上野駅

駅員3

哀愁ただよう駅

 上野駅は1883年(明治16年)に、日本鉄道が上野⇔熊谷間に鉄道が開通すると同時に開業した。品川⇔横浜間に日本発の鉄道が敷設されてからわずか11年後のことである。

 現在の上野駅は二代目で、初代駅舎は、開業後の1885年(明治18年)に現在の広小路口付近に建てられた、洋風レンガ造り2階建ての建物であった。初代駅舎の正面は東側を向いていたといわれており、上野広小路に近い現在の南口が正面の出入口となっていた。


 現在の二代目駅舎は、1930年(昭和5年)に着工し、2年の歳月をかけて建築された。中央の横長陸屋根造りの建物に、左右両翼にやや小ぶりの建物を従えている。駅前左右から建物正面に弧を描くようにスロープが1階(駅正面から見ると、2階に見える)の駅入り口へと続く。乗降客の流れを考えて、乗車客は1階の車寄せからホームへと向かい、降車客は地下1階(駅正面から見ると、1階に見える)の車寄せから外へと出た。


 現在の上野駅は、正面に歩行者用のデッキが出来たため、駅の全体像を離れてみることは出来ない。外壁は、多胡石と小松石の砕石をまぜたモルタル造りで、臍壁(注記)には花崗岩が使われている。

 小学1年生の夏、タクシーで1階の車寄せに乗りつけて、上野発大阪行きのディーゼル特急白鳥号に乗ったのは、つい昨日のことのように覚えている。


 上野駅を模した造りの駅としては、大連駅、小樽駅、真岡駅がある。大連駅は、ロシア帝国が満州北部に敷設した東清鉄道のハルピンから、大連を経て旅順へと続く支線の駅として、1903年(明治36年)に開業した。

 その後、南満州鉄道の本線となり、現在の駅舎は1937年(昭和12年)に上野駅を模して竣工した。現在でも上野駅とうり二つの建物は現役だ。


 小樽駅は、1903年(明治36年)、北海道鉄道の小樽中央駅として開業している。現在の駅舎は三代目で、1934年(昭和9年)に完成する。規模は少々小さいが、上野駅にとても似ている。上野駅の特徴でもある正面のスロープは、この小樽中央駅には無い。


 真岡駅は、栃木県の真岡駅ではない。樺太庁鉄道西海岸線の始発駅として、1920年(大正9年)に開業した。その後1932年(昭和7年)、上野駅の竣工と相前後して誕生した駅である。鉄筋コンクリート造、一部2階建ての建物は、上野駅をやや小ぶりにした感じの建物で、一段高くなった1階入り口に向かって小ぶりなスロープが付いていた。

 残念ながら、打ち捨てられて荒廃するに任されていたが、1992年に取り壊された。


 上野駅は、84歳を超えて今なお健在であるが、一時取り壊される危機に瀕したことがある。バブル絶頂のころ、高さ300mの超高層駅ビルに建て替える構想があったのだ。バブルの崩壊と、皮肉にも東北・上越新幹線の東京駅の乗り入れで上野駅の乗降客が減り、建て替え計画は消えた。

 高度経済成長とともに、一時地下水のくみ上げによる地盤沈下が激しくなったが、 地下水の汲み上げが制限されると、逆に浮き上がり始め、現在では駅の床下等に、3万トンもの錘を載せているという。


(注) 文中にある【臍壁】について

 上野駅の外壁は、多胡石と小松石の砕石が入ったモルタル塗りで仕上げられていますが、正面1階、地下1階の中央車寄せの部分が花崗岩で造られております。

 【臍】とはヘソのことで、上野駅のヘソ・・・つまり中央車寄せを指しており、【臍壁】とは、駅の中心部分の壁と考えます。

 設計図等を検証したわけではないので、これは私の推測ですが、花崗岩のブロックを積み上げたのではなく、躯体に花崗岩のパネルを張り付けているものではないかと考えます。

 躯体については鉄筋コンクリートと思われますが、未確認です。

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