犬村小六『やがて恋するヴィヴィ・レイン』(ガガガ文庫)を読んで
『厳しい現実の中で錯綜する恋心と、
深まっていく「ヴィヴィ・レイン」の謎に期待大!』
「急がば回れ」をモットーに、いまを生きるライトノベルの忠実なる
というわけで、今回は犬村小六先生の『やがて恋するヴィヴィ・レイン』について語らせてもらいたいと思います!
『とある飛行士』シリーズでお馴染みの犬村小六先生の新シリーズですが、その第1巻だけの評価で「このラノ」にランクインを果たしたくらいですから、その期待値のほどがうかがえます。話の広げ方がとてもうまく、思わず早く続きが読みたいとつい思わされる作品でした。
◆背表紙より抜粋◆
『「ヴィヴィ・レインを見つけて」。義妹の願いを胸に、スラム街の少年は旅に出る。限られた命を生きる人造の少女と意思を持つ機械兵。滅び行く王国の姫、性別不詳の天才操縦士、皇帝に捨てられた侍女の子ども……。旅の途中、それぞれの傷を抱えた仲間たちと出会い、やがて少年は「災厄の魔王」と称され、楽園に支配された世界へ反逆の旗を翻す。ヴィヴィ・レインを捜す、ただそれだけだった小さな旅はいつしか時代のうねりとなり、世界を変革する戦いへ――。
傷だらけの少年少女が織りなす恋と会戦の物語、開幕。』
ジャンルとしては戦記もの、そしてラブコメディになると思います。こういったジャンルが二つある作品はどちらかが薄れてしまいがちだと思うのですが、この作品はその両方ともが見事にマッチングしていました。ここまで自然に交じり合うものなのかと脱帽しましたね!
長話もなんですから、くわしくは次に話しましょう。
◆オススメポイント1 膨らむ期待、読者に想像の余地を与えてくれる作品◆
あらすじにもあるように、この作品は一旦のゴールが最初から提示されています。つまり、主人公が反逆者となり、世界に革命を起こすということ。また、これ以外にも主人公が後世でどうなるのかが、後に語られた伝承といった形で登場します。作中ではこのことが要所で語られますが、それまでの過程は一切描かれていません。なぜなら、その過程こそが、この物語だからです。
そのため、物語を読んでいくうちに、最終的な結果の概略を知っている僕たちは、「ここから一体どうなるんだろう?」と想像を膨らませます。それがなによりも楽しく、また早く続きを読みたいと思わせてくれるようになっていると思いました。
それと、期待が膨らむのと同時に、キャラクターたちを翻弄する運命の残酷さにも感じるところがありました。過酷ながらもまだ幸せそうな生活を送っていたキャラクターたちが最終的にどうなるのかを知り、物語が進んでいく中で幸せを奪われていくさまを見ていると、その数奇な運命を恨まざるを得ません。キャラクターたちがこれからどんな運命をたどっていくのか、はらはらとします。
そういうわけで、いろいろな意味で期待を膨らませてくれる展開だと思いました。
◆オススメポイント2 運命に振り回され、錯綜する恋心◆
この作品の胆の一つがメインキャラクターたちのラブコメディです。しかし、この作品で出てくる恋愛模様は他の作品とは一味違っています。その恋愛のそれぞれになんらかの問題があるのです。
この作品に出てくる主なヒロインは、おおまかなキャラ設定をあらすじから抜粋して説明させてもらいますと、「限られた命を生きる人造の少女」アステル、「滅び行く王国の姫」フォニア、「性別不詳の天才操縦士」ミズキの3人がいます。この三人のヒロインたちと主人公であるルカがラブコメディを展開していくと予想されます。(ミズキに関してはまだわからないので、あくまで予想と言うことで)
アステルには人造人間としての制約で七年しか寿命がないため、彼女はルカと過ごせる限られた時間を楽しもうとします。フォニアは王族としての威厳を保たねばならないため、身分の低いルカに素直な気持ちを告白することができません。そして、反王政勢力の主要人物になっていくルカへの複雑な想いと、その思いを伝えたくても伝えられないもどかしさに身を焦がします。ミズキは操縦者がほとんど男性しかいない機械兵を操縦するため、性別を偽っているのですが、今後恋心が生まれたときにその秘め事がネックになるのではないかと予想されます。
様々な問題を抱えて、どんな方向へ向かうのか全く分からないこの恋愛模様に期待を抱かずにはいられません!
◆オススメポイント3 怜悧な主人公の奇策に胸を躍らされる◆
主人公のルカは読書を趣味としていて、知識が豊富な上に頭のよく巡るキャラクターです。そのため、ルカは作中のキャラクターたちを、僕たち読者をまでもあっと驚かせるような機転を見せてくれます。
窮地に陥ったとき、ルカが見せてくれる諦めない根性とその奇策には胸を躍らされずにはいられません。ルカたちと一緒に戦っているような高揚感に包まれ、自分が物語の一員になったかのような気分になること間違いなしでしょう!
◆最後に◆
巻数はこれを執筆している時点でまだそこまで出ていませんが、それでも話の厚みが感じられる、ボリューミーな作品でした。キャラクターたち一人ひとりにも魅力があり、好感が持てます。
早く続きが読みたい! これを書いている間も、そう思うばかりです!
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