漫画家志望の末路

@maguro2000

第1話

俺は漫画家志望の皐月綾部(さつきあやべ)。

もう30年ばかし漫画家を志したもんだ。二十歳の頃から目指し始めとるからもう50歳になる。まった世の中ってえのはわからねえもんだよな。


そいつと再会したのはある喫茶店だったよ。

「お、お前、皐月か!」

俺が480円のコーヒーを泣けなしの金で飲んで漫画の案をノートにひねり出していたら、そいうは声をかけてきた。最初は誰かわかんなかったぜ。でも左目の下のホクロを見て誰だか分かることができた。

「おお、榊原さんじゃないっすか!」

そいつの名前は榊原斗真(さかきばらとうま)。

俺が20代の時一緒に漫画家を夢みて共に励まし合って来た奴だ。

「皐月おまえなにしてんだよ!えぇ?」

「さ、榊原さんこそなにしてたんすっか。スーツなんか着ちゃって」

「え、流石にもう仕事してるっしょ。お前はなれたのか?漫画家?」

「え・・・・・」

なれてませんとは言えなかった。

「なれましたよ・・・」

「どこ雑誌よ」

「月刊チョリソーっす・・・」

嘘ぶくにも、週刊で言うのはおこがましい。俺はこの世に存在しない漫画雑誌を上げて実在するかのように嘘をいってえやった。

「えーマジかよ!やるじゃん!やっぱ目指し続ければかなうってことだったんだな〜」

「そ、そうですよ・・・。榊原さんは描き続ければよかったのに・・・・。」

「バカ言えよ。そんな雑誌ある訳ねぇだろ!そんなもん。50にもなってやってたら人生終わりだろうが。30以上にもなって漫画家目指して慣れないときはもう何かしら働いてそれを生かした仕事についた方がいいのさ」

全部バレていた。



その日の赤っ恥を最後に、その日というか長い日々の赤っ恥を最後に俺は漫画を描くのをやめた。確かにそうだ。俺はもう漫画家としての技量はすでに十分もっているそれでもなれなかったのは、俺が才能がなかったにすぎなかったのだ。30年、30年も目指しておいてなんの成果をあげられねえとはな。だがよ、夢というのはただ目指せば叶うということでは決してないと気付いたよ。なにより気づくってことが大事なんだ。いやいや漫画家を諦めた訳じゃないぜ。気付いたことを生かすために描くのをやめただけだ。俺なりのやりかたがきづくことでわかったんだからな。という訳で皐月綾部これからも!がんばりやす!

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