ありえないなんてありえない。では、それもまた、ありえないのか?

かの哲学者は言いました、人は考える葦である。
かの哲学者は疑いました、我考える、ゆえに我あり。
これらについて、厳密性を求める人たちは、我考える、その考える我が考えるゆえに我がある、と、いたちごっこのような思考実験を続けました。
この世に確定的なものは何もなく、不確定なものが渦巻き、曖昧な認識の下で成立している……それがポピュラーな考えになったのです。

さて、ではひるがえって小説とは?
極論すればありえない物事を描くものだ。例え純文学であっても、それは現実には成立しえない。
そんな小説の中で、この物語は確定性と不確定性を問う。
それは揺らぎのなかでたえず変化するものでありながら、私たち読者に一つの同じものを与えるだろう。

即ち、面白いという感慨である。

是非私は、その感覚を皆さんと共有したいものである。

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