実録! 生鮮寿司が届くまで!!
雪車町地蔵@カクヨムコン9特別賞受賞
実録! 生鮮寿司が届くまで!!
「トビコォォォ!? 死ぬなああああ!!!」
ハンバーグは叫んだ。
一発の銃声が響き、彼のかたわらで周囲を警戒していたはずのトビコが傾斜していく。
ぐしゃりと倒れふしたトビコの眉間からは、赤色の細胞液がこぼれだしていた。
魚卵は加工されていた。
死んでいた。
「これが、これが人間のやることかよっ!!!」
悲痛な声でハンバーグは絶叫する。
彼の周囲には、すでにいくつもの
マグロ、イカ、サバ、卵……
あるものはサク状におろされ、あるものは
「ちくしょう、ちくしょう……っ、みんな、みんないい奴だったのに! なんでだ……なんでこうなるんだよおおおお!!」
肉汁を両の眼から流しながら、ハンバーグは問いかける。
彼の視線の先で、それはにやにやと笑っていた。
白衣に身を包み、きっちりと髪を整え、白い帽子を被ったその存在は、右手に
そして、左手には、おぞましいほどの熱量を有する火炎放射器が……!
「やめろ……それで俺になにをする気だ……? やめろ、やめろおおおおおおおおおおおお!!!」
ハンバーグの耳をつんざくような悲鳴が上がる。
その存在は、その音色を心地よさそうに聴いていた……
§§
「へい! ハンバーグ軍艦お待ち!」
板前は注文通りの寿司を、客の前に出した。
「お、待ってました!」
客は舌なめずりせんばかりに歓声をあげる。なにせ今まで、彼の目の前でそのハンバーグは、バーナーであぶられていたのだからたまらない。
これまでに大トロ、ゲソの炙り、シメサバ、玉、トビコと平らげていた客は、うきうきとしながらハンバーグ軍艦へと箸をのばした。
§§
これは、よくある回転ずしのワンシーン。
お客様に、生鮮寿司が届くまで――
実録! 生鮮寿司が届くまで!! 雪車町地蔵@カクヨムコン9特別賞受賞 @aoi-ringo
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