終章あるいは、開幕

 ベルが鳴り、どん帳があがる。カラカラとフィルムの回る音が鳴り、スクリーンに四角い光が映し出される。観客が全員、息をのむのが聞こえてくるようだった。ぼくはこの瞬間が好きだ。

 映画館。ぼくが今回書いた話は、この場にいる人々にはどのように受け取られるだろうか。彼と彼女の話はなるべくしてなり、終わるべくしておわった。その結末に、何人が共感し、何人が不満を漏らすか、それはぼくにはわからない。ただ少しでも多くの人々に、彼と彼女が祝福されれば良いと思う。

 「町シリーズ」。この作品はそんな風に呼ばれている。人があの町の物語を求め続ける限り、ぼくはそれを書き続ける。今回の二人は、まぁまぁよく動いてくれたと思った。ぼくは人々がみない彼らの物語を知っている。例えば繁華街でどのような劇を見たのかとか、その日の夜、探偵と科学者になにがあったのかということなどだ。それを書いても良かったが、彼らは見せるだけでなにも語りはしなかった。彼らを気に入ってくれた人は、きっとそこが気になるだろう。だからこれからもどこかで、この二人は登場させてもいいかもしれない。知識の守人が毎回登場するように。

 ぼくはこうして夢の階段をのぼりつづけている。夢の階段に終わりはない。いつ転落するかもわからないこの階段を、ぼくはのぼり続けるしかない。のぼり続けていれば、この暗闇を月に一度、四角い太陽が照らしてくれる。

 ぼくは脚本家だ。夢を職業に変えた、いつ転げ落ちるかとびくびくしながらも、必死にしがみついている、脚本家だ。

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夢への階段 咲部眞歩 @sakibemaayu

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