オマージュ

ペンギン

オマージュ

私の名前など今更どうでもよい。時がたてば誰が言ったかなんてことはさして重要ではない。私は次の物語をたしかに聞いたのだ。私に似た、死んで生きる男が語ったのは次のとおりだ。

「「多くのものは信じないが、今から私が話すことは本当に本当の物語なのだ。私はたしかに聞いたのだ。私はいつものように夢を見ていた。ベッドから起きあがると、そこには♂がいた。ここでは私は♂を♂と呼ぶことしかできない。そしてなるべくそれを厳守したいのだ。♂は♂から逃げてきたという。私はベッドから出て♂のために一杯のお茶をいれた。

「♂ではすべてを♂と呼びます。これは自ずと決まったことなのです。そこではすべてのものが自らの運命を知ることができます。」と♂は言った。私は冷静だった。

「♂の未来も?」と私は訊ねた。

「はい」と♂は答えた。

私はじっくりと♂の話に耳を傾けた。

「いつかは確かではありません。ただそのあとはみなが♂になってしまったのです。♂にならなかったのは自ら命を絶った者たちだけでした。今思えば彼らは利口でした。」

「私たちの星では」と私は言った。「フランスという国にアルベール・カミュという文学者がいました。その方たちは彼が否定したことを実行したということですか?」

♂は少しの間をおいてから続けた。

「わかりません、しかし運良く私は気づくことができました。」

「それでここにきたのですね。」と私はうなずいた。

いま、彼の名前はオマージュという。」」


J・L・Bに捧ぐ

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オマージュ ペンギン @kenmori2

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