西尾維新『物語』シリーズ(講談社BOX)を読んで

    『個性豊かなキャラクターたちが送る、 

       青春を生きる世の少年少女にぜひ読んでほしい一作』



 買っても買っても欲しいライトノベルがなくなりません。どうも、一条二豆です。


 さて、今回は出版業界の伝説、あるいは怪物と言っても過言ではない大作家、西尾維新先生の大ヒット作の一つである『物語』シリーズをご紹介したいと思います。


 今年「このラノ」で新設された文芸書部門で堂々の2位を飾り、三部構成で上映された劇場版「傷物語」は大ヒット御礼だそうです。



―背表紙から抜粋―

『阿良々木暦を目がけて空から降ってきた女の子・戦場ヶ原ひたぎには、およそ体重と呼べるものが、全くと言っていいほど、なかった――!?

 台湾から現れた新人イラストレーター、“光の魔術師”ことVOFANと新たにコンビを組み、あの西尾維新が満を持して放つ、

 これぞ現代の、怪異! 怪異! 怪異!

 青春に、おかしなことはつきものだ!』



 この作品は、ひょんなことから不死になった主人公、阿良々木暦が様々な悩みを持つ少

女たちとそれにまつわる妖怪変化、魑魅魍魎といった――怪異についての事件を解決して

いくというボーイミーツガール作品(?)です。


 このレビューを書く少し前に「結物語」を読み終えたのですが、あとがきを見て戦慄しましたね。なんでもまた新しいシーズンが幕を開けるとか。アフターストーリー的な話を読んで、ついに終わりか……と感傷に浸っていた僕が馬鹿みたいです。


 まあ、続きが出ると知って内心飛び上がったのですが。



 ではここらで本題に。



◆オススメポイント1 「趣味100パーセント」に偽りなし、遊び心満載の文章◆


 この『物語』シリーズは西尾維新先生いわく、趣味100パーセントで書かれた作品だそうです。読んでみればわかるのですが、先生が書かれている他の作品と比べて、この作品はのびのびと自由に書かれています。心の底から楽しみ、また気の向くままに書いていると言うのが、文面からひしひしと伝わってきます。


 また、西尾維新先生はまさしく「日本語の化け物」で、『りぽぐら!』というリポグラム(ある特定の文字を使わないで文章を作ること)で書かれた作品を世に出しています。それだけ日本語に長けておられるのです。


 そのため、この『物語』シリーズには西尾維新先生ならではの言葉遊びが端々に使われています。それがまた作品が描き出す独特の世界観と合致していて、とてもいい雰囲気を出してくれています。



◆オススメポイント2 個性豊かで、時間とともに変化を見せるキャラクターたち◆


 この作品に出てくるキャラクターの中で印象があまり残っていないものはいません。それだけひとりひとりに個性が、魅力が、人生があるということです。


 誰をとっても魅力的でインパクトが強く、それぞれがそれぞれの人生観、あるいは思考を持っているというのはこの作品の見どころの一つなのではないでしょうか。


 なによりひとりひとりが確固たる個性を持っているのがすごいところだと思います。キャラクターの特徴を挙げてみろと言われると、身体的特徴ばかりが出てきたり、そもそも言葉に窮したりすることがままあると思います。ですが、この作品を読んだならば、ここに出てくるキャラクターたちの特徴をさらさらと挙げることができるでしょう。


 「無鉄砲で超お人よし」阿良々木暦、「つかみどころのない少女」戦場ヶ原ひたぎ、「迷子の幽霊」八九寺真宵、「世界最強の優等生」羽川翼、「がさつでエロいスポーツ少女」神原駿河、「冷徹無比なロリ吸血鬼」忍野忍――。


 きりがないので途中で終わらせますが、不自然に突飛な特徴もないのに、キャラのイメージががつんと入ってきます。そして、出てくるキャラクター全員に好感が持てること間違いなしです!



◆オススメポイント3 端々に現れる、含蓄のある言葉たち◆


 この作品のキャラクターたちには、さきほども言った通り、それぞれがそれぞれの人生観や思考を持っています。そのため、作中でキャラクターたちはよくはっとさせられるような名言を残していきます。また、名言だけではなく、彼ら彼女らが向き合った事件と、その結果、その過程で現れてくるキャラクターたちの考えを見ていると、キャラクターたちが僕たちになにかを訴えかけてきているような気がします。


 もちろん、このことはこの作品に限らず多くの作品に言えることですが、『物語』シリーズはなみいるライトノベルの中でも特にこれが顕著になっていると思います。シリーズが長く、そもそも一冊分の内容が厚いのも手伝っているのでしょうが、僕はこの作品ほど多く心に響く名言を残している作品に出会ったことがありません。


 あるシチュエーションの中でこそ際立つということもありますし、なにか例を出すと言ったことはしませんが、ぜひご自身でその素晴らしい名言の数々を目に留めていただければと思います。



◆最後に◆


 この作品は一冊分の値段が高く、また巻数が多いということで手を出しかねている人も多いと思います。ですが、思い切って買ってもきっと後悔はしません。むしろよかったと思うことでしょう。


 アニメ版を見た人も、アニメでは語られなかった一幕や、そもそもアニメ版とは全く違った面白さがあるのでぜひ読んでみるのをお勧めします!


 とにかく読みごたえがある作品です。皆さんの読書の時間が充実したものになること間違いなしです! ぜひ、お手に取ってみてください!

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