5皿1回

東雲メメ

【皿を入れる】

「当たっちまったよ……」


 皿を5枚入れるたびに回されるガチャ。家族ファミリー客向けのサービスではあるが、やろう二人で来た俺たちにはぶっちゃけ不要だ。荷物が増えるだけである。


「一回500円ってなんだよ、ソシャゲかよぉ。しかもかっぱ巻きのイヤホンジャックとか微妙過ぎるよ、どうせ当たるなら俺SSR引きたかったよぉ」

「ふむ、これは神からの啓示とみた」

「あ”?」

「考えてもみたまえ。平日の昼間から男二人が回転寿司など、世間的に見れば笑い草だろう。さっさと家族を作れ、ということだ」

「んだよー独身おれたちへの当てつけかよぉ」

「ああ。へのな……」


 んんん……? 相方の様子が何やらおかしい。形のいい顎に手を当てながら、少しだけ頬を赤らめている。


「それで、何人くらい欲しい? お前の為なら腹を痛めてやることもやぶさかではないぞ」

「俺とお前で家族作るのかよ!? 何でそうなった!」

「実は既に陣痛が少し起こり始めている」

「寿司食い過ぎただけだろ!? そもそも男同士で子供ができるわけねぇだろ!」

「フフッ、馬鹿め。このお尻の穴は何の為にあると思っているのだ」

排泄ウンコするためだよ!?」


 『なん……だと……』とでも言いたげな顔で驚く相方。

 こんな奴はほっといて、ともかくこの景品かっぱ巻きをどうするか考えよう。置いて帰るのも流石にアレだし。

 しかし、持ち帰る以外の選択肢は思い浮かびそうになかった。適当に子供客を見つけて景品をあげるというのも考えたが、平日昼間なのでそもそも子連れがいない。


「そもそもこのガチャ強制的にやる羽目になるんだよなぁ。回転寿司ってか回転させられ寿司だよぉ」

「やはり俺達で子作りするしかないようだな」

「まだその話!? どっちかが持ち帰ればいい話だろ!」

「遅かれ早かれ、独身の俺達はこの啓示を……否、を受ける運命だったのだ!」

「おま……なにズボン脱いで」

「さぁ、来い! 皿を入れるようにッ!!」

「おあいそぉぉッ!!」


 結局、俺が持ち帰ることとなった。

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5皿1回 東雲メメ @sinonome716

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