このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(737文字)
ネタバレを出来るだけ避けつつ言うと、白眉は終盤の主人公のある選択。意外な結論だけど、そこまでの逡巡もよく描かれており、少し大袈裟かもですが、筆者の新しい境地では?と思いました。あえて難点をいうなら、パラレルワールドでのなんでもあり感を少し押さえるルール化、起こる出来事へのロジック化の不足でしょうか。また、もう少し現実パートを増やし、異界要素を抑え、日本版ダヴィンチコード的な展開もありかと思いました。いろいろと可能性のある素材、ぐんぐん膨らませて下さい。
著者の知識と、神話を今と結びつける卓越した文章技術がいかんなく発揮された長編。シナリオも予想外のところから解決するし、脱出できるとわかっていながらも、困難のレベルが高いのでハラハラする。読みながら解決がわかってくるので楽しい。それに結婚式の場面はグロテスクで恐ろしいながら、問題を考え続ける、で保留してるのも良い。やはり山場の解決シナリオは見物だし、重い展開になりすぎないよう、恋物語もちゃんとしているし、最後の大団円まで読ませ続ける力強い作品でした。