊だが、よく見ると俺の瘴気が混じって白いワンピースの一部が灰色になっていた。

 おそらく、自分を守る為だったのだろう。この少女に溢れた気を戻すにしても少女自身の気が足りないのだ。だから、俺の気を使うことになった。

 しかしそうすれば、俺の体に流れる気と瘴気のバランスが狂い、あまり良くないことになる。その為、瘴気も送ってしまったのだろう。

「すまなかったな。そうしないと、俺の身が危なかったんだ。人間のままでいられなくなる可能性があるからな。それって治るのか」

 俺はワンピースの灰色になっている部分を指差す。

 「ああこれか。まあ大丈夫だよ」

 そう言うと、少女はベッドの上で手を広げ出した。

 すると、少女の体が光出した。

 そして、その灰色だったワンピースの一部が徐々に真っ白に戻っていく。

 どうやら、周りに漂っている気を集めて吸収したようだ。

 じゃあ、なぜ倒れていた時それができなかったのか気になるところではある。

 「それは、簡単なことだよ。それができないくらいに気を消耗していたんだ。だから、あのまま君に助けてもらわなかったら、たぶん死んでた。もう死んでるから、死ぬって言うのはおかしいか。消えるところだった。だから、本当に感謝はしている。まあ、パンツを見る行為はただのクソ野郎だけどな」

 また心を読まれた。あれ……、でも瘴気はもう無くなったはずだ。なのになんでだ。

「いや、瘴気は消えたけど君の気はそのまま残ってるよ。たぶん、私が消えるまでこのリンクは外れない見たいだね。もう私の気と君の気が混じってしまっているから」

「サノバビッチッ。まじかよ。っていうか色々聞きたいことがあるんだがいいか」

「いいけど、その前になんで君の髪ちょっと赤いの? もしかしてそれがカッコいいと思っているの」

 「逆に黒に染めてんだよ。鬼の血のせいか知らないが、なぜか産まれた時から髪が赤いんだよ。俺の先祖は赤髪の鬼だったそうなんだよ。たぶんそれの影響だ」

「もしかして、月の夜に狂う系の人ですか? それとも、薔薇の鞭を持つのですか」

「本当に泣かして叫ばして消してやろうか? それとも、薔薇の鞭で切り刻まれないのか。というかもう本題に入っていいか。質問がいくつかあるんだが」

「おう、助けてくれたしなんでも答えるよ」

「まず一つ目、何故お前はあそこで倒れていたのか。何があったのか。二つ目、角山公園周辺にいるのは何故なのか。三つ目、何故刀を持っているのか。四つ目、ここら辺で五人が神隠しにあったという噂の正体はお前か」

 何故か少女はベッドで仁王立ちをして椅子に座りなおした俺を見下ろした。

「よし、全てに答えてやろう。その前にお前と呼ばれるのは癪に触るから。自己紹介から。私の名前は吉良アキラ(きらあきら)だ。アキラちゃんと呼べ」

 なんだこいつは。吉良アキラね。

「爆発系の能力者みたいだな。アキラちゃんでいいんだな。了解、了解。じゃあ質問に答えてくれよ」

「まあ、苗字のキラはその吉良だよ。」

 意外とこいつは漫画読んだり、ゲームをしているのがタイプの奴だったのか。若干気が合いそうだ。元ネタがわかるというのは会話をしていて楽しい物だからな。まあ、それをいうと中村とも趣味が合うのだがあいつはただ鼻につく奴だ。

「まあ、元ネタを知っているのはいいことだよな。漫画や小説を読む時に、あっこれあれを元ネタにしてるんだな、って思うと何倍も楽しいよね。あと中村って誰」

「誰でもいい話が逸れすぎだ。面倒クセェから心の声にまで反応するな」

「OK! えっと質問に答えるんだったな。その全ての答えはいつも一つだ」

「ハイハイ。それはなんですか」

「それは、私が穢れ神というのを退治する。穢れ神ハンターだからだ」

 アキラはそう言いながら刀を鞘から抜いて、夜叉の構えをしていた。

「で、穢れ神っていうのはなんだよ」

 アキラは夜叉の構えが疲れたのか。刀を鞘に戻し、ベッドの置くと、疲れたのかベッドに座った。

 なんか、面談みたいな状態だな。

「穢れ神っていうのは、穢れた神だよ」

 何当たり前のこと聞いてるのって顔をしながら、ぽかんとしている。

「いや、穢れた神、所謂……、人間の瘴気を喰って生きてたり、災害をもたらす神、邪教的な物の神だろ。それは、わかってるよ。俺一応神社の息子だからな。そういうことじゃなくて、どういう穢れ神なのかを聞いてるんだよ。それに一応神様なんだから殺すことはできないんじゃないか」

 そう問う俺の顔を見て、アキラは首を傾げていた。

「君は神社の息子なのか? どこの神社だ」

「質問を質問で返すなよ。鬼一神社だ」

 アキラは驚いた顔を見せた。まるで、何かを知っているようだった。

「もしかして君が、あの鬼一鬼助なのか」

「なんでその名を知っている」

 俺も驚いた。鬼助という名は俺のもう一つの名前だ。鬼の血が濃いという理由で産まれた時からもう一つの名が付けられた。それが鬼助だ。

 鬼一家では、たまに鬼の血の濃い者が産まれる。その時、一般的に呼ばれる名前と襲名のようなモノで鬼助という二つの名前が付けられるのだ。

 そのことを知っているのは、俺の家族とある一部の人間だけだ。

 だからこそ、俺は驚いたのだ。この少女が俺のことをもう一つの名前、鬼助とよんだことに。

「私の使命は二つある。それは穢れ神を封じることと、鬼一鬼助という男に会うことだ」

 俺は椅子から立ち上がり驚いた。

 ガタンと椅子が倒れる音が聞こえた。

「はぁ? どういう意味だよ。っていうか誰から言われたんだ。俺に会うってどういうことだよッ!」

「まあ、落ち着いて聞いて欲しい。私は死んで、所謂あの世って所で一人の男に会ったんだよ。最初は閻魔大王か何かかと思ったが、どうやら違ったみたいだった。その男も鬼一鬼助と名乗っていたんだ」

