第2話

なんというか、僕は作品の余剰を切り貼りして作られたおまけみたいな存在だ。おまけ。自分に言い聞かせてきた言葉。父のおまけ、母のおまけ、叔父のおまけ、従兄弟のおまけ…

誰かの影がずっと僕に纏わりついていた。

…いや、僕のほうが誰かの影といった方が正しいのかな。




…ああ、またこんな事を考えてる。

夢の中でまで僕は劣等感を抱えてる。

虚しい、本当に虚しい人間。

悲しい、とても悲しい人間。




ジリジリリ

ジリジリジリジリ

カチッ

「ふわぁ〜、よく寝た」

古くなった目覚ましは最近調子が悪い、このままでは鳴らなくなる日も近いだろう。その前に買っとかねば。

「おはよう、リム」

「おはよう、母さん」

母さんは父さんと結婚する前までは国境の警備隊長をしていた。今でもその当時の部下だった人々が訪ねてきたりする。なんでも当時の母さんのあだ名は「スパルタ」だったらしい…僕の前では静かな母が…

「おいおい辛気臭い挨拶だな、おはようリム」

「おはよう父さん!」

「ははは、ちゃんと声でるじゃないか!」

父さんのこんな笑い声が好きだ。国を救った英雄、戦場の嵐、無双人。これらの大層な名前は父さんにつけられた。2年前、帝国を相手に戦争を仕掛けた僕たちアグリア王国には千の兵を前に無傷で生還した人間がいた。それが父さんだ。

「今日は王城に召還されたんだろ?国王の前で恥かくなよー、あいつ怖いからな…」

「またあんた国王様のことをあいつとか言っちゃって!リムもあいつだなんて呼び始めたらどうするつもり!」

「…すみません」

「だいたいあんたはね…」

忘れてた。僕の前では静かとは言ったけど父さんの前では「スパルタ」だった。

僕は巻き込まれるのが嫌なので足早に家を出た。


すれ違う人々に挨拶を交わしながら僕はふと考えた。

何故国王が僕を呼んだのか。

頭はそれで一杯、胸は不安で一杯だった。




「リム・ショット、面を上げよ」

大臣に言われてその通りにする。喉がカラカラだ。この国の王は現世神として君臨しており、神の血をひいているという。

「はっ!」

「よろしい。このお方こそがアグリア王国国王ヴァンリ3世陛下である。ご拝謁に感謝したまえ」

蓄えた髭は威厳があり、いかつい眉にはいかにも国王といった雰囲気があった。

「では、国王陛下。例の件を」

「うむ。リム・ショット少年、突然で済まないが君にはこの国の犠牲となってもらう」

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