藤まる『明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。』(電撃文庫)を読んで

    

     『会えないだろうが関係ない! 交換日記を通じて想いが通う、 

            不器用な優しさに包まれた二人の恋模様に感動!』



 見てくれる人がほとんどいません――閑散としてもなお、筆を休めない勇猛なる戦士、一条二豆です! というわけで誰も見てくれません!  悲しい、空しい、恥ずかしいィ! でも見てくれている人はありがとうございます! 万感の思いです!


 いや、発狂するくらい悲しいですよ、まったく。もう凍結させようかなこのページ……。

 割と本気な僕の悩みはともかく、今回紹介する作品はこちら、藤まる先生の『明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。』です! 第19回電撃文庫大賞金賞を獲得した、実力のある作品ですね。



◆カバー折り返しより抜粋◆


『生まれつきの恐い顔のせいで、学校で浮きまくっている坂本秋月。彼はある夜、一人の少女の事故現場に遭遇し、謎の人物から究極の選択を迫られる……。

 「お前の寿命の半分で、彼女を救うか?」秋月は寿命と引き換えに少女“夢前光”を救った、はずだったのだが……なぜか秋月の体は1日おきに光の人格に乗っ取られるというおかしな展開に……――!

 始まってしまった二心同体の交換日記ライフ。イタズラ好きな光の人格は、トンデモな出来事や仲間を次々に引き寄せ、秋月の低空飛行人生を一変させていく!

 交換日記の中でしか出会うことのできない「ぼっちな俺」と「残念な彼女」による、人格乗っ取られ型青春ストーリー!』


 ジャンル的にはボーイミーツガールですね。ラブコメといっても遜色ないとは思いますが。確かに、「ザ・いちゃらぶ」って感じではないですね。とりあえず、今回のレビューでは便宜上ラブコメって言わせてもらいます。


 それでは、いつものように。



◆オススメポイント1 個性豊かで親しみやすいキャラクターたち◆


 この作品、巻数が4冊とあまり多くないので登場人物の総数が11人と、この中で頻繁に出てこないキャラクターのことも考えるとそこまで多くありません。なので、一人ひとりにゆっくりと向き合える余裕があります。それぞれの魅力をじっくりと感じ取ることができて、とても嬉しい構成です。


 キャラクター性も、王道ですがバランスが見事に取れていて、「このキャラクターいいな」と思わせてくれるような魅力に溢れています。


 中でも、主人公である「坂本秋月」とヒロインである「夢前光」は、特にバランスがとれていてお似合いだと、また、それぞれかわいい、あるいは格好いいと言いたくなります。



◆オススメポイント2 前代未聞!? 主人公とヒロインが一度も会わないラブコメ◆


 先述したように、この作品で主人公とヒロインは二心同体の状態になっています。つまり、体は秋月のままで、一日おきにその魂が主人公とヒロインが入れ替わるのです。なので当然、彼と彼女が向かい合って話すことはできません。こんな画期的な設定は、他にはあまりないと思います。


 そして、膝をつき合わせて話すことができないという難点を補うためにはじめられた交換日記。これが、二人の関係の特殊さをより際立たせます。紙面上でしか言葉を交わせない二人ですが、それでも距離が徐々に近づいていく様子がたまりません!


 たとえ二人で並んで話せなかったとしても、想いを通わせることができるのだと、強く訴えかけられているようでした。



◆オススメポイント3 「死」とはなにを意味するのか深く考えさせてくれる◆


 このサブタイトルを見ると大仰に聞こえますが、どっしりと重いテーマを持っているわけではなく、全体を読んだ僕の感想としてこのようなことが感じられたと言うわけです。


 この作品で、二人は会えないにしても交換日記で言葉を交わしています。ですが、二人は絶対に会うことができない。当然です、摩訶不思議な力で現世に留まっているだけで、ヒロインはもう死んでしまっているのですから……。


 死しているがゆえに、会うことは許されない。この儚さに僕は強く「死」の意味を感じました。身近な人の死にまだ縁がない僕ですが、もしも大切な人が亡くなってしまったら、僕の周りにどんな変化が訪れるのか。どんな風にその死を思うのか考えさせられました。


 作中では、ヒロインの死とその死に心を痛めるキャラクターたちと向き合う主人公の姿が描かれています。


 彼がなにを思い、その死にどう向き合うのか。その結末を見届けるのが、この作品の楽しみ方の一つだと思います。



◆最後に◆


 最後に少し重そうな内容を話してしまいましたが、全体的にポップなタッチで描かれているので、とても読みやすいと思います。別に死がどうだとか考えなくても、楽しく読めるライトノベルです。


 本編は3冊で完結していて、アフターストーリーつきの短編集としてもう1冊出ています。長編のシリーズものに比べたら、すぐに読み切ることができると思うので、購読してみるのもアリなのではないでしょうか。


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勝手にラノベレビュー~個人的に面白いライトノベルをピックアップしてみました~ 一条二豆 @itizyo-nimame

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