天才姉妹

教師SIDE

2人について本当に多くの情報を得てしまった。

しかし教師であるからには、何を言い、何を隠すかを判断しなければいけない時がある。

生徒のプライバシーも尊重しつつ、教頭・校長にはできる限り真実を話さねばならない。

1番驚いたことはこれだ。

澪さんと桃音さんは本当の双子ではない。

澪さんと桃音さんは再従姉妹（はとこ）関係でご親族は何かの事件に巻き込まれて亡くなっていたり、行方不明になっていたり、人質に取られていたり、無実の罪で刑務所に入っていたりと大変な目に遭っているそうだ。それで、何度か遠い親戚の家にたらい回しにされ、今は病気で入院していたために事件に巻き込まれなかった桃音さんのお祖母さんが2人を引き取ったそうだ。そして偶然にも2人が同い年だったため、複雑な家庭事情をごまかすために双子だということにできたそうだ。

考えると澪さんと桃音さんの関係は本当に複雑だ。育てているのは桃音さんのお祖母さんだから桃音さんにひいき目だという。

それで桃音さんと澪さんは気まずい関係になってしまったそうだ。道理で、2人が一緒にいるところなど見たことがない。

それがなぜ天才に繋がるのか、

そんな家庭環境で桜木家は非常に貧しいらしい。

2人を育てているお祖母さんは体が弱く働けない。つまり年金のみで自分と2人の中学生を養っている。

養っていると言っても養いきれていない。年金の半分は2人の高校の学費に蓄えているらしい。

お祖母さんは2人に過度な期待を抱いてしまい、良い高校に行かせて良い仕事に就くよう必死になっている。

なんて子供思いで計画的なお祖母さんだと最初は思った。しかしそれが過剰すぎて虐待になりかねない。

2人はお祖母さんの期待を押し付けられ、家での時間は全て勉強に費やすことになっているそうだ。

少しでも勉強をサボると怒鳴り散らされる。

安い鉛筆と最低限の食物と服ぐらいしか与えられない。

そんな厳しい家庭環境で2人が生きていると思うと、切なくて可哀想で涙が溢れ出る。

それにしてもその事情を語るのは辛かっただろう。澪さんが泣く泣く話したのも無理はない。

こんなことを語らせてしまって本当に申し訳ない。なんと謝罪すればよいのか分からない。