第7話   目に映るもの


 俺は今、目の前に映る、花束を見ては悩んでいる


あの人が持っていた花束と同じものがほしい。


そうすれば、なぜあの人とあの花に惹かれたかわかるような気がする。


でもどんなのだったか、あの人の笑顔しか思い浮かばなくて、花は全然覚えていない。


連日の不眠で回転速度が少し落ちてしまった頭が、いつもどおりのように動いてきた。


「たしか、....」と思いだそうとしても何も浮かばない。


そんな俺を見かねたのか、店員さんが


「あの...花束、お作りしましょうか....?」


花束...作る....。


「え?  ああ、はい、お願いします....。」


驚いてしまったけどそれを悟られないように懸命に話をつなげる。


「大切な人への贈り物ですか?家族とか....。」


母さんに送らないんだよなあ


「いいえ」


「じゃあ彼女さん...?」


「彼女なんていませんよ、  自分用にです。 謎が解けないので、花束でどうにか...と。  きれいですから、癒されるので効果あるかな...と。」


少し話しすぎてしまった...。


店員さんは


「そうですか...あなたには、華奢な花が似合うと思いますよ?  花束なら癒されますね!!  ワンコインで作っちゃいますね、何か嫌いな花とか色とかって...」


「ああ、大丈夫です。特にありません。よろしくお願いします。」


「では、完成次第お呼びさせていただきますので...。」


今どき、ワンコインで花束を作れるなんてすごいな。


いや、今だから、か。  安い価格で花束を...。これなら中学生の自分にも手が届く。


本格的に作ると、お金が高くなるから、ワンコインで済ませよう。


にしても、見たことのない花ばかり....。


定番のガーベラやローズはもちろんのこと、スプレーローズにブルーローズ、1つだけレインボーローズが置かれていた。


「レインボーローズ...」


「そちらに興味がありますか? それ、私が前にテレビで見たのをやってみたものなんです...!!  結構難しくて...。でもどうすればいいのかわからないのでそのまま、ここに置いてしまって...。  どうせなら、ワンコインローズに入れましょうか?レインボーローズですので目立ちますが....。きれいになりますよ!」


と、店員さんが熱く語ってくれて、興味もあったので入れてもらうことに。


「お待たせしました。」


目に映るのは、レインボーローズの鮮やかな色に、そのほかさまざまな花が入っている。


どれもいいにおいがする。


「ありがとうございます!! ええっと...。500円でいいんですよね?」


「あ、はい、こちらにどうぞ...。」


会計を済ませて店をでるとき、


「このワンコイン花束、すごくいいですね...!!レインボーローズもきれいです!!また来ますね!!」


と思わず言うと


「はい!お待ちしております!」


店員さんが笑顔で見送ってくれた。


ワンコイン花束は価格も手に届きやすくて、俺の好きな花だらけ....。


こういうの、見たらだれでも癒されるし、花が好きにもなるよな...。


レインボーローズが俺に勇気をくれる。


ほかの花も俺を支えてくれる。


「さて、どこに飾ろうかな」


俺の部屋で置ける場所....。


あ、ベットの近くのテーブル、かなライトがあって、夜寝る前まで消さないから見えるし、ライトがあるときれいだし.....!!


いつもより一つ多い荷物を抱えて、帰路についた。


空は雲ひとつなくて夏日だった。


梅雨の花も鮮やかに咲く。


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ねこ @sinnpakusuu

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