「結」
俺はカズ。しがないサラリーマンだ。出世組とは程遠い毎日を過ごしている。
ただ決して不幸せではない。なぜならこんな俺でも去年に結婚でき、もうすぐ子供が生まれるからだ!なかなか実感はわかないが妙に浮足立った毎日を過ごしている。
しかし心配子度が二つある。一つは嫁さんの出産予定日が一週間過ぎても産まれる気配がないのと、子供の………
「プルルルルルルル!」嫁さんからスマホに電話が掛かってきた。
「もしもし」
「…………」
「もしもし!どうした?なんかあったのか?」
「…………」
「もしもし!どうたんだ!おい!」
「……ニャアー……」
「!?」
俺は嫌な予感を覚えて会社を早退し嫁さんの待つアパートへと急いだ!そこには破水をし動けないでいる嫁さんがいた。俺はすぐさま車に嫁さんを乗せ病院に急いだ!
10時間後元気な女の子が産まれた。世の中にはこんなにも嬉しいことがあるものだと、俺は人目も気にせずに泣きまくった。そういえば泣くことなんていつぶりだろうか…。
嫁さんの産後の経過も良好で母子ともに問題はないそうだ。ただしあのまま嫁さんが動けないままだったらと思うとゾッとする。
「あの時お前が電話をして来なかったらやばかったよな」
「ん?なんの事?」
「お前が破水して電話かけてきたときだよ?覚えてないのか??何も話さないでニャアーと猫の真似してたんだぞ?」
「あはは!あなた何いってるの?私電話してないわよ?そんな余裕無かったし、そんな時に猫の真似する訳ないじゃない。それにほら発信履歴ないでしょ?」
確かに嫁さんのスマホには発信履歴はなかった。そして俺のスマホにも着信履歴もなかった。
その瞬間懐かしい記憶と共に猫の鳴き声も蘇ってきた。……お前…ずっと見守ってくれてたんだな……。自然と涙が溢れてきた。
「どこの誰かは知らないけどイタズラ電話のおかげで私達助かったのよね。良かったじゃない!あっ、そうだ!あなた、心配事の子供の名前決まった?全然決まってなかったじゃない」
「……ん」
「えっ?なに?」
「倫(リン)にしようと思う!」
完
リンとカズの物語 たて こりき @kotarinkyo
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