エピローグ
女学校からの帰り道。手を振って親友と別れてから、足取りも軽くいつもの道を駆けていきます。
昨夜まで降っていた雨も朝には上がり、街はいつも通り、そこかしこの煙突から黒煙を立ち上らせています。
私は水たまりを構わず踏みつけます。泥水が少し跳ねますがブーツを履いているので気になりません。
目的地の事務所は五階建てのビルヂングの三階にあります。カン、カン、とブーツの底が階段を蹴っていくと、お世辞にも見栄えがいいとは言えないドアへと辿りつくのです。
私は一度大きく息を吸い込んでから、勢いよく扉を開けました。
「遅くなりました、裏島先生!」
奥の机に座っていた先生が、けだるげに新聞から目を上げます。
ちょうどやってきていた犬村さんが、少し驚いた顔でこちらを振り返ります。
一助さんが給湯室から顔をのぞかせて、ソファに座っていたアヤカシの皆さんがパッと表情を明るくします。
私はにんまりと笑みを深めました。
あとはもう不可思議な事件がドアを叩けば、いつも通りのはちゃめちゃな、たまらなく愉快な時間の始まりなのです。
アヤカシ記者、蒸気都市ヲ行ク。 黄鱗きいろ @cradleofdragon
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