⑤ 幸先良き日は良い日かな。
「クルッポッポー!!」
バカでかい
何せ、今日はあちらの方から声がかかる予定なのだから。
「どう?まだ?」
「いや。何もだ」
わたしと西尾は、ただいま、とーってもだいじなメールを待っている。
「不思議発掘たんけんたい!」という番組から、今か今かと掛かってこようとしているメール。
そのメールこそ、今わたしと西尾の、最優先事項となっているのだ。
今日から、一週間前。
西尾の家で、作戦会議をした次の日。
「不思議発掘たんけんたい!」のサイトで、超能力のことを送ることが決定した。その日に、西尾にはサイトで番組に送ってもらった。
そして、すぐに番組から西尾の携帯にメールが来た。番組が、注目してくれたのかも知れない。
西尾の携帯には、
サイトで送ったことが、番組の広報班で注目されているので、後日テレビ局で取材をさせてほしい。なお、この取材はただの取材でテレビ放送はされない。取材の日時は、後日メールで伝える。
という趣旨のことが書いてあった。
後日ばっかり。だけど、その<後日メールで日時を伝える>の後日がいつか分からないから、ここ最近、西尾のケータイばっか
「何をやっているんだ?」
我慢できずに、西尾と「不思議発掘たんけんたい!」へのメールを打っていると、突然、背後から声がした。怖いくらいに
「んっ?何でもないの。ケータイで、ニュースを見てただけ」
さすがわたし。息をするように嘘が、口からぺらぺら出てくるわ。ちなみに、今は休み時間だから、ケータイはオッケー!
「へぇ。わたしも見ていいか?」
ケータイをのぞき込む委員長。
あっぶねぇ~!わたしは、
あ、そーいや西尾のケータイだったな、あれ。わたしの机の中に西尾の入れちゃ、だめだな。
ケータイを返そうと思って、机に手を伸ばしたら、西尾は机の中からようやく手を出した。ケータイを取り出せたみたいだ。けれど、制服のポケットには仕舞わず、机の上にトンと置いた。しかも、さっきの、「不思議発掘たんけんたい!」にメールを送る途中の画面のままで。何やってんの!?西尾!
「?これニュースじゃなくて、メールみたいだぞ。ほら」
委員長が、指をさして指摘してくれる。ちらっと見ただけで、メールの内容を読まなかったのは、ありがたいが・・・・。
「ホントだ!ごめん、まちがえちゃった。えーと、ニュースは・・・」
ケータイを奪い、ニュースコーナーに操作する。どのケータイも、操作の仕方は同じだから、西尾のケータイを操作するのもわたしのケータイと大差ない速さで操作できた。でも・・・。わたしがこんなことをする意味が分からなくなってきた。なんでわたしが、西尾が委員長にメールを見られそうになったのを、何でわたしが、尻拭いをしなきゃなんないの。ポチッ!腹立ちまぎれに、西尾のケータイのボタンを強く押した。
「・・・別に、見せてもいいよな。委員長なら、メールみせてもいいんじゃないか?」
まるで、教室の窓からすっと、誰かに認めてもらいたいように入った今の寒い季節にぴったりな冷たい風みたく、西尾がわたしにしか聞こえないくらいの声で、静かに言った。あまりにも、小さな声だったから、一瞬何を言ったのか分からなかったけれど今は、ちゃんと意味を理解できてる。だから、今までなんとなく、超能力において大事な場面だったところは西尾の言いなりだったけれど、今回はちゃんと反論できる。だって、全ての乙女にとっても、わたしにとっても、委員長にとっても「だいじな秘密は絶対厳守」でしょう?
「ありえない!秘密は秘密!!信用できるからって、勝手に言いふらしたりしていいことじゃないってのは、さすがに西尾でも分かるでしょ?」
「またその話か。前も言ったがな、秘密は一人で抱えてたら苦しくなるだけなんだよっ」
なぜっ。わたしと西尾は、なんでこんなに意見が噛み合わないの?なんでこんなに、ケンカするの?
時は、毎度の放課後。場所は、毎度毎度の体育館のよこにある用具入れ前。季節は変わって、肌寒い1月。
季節のように、わたしたちも変わればいいのに。成長すればいいのに。
そんなことを思いながら、結局はケンカする。
♪3歩進んで、2歩下がる~
♪1歩しか進んでない~
わたし作の、終末ソングが頭の中で流れる。
「キーンコーンカーン」
チャイムが鳴った。下校時刻だ。ケンカは、明日に持ち越しだろう。
カンニング少女 レモネード @lemon-lemonade
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