シンデレラの選択

RAY

プロローグ


 むかしむかし、あるところに、とても美しく心優しい娘がいました。

 彼女の名前は「シンデレラ」。小さい頃に母親を亡くし父親が再婚したことで、継母ままははとその連れ子である、二人の姉といっしょに暮らしていました。


 シンデレラはお世辞にも幸せとは言えませんでした。

 継母と姉は意地が悪く、いつもシンデレラに辛く当たりました。

 家事という家事をすべて押し付けられ、衣服はボロボロ、食事は残飯、寝床は暖炉だんろ。シンデレラはまるで奴隷のような生活を強いられていました。


 そんなある日、お城で舞踏会が開かれることとなり、継母と二人の姉は華やかなドレスを身にまとい喜び勇んで出掛けていきました。

 それもそのはず。舞踏会には若くてハンサムな王子様が出席することとなっていたからです。


 ボロボロの服しか持っていないシンデレラは当然のごとく家で留守番。しかも山のような家事を言いつけられます。

 冷たい風が吹きすさぶ中、凍える手で洗濯をしていると、薄汚れた自分の姿が水面に映りました。

 シンデレラの大きな目から涙が溢れました。自分のことが不憫ふびんに思えてならなかったからです。


 不意にあたりがまばゆい光に包まれます。

 光の中から現われたのは魔法使いのおばあさんでした。

 シンデレラが悲しんでいる理由を知ったおばあさんは笑顔で頷くと、魔法の呪文を唱えます。すると、ボロボロの服は美しいドレスに、カボチャは馬車に、ネズミは白馬に、ガチョウは御者に変わっていきます。

 最後におばあさんが魔法の杖を小さく振ると、光り輝く、ガラスの靴が現れ、舞踏会に出掛ける準備はすっかり整いました。


 思いも寄らない出来事に驚きと喜びを隠せないシンデレラ。

 そんな彼女におばあさんは一つ忠告をします。「魔法は十二時を過ぎると効力を失う。十二時前には必ずお城を出るように」


 シンデレラが舞踏会に現れると、みんなの視線が一斉に集まります。

 王子様はシンデレラのまばゆいばかりの美しさに心を奪われます。

 シンデレラをダンスに誘うと愛の言葉を囁く王子様。

 幸せを絵に描いたような出来事に、シンデレラは夢を見ているようでした。


 しかし、そんな楽しい時間はあっと言う間に過ぎて行きます。

 十二時を告げる鐘の音が聞こえてきました。おばあさんとの約束を思い出したシンデレラは、王子様が止めるのも聞かず一目散に駆け出すと、そのままお城の外へと消えて行きました。片一方のガラスの靴を残して。


 シンデレラのことが忘れられない王子様は何としても彼女を探し出そうと御触おふれを出します。「ガラスの靴がピッタリ合う女性をきさきとして迎える。街の娘は全員試すように」。


 街の広場に集まった娘たちは、千載一遇せんざいいちぐうのチャンスとばかりガラスの靴を履こうと試みます。しかし、サイズが合うものは誰もいません。


 王子様から街の娘全員に試すよう言われていた、使いの者は、試していない娘がいないかどうか各家を回ります。そして、みすぼらしい格好をしたシンデレラにも靴を履くよう言いました。

 継母と姉が嘲笑う中、緊張した面持ちでゆっくりと靴に足を通すシンデレラ。すると、ガラスの靴はまるであつらえたようにピッタリとはまりました。


 こうしてシンデレラは王子様と結ばれ、いつまでも幸せに暮らしました。



 つづく

 

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