物語は生きている。

 強いメッセージを感じます。
 キャラクターを生み出したら、本当に出てきてしまった。
 これだけでフィクションとして十分に楽しめる題材です。
 しかしながら、読み進めているうちにそのメッセージにふと気がつき、読了後には感動さえ覚えていました。

 物語は生きている。
 それは作者が生み出したから。

 そんなメッセージを感じます。
 これは現実であっても、何ひとつ変わらない真理なのではないでしょうか。
 作者が生み出した物語は、たとえどこにも出さずとも生きていて、命が宿っている。
 生み出した作者が興味を失ってしまえば、物語はそこで砂のように消滅してしまう、と。
 この世界に散らばるすべての物語は、命をもって生まれてきたのだと。
 私も曲がりなりに物語を書いています。
 だからこそそのように感じ入ったのかもしれません。

 自分の生み出した物語を、自分の愛した物語を大切に。
 そして間違っても、自分の物語を「嫌いだ」と言ってしまわないように。
 そんな薫陶を与えてくれる作品であり、間違いなく生きている物語でした。
 物語を書かれる方も、そうでない方も、是非一度この作品の息吹に触れてみてください。

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