テナルディエの狩りは失敗に終わる

 夜中トイレに起きてきた家内に事情を話せばこう言いやがる。

「なんでえ1500ぽっきりですって、あの慈善家老人はその10倍でも払ったろうに!」

 なるほどそりゃあ道理だ、コゼットからはまだまだ絞らにゃなんねえ。まだ間に合うだろう。俺は猟銃を持って追いかけた。コゼットを連れては早く歩けねえだろう。果たして奴は森の手前にいた。

「おい旦那、やっぱりあちきは1500こっきりじゃあ、小娘は渡せねえよ。母親から預かってるからな、母親がいいといった証を見せてくれないと」

 すると奴はこう言いやがった。

「私は確かにコゼットの母親からの許可証を持っていますが、この夜闇の中であなたがそれを読めるほど近づくことを良しとしません。猟銃を持っているならなおさらです。さあ立ち去りなさい」

 俺は猟銃を向けた。こいつは飾りじゃあない。と、猟銃が吹き飛ばされた。奴さんをよく見てみると、向こうもマスケット銃を持っている。いつとり出しやがった?

「私はマスケットの名人です。この暗闇の中で銃を吹き飛ばすのが並大抵のことではないこと、銃を扱うならあなたにもわかるでしょう。次は頭です」

 なさけねえ話だが逃げ帰った。奴は本当にやるというすごみがあったのさ。結局は命だ。なに、次はアゼルマとエポニーヌを働かすさ。

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偽典レ・ミゼラブル 只野夢窮 @tadano_mukyu

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