正統派な内容を端正な文章で著した短編。何より言の葉のそよぎが心地よい。わたしは節穴の先にある夏の風情を覗き楽しみながら読んでおります。そうそう、そこのあなたも覗いていかれませんか?この小さな小さな節穴の先にある世界を
うだるような暑さの夏、蝉の声が煩く響く中、他人の家の壁に開いた穴を覗くという背徳的行為に引き寄せられる主人公。穴の向こうで繰り返される惨劇に魅入られた、家の主。次第に現実の枠組みが熱に晒された氷のように溶け、待ち受けるラストの恐怖。たとえば、ネットワーク越しにこのレビューを読んでいる、一方的に読む側だと信じて疑わない、そこのあなた。ぜひ、この物語を読んでみてください。少し、背中が涼しくなると思いますよ。
表現がとてもお上手で、ぐいぐい引き込まれました。その穴を覗くのは私かもしれないし、その穴から覗かれるのも私かもしれない…
穴の隙間から見える光景。それは10数年前にここで起こった出来事。なぜそんなものが見えるのだろうか。この穴は一体……。穴から見る出来事はまるで『リング』の呪いのビデオを彷彿させるような光景です。