「鬼一鬼助ってことは、たぶん俺の先祖ってことか。そいつから、その二つの使命を受けたってことか」

「そういうことだよ。まあもっと詳しく言うと、この地域にいる穢れ神を封じること。それを現世にいる鬼一鬼助に助けてもらえ。そう言う風に言われたんだ。そして、その男から穢れ神を封じることができる刀、この天聖鬼神(てんせいきじん)を渡されたんだ」

 アキラは刀を持って俺の前に出した。まるで、手に取ってみろと言わんばかりにだ。

 俺は恐る恐るその刀を受け取る。それだけで、その刀がどんな物かわかった。

 かなりの気を感じる。所謂、聖剣って物だ。ただの名刀とはワケが違う。そういう力を感じる刀だ。

 俺は刀を少し鞘から抜いてみた。

「なんて刀だよ。こいつは、人を殺す刀じゃない。瘴気を断つ刀だ。怨霊や鬼なら一撃でやれるぞ」

 さっきあいつが刀を抜いた時には感じられなかった力が、自分で抜いて初めてわかった。

「それは、そういう刀だよ。そして、鬼一鬼助が持てば鬼に金棒だ。私が持つよりはるかに力を持つ。だからこそ、君の助けが必要なんだ」

 面倒臭いことに巻き込まれてしまった。自分の先祖を恨む。いや、中村。お前を恨むぞ、俺は。お前があんなことを俺に言わなければ俺はこいつに会わなかったし、こんなことにも巻き込まれなくて済んだんだ。いやでも、俺が断ればいいことかそういう話だよ。なんだ、全然問題ないじゃないか。

 そんなことを考えていると、アキラは俺の手からさっと刀を奪いとり、刀を鞘から抜き、首元に刃を突きつけた。

「断ったら今すぐ殺す。そして、会ってこい先祖に。命が惜しければ、私を助けろ」

 瘴気を切る刀だ。普通の人間は殺せない。だが、半分瘴気を持つ俺であれば、殺すことができる。つまり、俺は断ったら死ぬということだ。

 この二者択一には、答えが一つしかない。

「殺さないでくれ助けるから。まじでやらせていただきますから。どうか命だけはご勘弁を」

 俺はいつの間にか土下座をしていた。人生初の土下座だ。そりゃそうだ。自分の命が掛かっているのだ土下座だって、その穢れ神を封じる手助けだってなんだってする。だって、今死ぬよりは全然マシなのだから。

「よし。でさっきの質問だが。私は今、水害の穢れ神を封じるように言われているんだ。その穢れ神を封じるのが仕事だな」

 アキラは、刀を鞘に戻し、自分の腰元に置いた。

 俺もそれを確認して、倒れた椅子を元に戻して座り直す。

「了解だ。それで、その穢れ神にやられてアキラは倒れていたのか」

「いや、違う。その使い魔にやられたんだ。複数いたし、私の油断ともう一つの原因がある。それは、君が言った神隠しってヤツだ」

「ああ、お前が神隠しをしているのかってヤツね」

「そう、その使い魔が学生服を着た少女を攫っていたんだ。その少女は私を追って来て、巻こうとしていたのだが、その時に運悪くその子が穢れ神の使い魔に攫われたんだ。なんとか、救おうとしたのだが、無理だった。その子はもう穢れ神の元に生贄として差し出されているだろうね」

 たぶん、中村が言っていたこいつの目撃者の一人だろう。幽霊が見えるってことは、普通の人よりも気の力が多いってことだ。生贄には丁度いいってことなんだろう。

 今まで攫われた奴もそういう気の力が多い人物だったってところだろうな。

 しかし、疑問に残るのは何故生贄が必要なのか。

「それは、穢れ神の力がまだ弱いからだよ。生贄は力を取り戻す為の養分なんだ」

 また、心を読まれた。読むのは無視しろと言うたのに。

「まあいい。でそれで、力を取り戻したらどうなる」

「水害の神だ。たぶん、この町は水で溢れほとんどの人が死ぬだろうね。それを止めるのが私の使命だよ。生贄があとどれくらい必要なのかわからない。だからこそ、早い段階で穢れ神を封じないといけないんだ」

「なるほどな」

 面倒クセェ話になって来やがった。つまり、どっちにしても、その穢れ神が力を取り戻すくらいの生贄が集まれば、俺は死ぬってことだ。

 やっぱりやるしかねぇ、ってことだな。

「ああ、もう面倒クセェ。やるよ。その穢れ神ってのをぶっ飛ばしてどうにかして封じればいいんだろ。あとな、俺の名前は義貫だ。義理の義に貫くで、義貫だ。俺を呼ぶ時は義貫と呼べ」

「ああわかったよ。義貫だな。じゃあ義貫、今からその穢れ神を封じに行こう」

 アキラは意気揚々にベッドから立ち上がり部屋の扉へと手を掛ける。

 俺はそんなアキラを尻目に、壁に掛けてある、時計を見た。

 時計の針は十二時丁度を指していた。

「今日は寝る。明日から頑張るわ」

「明日から頑張るんじゃない。今日……」

 俺は部屋の電気を消して、ベッドへとダイブした。

 明日から最悪の日になるなと思いながら眠りにつくのであった。

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義隆鬼譚 山神賢太郎 @yamagami-kentaro

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